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ep.Last 伊吹くん、もう二度と離れないから
1.
4月、伊吹が社長に就任すると、経済紙をはじめとする各媒体からの取材が殺到した。
実際は噂を聞きつけて就任前からなのだが。
ホテルロイヤルヴィリジアンの公式ホームページにもその姿を現さず、業界の人間しか顔を知らない存在であった伊吹は、やはりそのスタンスを変えることはなかった。
雑誌やWeb媒体には写真掲載はNGという条件でインタビューに答えた。
そして、新たに完成したホテルロイヤルヴィリジアン・アネックス。その10階に引っ越してきた伊吹と榛名であったが――
「そりゃあ、広いわよね。9階まではオフィスフロアで、同じ面積なのだからーー」
まさに広々としたフロアーに榛名の声が響き渡る。
驚くほどに広大な空間。空気が澄んでいて清々しい。
ゆったりと区切られたリビング、ダイニング、キッチンスペース。
広いバスルームにはおしゃれな浴槽がある。
各自の部屋もあり、だが2人の部屋だけでなく、将来を見据えた子供部屋も用意されていた。
その上、トレーニングルームまで併設された豪華ぶりである。
「こりゃあ、掃除が大変そうだわぁぁ~」
「掃除については、ホテルの清掃スタッフの中でも、特に信頼できる者に週2回入ってもらう」
ホテルロイヤルヴィリジアンは、ホテル内の清掃に特化した子会社を持っている。
そこで長く勤務してくれているベテランのご婦人スタッフに「アネックス10階の清掃」という名目で新たに雇用関係を結んでくれたそうだ。
広いけれど、余計な物さえ置かなければ、逆に掃除はしやすそうだ。
現に今も足元で丸っこいロボット掃除機がのびのびと駆け巡っている。
「大丈夫だよ、はるちゃん。俺は掃除が得意だから、日々こまめに掃除していればキレイさを維持できる」
そう言って、伊吹は爽やかな笑顔を浮かべているが、
「そんな……ただでさえ社長に就任して、これまでよりさらに忙しくなるのだから無理はしないでよ。掃除や家事は私がやるわよ」
多忙な伊吹に負担をかけたくない。そこまでやっていたら身体がもたないだろう。その方が心配だ。
多少大雑把ではあるものの、榛名も元来キレイ好きでマメな性分である。
全体の家事をざっくりと榛名が担当して、足りないところを伊吹に見てもらえば良い。
「だけど……こんなにも広い空間、伊吹くんスース―しない?」
以前、伊吹は広い部屋だとスース―して落ち着かないと言っていた。
「今はもう全然。はるちゃんと一緒だから。この広い空間を、はるちゃんとの愛で埋め尽くしたい」
「もう、何言ってんのよ。でも、そうなのね」
客観的に聞いたらうすら寒いようなセリフでも、伊吹が言うとしっくりくるから不思議だ。
それに、「榛名がいるから満たされている」と言われたようで嬉しかった。
榛名の心も伊吹と共にいることで、この上なく満たされている。
「伊吹くん、素敵な新居をありがとうございます」
「はるちゃん……」
このホテルロイヤルヴィリジアン・アネックスは、伊吹が続けた努力の結晶。言わば、彼の城だ。
彼の5年以上の努力の成果物であるこの城に住まわせて頂くことに、きちんと感謝の気持ちを伝えなければ。
「はるちゃん、こちらこそ、一緒に住んでくれて嬉しいよ。この家は広いけれど、狭く感じるくらい、俺が君から離れないから」
伊吹はすっきり晴れやかな青空のような笑顔を浮かべた。
実際は噂を聞きつけて就任前からなのだが。
ホテルロイヤルヴィリジアンの公式ホームページにもその姿を現さず、業界の人間しか顔を知らない存在であった伊吹は、やはりそのスタンスを変えることはなかった。
雑誌やWeb媒体には写真掲載はNGという条件でインタビューに答えた。
そして、新たに完成したホテルロイヤルヴィリジアン・アネックス。その10階に引っ越してきた伊吹と榛名であったが――
「そりゃあ、広いわよね。9階まではオフィスフロアで、同じ面積なのだからーー」
まさに広々としたフロアーに榛名の声が響き渡る。
驚くほどに広大な空間。空気が澄んでいて清々しい。
ゆったりと区切られたリビング、ダイニング、キッチンスペース。
広いバスルームにはおしゃれな浴槽がある。
各自の部屋もあり、だが2人の部屋だけでなく、将来を見据えた子供部屋も用意されていた。
その上、トレーニングルームまで併設された豪華ぶりである。
「こりゃあ、掃除が大変そうだわぁぁ~」
「掃除については、ホテルの清掃スタッフの中でも、特に信頼できる者に週2回入ってもらう」
ホテルロイヤルヴィリジアンは、ホテル内の清掃に特化した子会社を持っている。
そこで長く勤務してくれているベテランのご婦人スタッフに「アネックス10階の清掃」という名目で新たに雇用関係を結んでくれたそうだ。
広いけれど、余計な物さえ置かなければ、逆に掃除はしやすそうだ。
現に今も足元で丸っこいロボット掃除機がのびのびと駆け巡っている。
「大丈夫だよ、はるちゃん。俺は掃除が得意だから、日々こまめに掃除していればキレイさを維持できる」
そう言って、伊吹は爽やかな笑顔を浮かべているが、
「そんな……ただでさえ社長に就任して、これまでよりさらに忙しくなるのだから無理はしないでよ。掃除や家事は私がやるわよ」
多忙な伊吹に負担をかけたくない。そこまでやっていたら身体がもたないだろう。その方が心配だ。
多少大雑把ではあるものの、榛名も元来キレイ好きでマメな性分である。
全体の家事をざっくりと榛名が担当して、足りないところを伊吹に見てもらえば良い。
「だけど……こんなにも広い空間、伊吹くんスース―しない?」
以前、伊吹は広い部屋だとスース―して落ち着かないと言っていた。
「今はもう全然。はるちゃんと一緒だから。この広い空間を、はるちゃんとの愛で埋め尽くしたい」
「もう、何言ってんのよ。でも、そうなのね」
客観的に聞いたらうすら寒いようなセリフでも、伊吹が言うとしっくりくるから不思議だ。
それに、「榛名がいるから満たされている」と言われたようで嬉しかった。
榛名の心も伊吹と共にいることで、この上なく満たされている。
「伊吹くん、素敵な新居をありがとうございます」
「はるちゃん……」
このホテルロイヤルヴィリジアン・アネックスは、伊吹が続けた努力の結晶。言わば、彼の城だ。
彼の5年以上の努力の成果物であるこの城に住まわせて頂くことに、きちんと感謝の気持ちを伝えなければ。
「はるちゃん、こちらこそ、一緒に住んでくれて嬉しいよ。この家は広いけれど、狭く感じるくらい、俺が君から離れないから」
伊吹はすっきり晴れやかな青空のような笑顔を浮かべた。
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