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37.デパートを満喫しよう!(10)
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第一、お腹を空かせた子供を目の前にして、初めて味わう海鮮丼に食べ方のマナーがあるからと、懇懇とレクチャーしてまで手間を掛けさせるのが、正しいしつけだとは思えない。
そもそも、そんなに騒ぎ立てるほど、タレをかけて食べるのがマナー違反ってわけじゃないそうだし。
だから俺は楽なやり方を提案した。
これが大切な取引先の相手と飯を食いに来たとか、よっぽど格式高い店に訪れたなら分からない話でもないけど、ミオはまだ小学生だし、ここはごく普通のレストランなんだから、好きなように食べさせてあげたいと考えたのである。
「おいしいかい? ミオ」
「うん! エビとイクラの他は何の魚なのかよく分かんないけど、この赤いのが一番好きかなー」
ミオはそう言うと、タレが染み込んだ赤身を白飯と一緒に口へ運び、よく噛んで味わいを楽しんでいる。
「今食べたのだろ? それはマグロだね」
「マグロなんだ! ボク、何回か食べた事があるんだけど、このマグロはちょっと違う感じががするなぁ」
「ははぁ。その違和感は、たぶん食べた部位が違うんじゃないか?」
「ぶい?」
また自分の知らない単語が出てきたという事なのか、ミオが小首を傾げながら聞き返してくる。
「部位ってのは、要するに体の部分だよ。ミオが食べてる海鮮丼に乗ってるマグロの部位は赤身って言って、だいたい体の中心あたりを指すんだけどさ」
「うんうん」
「マグロには他にも、部位によって大トロや中トロ、頬肉やカマトロみたいにそれぞれ違う身があるんだ」
「頬肉って、ほっぺたの事?」
食事の手を止め、いったん箸を置いたミオが、今度は指で自分の頬をつつきながら尋ねてきた。
「そうだよ。ただ頬肉なんてちょっとしか取れないから、めったに食べられない高級品なんだけどね」
「ふーん。じゃあ、ボクが前食べた事のあるマグロって……」
「赤身じゃないとしたら、まぁ大トロか中トロなんだろうな」
「そうなんだ。でも大トロと中トロって、何が違うの?」
うちの子猫ちゃんは知的探究心に満ち溢れているので、分からない事はどんどん質問してくる。
特に、今疑問を抱いているのが自分の大好きな魚に関する事柄なもんだから、なおさら関心が強くなっているのだろう。
知識をつけるのは至極結構な事だ。ただ、話を聞いているうちに「ボク、マグロを釣ってみたーい」とか言い出さないか、それだけが心配なんだけども。
そもそも、そんなに騒ぎ立てるほど、タレをかけて食べるのがマナー違反ってわけじゃないそうだし。
だから俺は楽なやり方を提案した。
これが大切な取引先の相手と飯を食いに来たとか、よっぽど格式高い店に訪れたなら分からない話でもないけど、ミオはまだ小学生だし、ここはごく普通のレストランなんだから、好きなように食べさせてあげたいと考えたのである。
「おいしいかい? ミオ」
「うん! エビとイクラの他は何の魚なのかよく分かんないけど、この赤いのが一番好きかなー」
ミオはそう言うと、タレが染み込んだ赤身を白飯と一緒に口へ運び、よく噛んで味わいを楽しんでいる。
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「ははぁ。その違和感は、たぶん食べた部位が違うんじゃないか?」
「ぶい?」
また自分の知らない単語が出てきたという事なのか、ミオが小首を傾げながら聞き返してくる。
「部位ってのは、要するに体の部分だよ。ミオが食べてる海鮮丼に乗ってるマグロの部位は赤身って言って、だいたい体の中心あたりを指すんだけどさ」
「うんうん」
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