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二皿目 黄身時雨と初恋の人に会いたい鎌いたち
その4 瑠璃と餡ミルクアイス
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(よかった。怒られるかと思ったけど、わかってもらえた……)
安堵しながら、菜々美も包装紙や紙箱を準備していると、じきにカツンカツンとヒールの音が近づいてきた。
「菜々美ちゃんだったわね。その作務衣、よく似合っているわ。咲人くんは、今日も麗しいわね」
親し気な様子で店に入ってきたのは、色が抜けるように白く、妖艶な雰囲気の美女――瑠璃だ。
「いらっしゃいませ!」
菜々美が元気よく声をかけると、瑠璃は笑顔で頷いた。
「咲人くんだけだと、いつもつんけんと塩対応なの。菜々美ちゃんがいると、明るい雰囲気になっていいわね」
咲人が顔を上げ、瑠璃を見た。
「今日も来たのか。瑠璃、よほど暇なんだな」
「ふふふ、あたしは夕さりの和菓子の大ファンだもの。忙しくても来るわよ。今日は何をいただこうかしら。毎日違う和菓子が並んで迷うわ。咲人くんは本当に立派な和菓子職人になったわね」
「……店内で食べるのか?」
「もちろん。咲人くんの顔を見ながら食べたほうが美味しいもの。えっと、今日は『水無月』を食べないとね。それから他の和菓子を全種類ひとつずつ」
(えっ、そんなにたくさん……?)
すらりと細い瑠璃の見て、菜々美は小首を傾げるが、咲人は「わかった。座って待っていろ」と言い、瑠璃はカウンター席にすっと座った。
「雪女の瑠璃は冷たいものを好むから、大皿を取ってくれ」
「はいっ」
目にも涼しげな硝子の大皿へ、和菓子をひとつずつ並べながら、咲人は苦笑した。彼のやわらかな笑みから、咲人と瑠璃の間に、長い年月を経た信頼関係のようなものが感じられる。
(あれ? もしかして、咲人さんと瑠璃さんは、昔付き合っていたとか? 瑠璃さんはこのお店の常連客として言ってなかったけど……)
気が合う友人という雰囲気だが、二人はあやかし同士、しかも美男美女だ。
彼の手伝いをしながら、菜々美の胸がちくりと胸が痛む。
「菜々美、あれを持って来てくれ」
「は、はい。あれ? あれって……これですか?」
銘々皿か平皿だろうかと思ってあわてると、咲人は「違う、あれだ」と盆を視線で示した。
「わかりました」
和菓子が美しく並んだ大皿を朱色の盆に載せると、今度は、調理台の横を見た後、くいっと顎で瑠璃が座るテーブルを示した。
「グラスをひとつ出せ。瑠璃は飲み物も冷たいものを好む。作り方を教えておく」
「はいっ」
飲み物の作り方を教えてもらえる。菜々美は嬉しくなった。
対面式の厨房の中で、咲人はグラスに粒餡を入れて冷えた牛乳を注いだ。シナモンスティックで掻き混ぜると、上からバニラアイスを落とす。
(わぁ、冷たくて美味しそう……)
「瑠璃が好きな餡ミルクアイスだ。一緒に運んでくれ」
菜々美は笑顔で頷き、和菓子が並んだ硝子皿とグラスを朱色の盆に載せ、テーブル席の瑠璃の元まで運ぶ。
「お待たせしました」
テーブルの上に置くと、瑠璃の目が輝いた、
「いつ見てもきれいな和菓子ね。まあ、餡ミルクアイスも。この味、大好きなの。餡とアイスと牛乳の味がなんともいえないのよ」
瑠璃が子供のように喜んでいるのを見ると、菜々美も嬉しくなった。
安堵しながら、菜々美も包装紙や紙箱を準備していると、じきにカツンカツンとヒールの音が近づいてきた。
「菜々美ちゃんだったわね。その作務衣、よく似合っているわ。咲人くんは、今日も麗しいわね」
親し気な様子で店に入ってきたのは、色が抜けるように白く、妖艶な雰囲気の美女――瑠璃だ。
「いらっしゃいませ!」
菜々美が元気よく声をかけると、瑠璃は笑顔で頷いた。
「咲人くんだけだと、いつもつんけんと塩対応なの。菜々美ちゃんがいると、明るい雰囲気になっていいわね」
咲人が顔を上げ、瑠璃を見た。
「今日も来たのか。瑠璃、よほど暇なんだな」
「ふふふ、あたしは夕さりの和菓子の大ファンだもの。忙しくても来るわよ。今日は何をいただこうかしら。毎日違う和菓子が並んで迷うわ。咲人くんは本当に立派な和菓子職人になったわね」
「……店内で食べるのか?」
「もちろん。咲人くんの顔を見ながら食べたほうが美味しいもの。えっと、今日は『水無月』を食べないとね。それから他の和菓子を全種類ひとつずつ」
(えっ、そんなにたくさん……?)
すらりと細い瑠璃の見て、菜々美は小首を傾げるが、咲人は「わかった。座って待っていろ」と言い、瑠璃はカウンター席にすっと座った。
「雪女の瑠璃は冷たいものを好むから、大皿を取ってくれ」
「はいっ」
目にも涼しげな硝子の大皿へ、和菓子をひとつずつ並べながら、咲人は苦笑した。彼のやわらかな笑みから、咲人と瑠璃の間に、長い年月を経た信頼関係のようなものが感じられる。
(あれ? もしかして、咲人さんと瑠璃さんは、昔付き合っていたとか? 瑠璃さんはこのお店の常連客として言ってなかったけど……)
気が合う友人という雰囲気だが、二人はあやかし同士、しかも美男美女だ。
彼の手伝いをしながら、菜々美の胸がちくりと胸が痛む。
「菜々美、あれを持って来てくれ」
「は、はい。あれ? あれって……これですか?」
銘々皿か平皿だろうかと思ってあわてると、咲人は「違う、あれだ」と盆を視線で示した。
「わかりました」
和菓子が美しく並んだ大皿を朱色の盆に載せると、今度は、調理台の横を見た後、くいっと顎で瑠璃が座るテーブルを示した。
「グラスをひとつ出せ。瑠璃は飲み物も冷たいものを好む。作り方を教えておく」
「はいっ」
飲み物の作り方を教えてもらえる。菜々美は嬉しくなった。
対面式の厨房の中で、咲人はグラスに粒餡を入れて冷えた牛乳を注いだ。シナモンスティックで掻き混ぜると、上からバニラアイスを落とす。
(わぁ、冷たくて美味しそう……)
「瑠璃が好きな餡ミルクアイスだ。一緒に運んでくれ」
菜々美は笑顔で頷き、和菓子が並んだ硝子皿とグラスを朱色の盆に載せ、テーブル席の瑠璃の元まで運ぶ。
「お待たせしました」
テーブルの上に置くと、瑠璃の目が輝いた、
「いつ見てもきれいな和菓子ね。まあ、餡ミルクアイスも。この味、大好きなの。餡とアイスと牛乳の味がなんともいえないのよ」
瑠璃が子供のように喜んでいるのを見ると、菜々美も嬉しくなった。
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