あやかし甘味堂で婚活を

一文字鈴

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二皿目 黄身時雨と初恋の人に会いたい鎌いたち

その6 鎌いたちのノリヒサ

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「僕は渡部わたべノリヒサ。本来の姿は鎌いたちで、サラリーマンをしています」

 そう言うと、彼――ノリヒサは、律儀にも鬼之丞や菜々美たちに向かって、サラリーマン風にお辞儀をした。
 各地に伝承が残っている鎌いたちは、つむじ風の妖怪として知られている。
 椅子に座ったノリヒサに、鬼之丞が目を輝かせて話しかける。

「ノリたんは、シャラリーマンなの?」
「そうだよ。大手文房具店の岡山支社で働いているんだよ」

 あやかしが人間に混じって、普通に仕事をしていることに、菜々美が驚いていると、瑠璃がふふふと笑った。

「まだ菜々美ちゃんは、あやかしについてあまり知らないようね。咲人はあの通り無口な人だから、わからないことがあれば、あたしが教えてあげる。あたしたちあやかしの多くは、人界で人として暮らしているの。あたしは化粧品会社に勤めているのよ」

 瑠璃は優雅な所作で、有名な化粧品会社の岡山支店長と書かれた名刺を上着の内ポケットから取り出すと、菜々美に手渡した。

「瑠璃さんもノリヒサさんも人間にしか見えませんが、やはり気づかれないものなのですか?」

 そうなのよ、と瑠璃が妖艶な笑みを浮かべ、説明する。

「あやかしは人型を取るのが得意なの。でも違いはあるのよ。基本的に妖怪は睡眠や食事を必要としないの。人間にとっておやつのような感覚で、人間の食べ物を摂ることはあるわ。こうした和菓子は疲れが取れるのよ。一番大きな人間との違いは寿命なの。種類によって個体差があるけれど、人間に比べるとずっと長寿で年を取らない。結婚生活も、とても長いものになるの」

 ノリヒサの頬が朱色を帯び、高揚してかすれた声を上げる。

「そうなんです。だからこそ皆、伴侶を慎重に選び、最期まで添い遂げたいと思っているんです! 僕も、実は……っ」

 興奮して真っ赤になったノリヒサに、みんなの視線が集中する。

「す、すみません。実はこちらの『甘味堂夕さり』は婚活を手伝ってくれると聞いて、参りました。その……実は、探してほしい女性がいるんです。和菓子好きな二口女のあやかしなんですが……別れてしまって」

 菜々美はドキドキと鼓動が高鳴った。こうしてあやかしたちの婚活のお手伝いができることが嬉しく誇らしいと思うのだ。

(鎌いたちの恋人が二口女……あやかしの人たちってすごい……)

 感心している菜々美の横で、咲人が静かに口を開く。

「和菓子を食べ終わったら、探してほしいという女性について、詳しくお話を聞かせてください」

 はい、と頷いたノリヒサが、咲人の顔をじっと見て、ほぅっとため息をついた。

「店長さんはずいぶんイケメンですね。九尾のあやかしは妖力が強いし、うらやましいです。僕の容姿は普通で……だから自信がなくて……その、よろしくお願いします」

 ネガティブなノリヒサの気持ちは、美月という美しい双子の妹を持つ菜々美にはよくわかる。ぜひ、この婚活の手伝いを頑張りたいと思った。
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