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二皿目 黄身時雨と初恋の人に会いたい鎌いたち
その10 蘭丸の車で
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店の周囲は、緑豊かな庭園が広がって、広い駐車場もある。その端っこに蘭丸の車が停まっていた。
「僕の車で行きます。どうぞ」
デザイナーの蘭丸らしい、コロンとしたフォルムの、色鮮やかな黄色の車だ。
ノリヒサがはしゃいだ声を上げる。
「わ、可愛い車ですね」
「この丸みがいいでしょう? さあ乗って。カーナビがないから、菜々美ちゃんは助手席で道案内をお願いできるかな」
「わかりました!」
助手席に座った菜々美は、和菓子が入った紙袋を膝に抱き、スマートフォンで道案内のアプリを立ち上げた。
ユカリの住所、倉敷市白楽町▽丁目……を入力する。
「それじゃあ、ユカリさんのアパートへ向けて出発しますね」
「はい。連絡がついたということは、ユカリ、僕を待ってくれているんですよね。楽しみです。お手数ですが、どうぞよろしくお願いします……!」
後部座席のノリヒサは、改めて蘭丸と菜々美に頭を下げた。
朱色の橋の前を左折すると、大きな緑色の橋が見えた。
そこを通り抜けると、雑木林の手前に初めて見る道路が現れ、蘭丸はその道に沿って車を走らせて行く。
菜々美は助手席の窓から外を見つめ、あれ、と声を漏らした。
「ここは……」
いつの間にか、見覚えのある岡山市内の大元神社裏手の道を走っていた。
「結界を抜けて人界へ入ったんだよ。倉敷市白楽町までバイパスを通って行くね。近くに行くまでナビはいいから、菜々美ちゃんもノリヒサさんも、寝ててください」
蘭丸の言葉に、ノリヒサはそういうわけにはいきません」と首を横に振り、おずおずと話しかけてくる。
「あの、蘭丸さんと菜々美さんは、あやかしではないのですね。その、お二人は妖力のオーラがとても小さいので」
「そうなんです。菜々美ちゃんは人間で、夕さりに採用されたばかりなんです。僕は祖母があやかしで、クオーターなんですよ」
ハンドルを握ったまま返事をした蘭丸に、菜々美は目を丸くする。
「蘭丸さんは、私と同じで、普通の人間だと思ってました……」
「そうかい? 僕は菜々美ちゃんを見た時、あやかしかと思った。なんだか不思議な力を持っている気がして」
「え、私が? そんな……」
「それに菜々美ちゃんは笑顔がキュートだね。お客さんに明るい対応をしている菜々美ちゃんを見ていると、僕も負けてられないと思うんだ。一緒に『夕さり』で頑張ろうね」
「はい、蘭丸さん……!」
褒められて、心の中がじわじわとあたたかくなる。
「あ、その笑顔、いいね。すごく可愛い。色でいうとオレンジ色だ」
そう言うと蘭丸は、車を走らせながら、得も言われぬ微笑をくれた。
「あ、ありがとうございます。あの、ま、前を……運転中は前を見てください」
「あ、うん」
じきに車はバイパスを下り、倉敷市内に入った。
「このまま直進です。次の信号を左折すると、倉敷市役所前に出ます」
「了解。あれ……」
蘭丸はちらちらと菜々美のほうを見ている。
「あの、前を……」
「そうだった、ごめん」
そう言っても、蘭丸はまた、菜々美のほうを見ている。どうしたのだろうか。
小首を傾げながら、スマートフォンのナビアプリと膝の上に抱いた和菓子の袋を交互に見つめていると、蘭丸はハンドルを切って、コンビニの駐車場へ入って停車した。
「僕の車で行きます。どうぞ」
デザイナーの蘭丸らしい、コロンとしたフォルムの、色鮮やかな黄色の車だ。
ノリヒサがはしゃいだ声を上げる。
「わ、可愛い車ですね」
「この丸みがいいでしょう? さあ乗って。カーナビがないから、菜々美ちゃんは助手席で道案内をお願いできるかな」
「わかりました!」
助手席に座った菜々美は、和菓子が入った紙袋を膝に抱き、スマートフォンで道案内のアプリを立ち上げた。
ユカリの住所、倉敷市白楽町▽丁目……を入力する。
「それじゃあ、ユカリさんのアパートへ向けて出発しますね」
「はい。連絡がついたということは、ユカリ、僕を待ってくれているんですよね。楽しみです。お手数ですが、どうぞよろしくお願いします……!」
後部座席のノリヒサは、改めて蘭丸と菜々美に頭を下げた。
朱色の橋の前を左折すると、大きな緑色の橋が見えた。
そこを通り抜けると、雑木林の手前に初めて見る道路が現れ、蘭丸はその道に沿って車を走らせて行く。
菜々美は助手席の窓から外を見つめ、あれ、と声を漏らした。
「ここは……」
いつの間にか、見覚えのある岡山市内の大元神社裏手の道を走っていた。
「結界を抜けて人界へ入ったんだよ。倉敷市白楽町までバイパスを通って行くね。近くに行くまでナビはいいから、菜々美ちゃんもノリヒサさんも、寝ててください」
蘭丸の言葉に、ノリヒサはそういうわけにはいきません」と首を横に振り、おずおずと話しかけてくる。
「あの、蘭丸さんと菜々美さんは、あやかしではないのですね。その、お二人は妖力のオーラがとても小さいので」
「そうなんです。菜々美ちゃんは人間で、夕さりに採用されたばかりなんです。僕は祖母があやかしで、クオーターなんですよ」
ハンドルを握ったまま返事をした蘭丸に、菜々美は目を丸くする。
「蘭丸さんは、私と同じで、普通の人間だと思ってました……」
「そうかい? 僕は菜々美ちゃんを見た時、あやかしかと思った。なんだか不思議な力を持っている気がして」
「え、私が? そんな……」
「それに菜々美ちゃんは笑顔がキュートだね。お客さんに明るい対応をしている菜々美ちゃんを見ていると、僕も負けてられないと思うんだ。一緒に『夕さり』で頑張ろうね」
「はい、蘭丸さん……!」
褒められて、心の中がじわじわとあたたかくなる。
「あ、その笑顔、いいね。すごく可愛い。色でいうとオレンジ色だ」
そう言うと蘭丸は、車を走らせながら、得も言われぬ微笑をくれた。
「あ、ありがとうございます。あの、ま、前を……運転中は前を見てください」
「あ、うん」
じきに車はバイパスを下り、倉敷市内に入った。
「このまま直進です。次の信号を左折すると、倉敷市役所前に出ます」
「了解。あれ……」
蘭丸はちらちらと菜々美のほうを見ている。
「あの、前を……」
「そうだった、ごめん」
そう言っても、蘭丸はまた、菜々美のほうを見ている。どうしたのだろうか。
小首を傾げながら、スマートフォンのナビアプリと膝の上に抱いた和菓子の袋を交互に見つめていると、蘭丸はハンドルを切って、コンビニの駐車場へ入って停車した。
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