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三皿目 ろくろ首の母娘と水羊羹
その2 高鳴る鼓動
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「次は『冷やしわらび餅』だ。俺は他の練り切りを作る。分量と手順をまとめたメモを見ながら一人で作れるか?」
「はい、やらせてください」
咲人から、分量と手順が書かれたメモを手渡された。
菜々美が作ってきた方法とは違うが、ざっと目を通し、流れを頭にいれ、本わらび粉を手に取った。
本わらび粉は、わらびの地下茎から取ったでんぷんの粉類で、ふるふるとしてもっちりしているのが特徴的だ。
水を加えて混ぜてこし、グラニュー糖と和三盆糖を加えて加熱し、全体をしっかり練る。静かに型に流し入れ、常温で冷まして固めると、きな粉を敷いたバットの上に移し、広げる。
思った以上に熱く、左手の甲にぴりっと痛みが走った。
「熱……」
動揺しながら手を押さえると、餡を作っていた咲人がすぐに手を止め、そばに来た。
「菜々美、どうした。火傷を?」
「いいえ、ちょっと熱かっただけです。なんともありません」
咲人が調理台を回り込んで、菜々美の左手首を掴んで引っ張るようにして見ている。
「すぐに冷やしたほうがいい」
水道の水を勢いよく出し、菜々美の左手首を掴んで流水に晒す。
「心配で厨房に立たせられない。気をつけてくれ」
「……すみません」
掠れた声に、心臓のやわらかい部分を引っ掻かれた気がした。その部分からじわじわと熱を帯びていくような、ぞくぞくする感じに唇を噛みしめる。
(わ、私……なんだか……胸が……苦しい……)
すぐに水で冷やしたのがよかったのだろう、火傷した部分は赤くなったりもせず、痛みもほとんどない。
「ありがとうございます。もう大丈夫です」
咲人の整った顔に安堵が浮かび、小さく息をついた。
「大事なくてよかった。少し休んでくれ」
「いいえ、後は切り分けるだけですので……」
「そうか。包装紙が足りないから、俺は倉庫から探して持ってくる。もう少しすると粉類や小豆が業者から届くから、受け取っておいてほしい」
「わかりました」
咲人が出て行くと、菜々美は小さく息をつき、気をつけながら、冷やしわらび餅をスケッパーで食べやすい大きさに切っていく。
それらを冷蔵ケースに入れながら、黒蜜ときな粉の用意をしていると、がらっと勢いよく扉が引かれた。
菜々美が振り返ると、段ボール箱を抱えた男性が入ってきた。肩までの金髪と、彫りが深く端正な顔立ちをした男性だ。
「あ、業者の方ですか? お世話に……」
「咲人くうぅぅん、おっはようぅぅ!」
彼はいきなり大きな声を出すと、口をすぼめ、チュッと誰もいない厨房へ向けて投げキッスをしたまま、動きを止めた。
「ちょっと! 咲人くんはどこよ?」
「あ、あの。おはようございます。咲人さんはちょっと用があって、倉庫に。私が商品をお受け取りしますので」
彼は訝しげに菜々美を睨んだ。
「誰よ、あんた」
敵意を感じ、菜々美は困惑しながらも、自己紹介する。
「初めまして。少し前に採用になった、スタッフの桃瀬菜々美です」
「なんですってぇ? あんた、この店で咲人くんと働いているのぉ?」
「はい……」
射殺すような眼差しに、菜々美は動揺し、それ以上言葉が出ない。
気まずい沈黙が広がり、ハーフっぽい男性が何か言いかけたところで、包装紙を手に、咲人が戻ってきた。
「はい、やらせてください」
咲人から、分量と手順が書かれたメモを手渡された。
菜々美が作ってきた方法とは違うが、ざっと目を通し、流れを頭にいれ、本わらび粉を手に取った。
本わらび粉は、わらびの地下茎から取ったでんぷんの粉類で、ふるふるとしてもっちりしているのが特徴的だ。
水を加えて混ぜてこし、グラニュー糖と和三盆糖を加えて加熱し、全体をしっかり練る。静かに型に流し入れ、常温で冷まして固めると、きな粉を敷いたバットの上に移し、広げる。
思った以上に熱く、左手の甲にぴりっと痛みが走った。
「熱……」
動揺しながら手を押さえると、餡を作っていた咲人がすぐに手を止め、そばに来た。
「菜々美、どうした。火傷を?」
「いいえ、ちょっと熱かっただけです。なんともありません」
咲人が調理台を回り込んで、菜々美の左手首を掴んで引っ張るようにして見ている。
「すぐに冷やしたほうがいい」
水道の水を勢いよく出し、菜々美の左手首を掴んで流水に晒す。
「心配で厨房に立たせられない。気をつけてくれ」
「……すみません」
掠れた声に、心臓のやわらかい部分を引っ掻かれた気がした。その部分からじわじわと熱を帯びていくような、ぞくぞくする感じに唇を噛みしめる。
(わ、私……なんだか……胸が……苦しい……)
すぐに水で冷やしたのがよかったのだろう、火傷した部分は赤くなったりもせず、痛みもほとんどない。
「ありがとうございます。もう大丈夫です」
咲人の整った顔に安堵が浮かび、小さく息をついた。
「大事なくてよかった。少し休んでくれ」
「いいえ、後は切り分けるだけですので……」
「そうか。包装紙が足りないから、俺は倉庫から探して持ってくる。もう少しすると粉類や小豆が業者から届くから、受け取っておいてほしい」
「わかりました」
咲人が出て行くと、菜々美は小さく息をつき、気をつけながら、冷やしわらび餅をスケッパーで食べやすい大きさに切っていく。
それらを冷蔵ケースに入れながら、黒蜜ときな粉の用意をしていると、がらっと勢いよく扉が引かれた。
菜々美が振り返ると、段ボール箱を抱えた男性が入ってきた。肩までの金髪と、彫りが深く端正な顔立ちをした男性だ。
「あ、業者の方ですか? お世話に……」
「咲人くうぅぅん、おっはようぅぅ!」
彼はいきなり大きな声を出すと、口をすぼめ、チュッと誰もいない厨房へ向けて投げキッスをしたまま、動きを止めた。
「ちょっと! 咲人くんはどこよ?」
「あ、あの。おはようございます。咲人さんはちょっと用があって、倉庫に。私が商品をお受け取りしますので」
彼は訝しげに菜々美を睨んだ。
「誰よ、あんた」
敵意を感じ、菜々美は困惑しながらも、自己紹介する。
「初めまして。少し前に採用になった、スタッフの桃瀬菜々美です」
「なんですってぇ? あんた、この店で咲人くんと働いているのぉ?」
「はい……」
射殺すような眼差しに、菜々美は動揺し、それ以上言葉が出ない。
気まずい沈黙が広がり、ハーフっぽい男性が何か言いかけたところで、包装紙を手に、咲人が戻ってきた。
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