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三皿目 ろくろ首の母娘と水羊羹
その6 首が伸びる母娘
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アカリが、清美の顔をまっすぐに見上げる。
「ママのお付き合いしている人って……間宮さんのこと?」
「ええ、そうよ。改めて言うと照れるわね。ねえ、アカリは間宮さのこと、どう思う?」
「あたし……わからない」
対面式のカウンターで咲人と共に和菓子をお皿に盛りつけていた菜々美は、アカリの顔がすうっと強張っていくことに気づいた。
(アカリちゃん……どうしたのかな)
アカリは母親の目をじっと見つめ、言葉を選ぶようにして問う。
「ママが間宮さんと結婚したら、あたしの新しいパパになるの?」
「そうね。結婚したらそうなるけど……間宮さんはあたしやアカリのことは好きだけど、結婚はまだ考えてないって。今は仕事を探しているところだからって」
清美は「そういうわけで、ご紹介は結構ですわ。すみません」と、用紙を蘭丸に返した。
「あの、えっと、――お待たせしました」
菜々美は朱色の盆に『冷やしわらび餅』と『茹で小豆の葛プリン』をそれぞれ二人分、それからオレンジジュースとよく冷やした水出し緑茶を載せて運ぶ。
(お、重い……)
ひとり分ずつ運べばよかったけど、なんだか込み入った話だったので、両手で一気に持ってこようと思ったのだ。
失敗だったなと思っていると、ひょいと左手が軽くなった。すぐ左に咲人がいて、盆を持ってくれている。
「咲人さん、すみません。助かりました」
「無理をするな。ひっくり返したらどうする」
乱暴な言葉だが、咲人の眼差しは優しい。テーブルに盆を並べると、母娘は笑みを浮かべた。
「わぁ、美味しそう。いただきます」
アカリは待ちきれないという様子で、和三盆糖のシロップをかけて『冷やしわらび餅』を口に運ぶ。
「ママ、すごい。これ、もちもちで、ぷるぷるして、美味しい!」
「本当につるつると食べやすくて、この歯ごたえが何とも言えないわね」
清美は黒蜜シロップをたっぷりかけて頬張り、目を細めている。
お口に合ったようでよかった。アカリはオレンジジュース、清美は煎茶を飲み、『茹で小豆の葛プリン』を手に取った。
本葛粉を使用したミルクプリンの上に甘い茹で小豆をトッピングして、ひんやりと冷やしている。
「わぁ、このプリンも、すごく美味しい……!」
スプーンで掬って口に入れたアカリがうっとり目を閉じた瞬間、首がひょろりと伸びた。
「本当に、つるりとしたのど越しが最高だわ」
清美の首も伸びて、アカリと頬を摺り寄せている。
ろくろ首には、首が伸びるタイプと、首そのものが胴から抜け出るタイプがあるが、清美とアカリは前者のようだ。
「ママのお付き合いしている人って……間宮さんのこと?」
「ええ、そうよ。改めて言うと照れるわね。ねえ、アカリは間宮さのこと、どう思う?」
「あたし……わからない」
対面式のカウンターで咲人と共に和菓子をお皿に盛りつけていた菜々美は、アカリの顔がすうっと強張っていくことに気づいた。
(アカリちゃん……どうしたのかな)
アカリは母親の目をじっと見つめ、言葉を選ぶようにして問う。
「ママが間宮さんと結婚したら、あたしの新しいパパになるの?」
「そうね。結婚したらそうなるけど……間宮さんはあたしやアカリのことは好きだけど、結婚はまだ考えてないって。今は仕事を探しているところだからって」
清美は「そういうわけで、ご紹介は結構ですわ。すみません」と、用紙を蘭丸に返した。
「あの、えっと、――お待たせしました」
菜々美は朱色の盆に『冷やしわらび餅』と『茹で小豆の葛プリン』をそれぞれ二人分、それからオレンジジュースとよく冷やした水出し緑茶を載せて運ぶ。
(お、重い……)
ひとり分ずつ運べばよかったけど、なんだか込み入った話だったので、両手で一気に持ってこようと思ったのだ。
失敗だったなと思っていると、ひょいと左手が軽くなった。すぐ左に咲人がいて、盆を持ってくれている。
「咲人さん、すみません。助かりました」
「無理をするな。ひっくり返したらどうする」
乱暴な言葉だが、咲人の眼差しは優しい。テーブルに盆を並べると、母娘は笑みを浮かべた。
「わぁ、美味しそう。いただきます」
アカリは待ちきれないという様子で、和三盆糖のシロップをかけて『冷やしわらび餅』を口に運ぶ。
「ママ、すごい。これ、もちもちで、ぷるぷるして、美味しい!」
「本当につるつると食べやすくて、この歯ごたえが何とも言えないわね」
清美は黒蜜シロップをたっぷりかけて頬張り、目を細めている。
お口に合ったようでよかった。アカリはオレンジジュース、清美は煎茶を飲み、『茹で小豆の葛プリン』を手に取った。
本葛粉を使用したミルクプリンの上に甘い茹で小豆をトッピングして、ひんやりと冷やしている。
「わぁ、このプリンも、すごく美味しい……!」
スプーンで掬って口に入れたアカリがうっとり目を閉じた瞬間、首がひょろりと伸びた。
「本当に、つるりとしたのど越しが最高だわ」
清美の首も伸びて、アカリと頬を摺り寄せている。
ろくろ首には、首が伸びるタイプと、首そのものが胴から抜け出るタイプがあるが、清美とアカリは前者のようだ。
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