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四皿目 どら焼きと離婚寸前の夫婦
その11 蘭丸と夜空
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「蘭丸さん、少し、話を聞いてもらえますか?」
「うん。いいよ」
菜々美は天真爛漫な蘭丸に、悩みを聞いてほしくなった。今の正直気持ちが伝わるように、慎重に言葉を選ぶ。
「私、ずっとコンプレックスがあったんです。モデルをしている双子の妹、美月のことで……大好きなのに、何て言うか……。ここへ来る前に努めていたカフェも、オーナーが美月に一目惚れして、連絡先を教えろとしつこくて、それで辞めたので……」
「そのオーナーってひどいね。公私混同で菜々美ちゃんを辞めさせるなんて。いやな思い出は早く忘れた方がいいよ」
そう言えば、『甘味堂夕さり』で働き出してからは、仕事が楽しくて、山本オーナーのことを考えなくなっていた。
「私、忘れてました。このお店のおかげです」
「それはよかった。菜々美ちゃんには、菜々美ちゃんにしかない、いいところがたくさんあるよ。僕は、菜々美ちゃんの元気なところ、他の人のために一生懸命に頑張るところ、他にもたくさん、すごいと思っている。だから菜々美ちゃんが妹の美月さんと自分を比べることはないと思うし、落ち込んでほしくないんだ」
そう言って優しく微笑んだ蘭丸に、菜々美は唇を噛みしめた。
「ありがとうございます。蘭丸さんは本当に優しい……すごく嬉しいです」
「本当のことだよ」
菜々美が心底嬉しそうな笑みを浮かべると、蘭丸は照れたような顔で立ち上がり、窓際へ行った。
細く窓を開けると、風がそっと入ってくる。
「風が気持ちいいですね」
菜々美も蘭丸のそばに立って、窓の外を見上げた。
視界には夜景が広がり、この人界との狭間には街灯のような灯りはなく、ただ漆黒の闇が続いていた。
すっと蘭丸が夜空を指差した。
「ほら見て、菜々美ちゃん。星がきれいだよ」
漆黒の夜空に、銀砂を撒いたような星々が見え、気持ちのよい涼風が吹き、菜々美の黒髪を揺らしている。
「きれいですね」
「うん」
「あの、すみません……私、変なことを話してしまって」
「ううん。僕は、菜々美ちゃんがコンプレックスのことを話してくれたことが、すごく嬉しい」
無邪気な蘭丸の笑顔が、星灯りを受けて煌めいている。
「うん。いいよ」
菜々美は天真爛漫な蘭丸に、悩みを聞いてほしくなった。今の正直気持ちが伝わるように、慎重に言葉を選ぶ。
「私、ずっとコンプレックスがあったんです。モデルをしている双子の妹、美月のことで……大好きなのに、何て言うか……。ここへ来る前に努めていたカフェも、オーナーが美月に一目惚れして、連絡先を教えろとしつこくて、それで辞めたので……」
「そのオーナーってひどいね。公私混同で菜々美ちゃんを辞めさせるなんて。いやな思い出は早く忘れた方がいいよ」
そう言えば、『甘味堂夕さり』で働き出してからは、仕事が楽しくて、山本オーナーのことを考えなくなっていた。
「私、忘れてました。このお店のおかげです」
「それはよかった。菜々美ちゃんには、菜々美ちゃんにしかない、いいところがたくさんあるよ。僕は、菜々美ちゃんの元気なところ、他の人のために一生懸命に頑張るところ、他にもたくさん、すごいと思っている。だから菜々美ちゃんが妹の美月さんと自分を比べることはないと思うし、落ち込んでほしくないんだ」
そう言って優しく微笑んだ蘭丸に、菜々美は唇を噛みしめた。
「ありがとうございます。蘭丸さんは本当に優しい……すごく嬉しいです」
「本当のことだよ」
菜々美が心底嬉しそうな笑みを浮かべると、蘭丸は照れたような顔で立ち上がり、窓際へ行った。
細く窓を開けると、風がそっと入ってくる。
「風が気持ちいいですね」
菜々美も蘭丸のそばに立って、窓の外を見上げた。
視界には夜景が広がり、この人界との狭間には街灯のような灯りはなく、ただ漆黒の闇が続いていた。
すっと蘭丸が夜空を指差した。
「ほら見て、菜々美ちゃん。星がきれいだよ」
漆黒の夜空に、銀砂を撒いたような星々が見え、気持ちのよい涼風が吹き、菜々美の黒髪を揺らしている。
「きれいですね」
「うん」
「あの、すみません……私、変なことを話してしまって」
「ううん。僕は、菜々美ちゃんがコンプレックスのことを話してくれたことが、すごく嬉しい」
無邪気な蘭丸の笑顔が、星灯りを受けて煌めいている。
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