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五皿目 見越入道の暴走と和菓子の絆
その11 占い館
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(蘭丸さんも美月も、どうして私にひとこと、言ってくれなかったんだろう。隠れるようにして会わなくてもいいのに。邪魔しないのに。秘密にしないでほしかった……!)
ないがしろにされた気がして、菜々美は唇を噛みしめた。目の奥が熱くなる。
もしかすると、菜々美が気づかないうちに、東京へ行って美月は変わってしまったのかもしれない。初めて、美月に裏切られた気がした。
気持ちがどんどん落ち込んでしまいそうで、菜々美は懸命に自分の考えを否定しようと、小さく首を左右に振った。
どうしても、顔を真っ赤にして嬉しそうに会話する蘭丸と、そんな彼を優しく見つめる美月の笑顔が、頭の中をぐるぐると回ってしまう。
「菜々美ちゃん?」
母の声に我に返り、「あ、母さん、な、なに?」と、しどろもどろに返事をした。
「なんだか顔色が悪いけど、大丈夫?」
「うん、元気よ。カラオケが楽しみ」
「そろそろ美月ちゃんに連絡してみようかな。まだ彼氏と一緒かしら。むふふ、美月ちゃん照れ屋さんだから、見たってことは内緒にしておきましょうね」
母はそう言いながらバッグの中からスマートフォンを取り出し、メールを打つと、すぐに返事が返ってきた。
「美月ちゃんから、三十分あと、駅前の噴水の前で待ち合わせましょうって。もう少し時間があるから、デザートを頼みましょうか」
母はクリームソーダ―をふたつ注文した。普段は美味しいデザートもあまり味がわからないまま、菜々美は母と一緒に駅前の噴水の前に行った。そこには美月がひとりで待っていた。
「菜々美、母さん、お昼食べた?」
明るい声で尋ねてくる美月が、何だか違う人のように感じる。それでも、せっかく帰省中の美月と喧嘩するわけにもいかず、菜々美も「うん、食べたよ」と普段通り笑顔を向けた。
「あれ、菜々美、どうしたの、元気ないよ」
菜々美の様子がおかしいと気づいた美月が、すっと額に手を置いた。
「熱はないようね。体調が悪かったら、カラオケ止めて、家に帰る? 菜々美、無理しないでね」
「美月……ありがとう。本当に平気よ」
美月がそっと菜々美と手を繋いだ。小さな頃から知っている妹の手の感触と温もりに、菜々美は小さく息をつく。
「えっと、この先だわ。部屋数が多くてきれいなカラオケ店があるって聞いたの」
母が、保護者の若いママさんから聞いた情報を元に、道案内してくれる。
母娘三人で駅前西口を出て歩いて行くと、一本入った裏道に『占い館』と看板が出ているビルが見えた。
「さっきから若い女性がよく出入りしているけど、ここは何の建物?」
美月が興味深く聞くと、母が「占い館よ」と答えた。
「いろいろな占い師が集まっているビルで、結構流行っているらしいの。美月、興味があるなら、占ってもらう?」
「ううん。占いは……いいわ。それよりカラオケがしたい」
そんな話をしながら、美月と菜々美と母の三人で足早に通り過ぎようとした直後、占い館から罵声が聞こえ、男女が出入り口から出てきた。
「あ……」
菜々美は目を見張った。飛び出してきたのは見越入道のあやかし、柳田研也と、女郎蜘蛛のあやかし、妹尾明日香だ。二人は人型を取っている。
ないがしろにされた気がして、菜々美は唇を噛みしめた。目の奥が熱くなる。
もしかすると、菜々美が気づかないうちに、東京へ行って美月は変わってしまったのかもしれない。初めて、美月に裏切られた気がした。
気持ちがどんどん落ち込んでしまいそうで、菜々美は懸命に自分の考えを否定しようと、小さく首を左右に振った。
どうしても、顔を真っ赤にして嬉しそうに会話する蘭丸と、そんな彼を優しく見つめる美月の笑顔が、頭の中をぐるぐると回ってしまう。
「菜々美ちゃん?」
母の声に我に返り、「あ、母さん、な、なに?」と、しどろもどろに返事をした。
「なんだか顔色が悪いけど、大丈夫?」
「うん、元気よ。カラオケが楽しみ」
「そろそろ美月ちゃんに連絡してみようかな。まだ彼氏と一緒かしら。むふふ、美月ちゃん照れ屋さんだから、見たってことは内緒にしておきましょうね」
母はそう言いながらバッグの中からスマートフォンを取り出し、メールを打つと、すぐに返事が返ってきた。
「美月ちゃんから、三十分あと、駅前の噴水の前で待ち合わせましょうって。もう少し時間があるから、デザートを頼みましょうか」
母はクリームソーダ―をふたつ注文した。普段は美味しいデザートもあまり味がわからないまま、菜々美は母と一緒に駅前の噴水の前に行った。そこには美月がひとりで待っていた。
「菜々美、母さん、お昼食べた?」
明るい声で尋ねてくる美月が、何だか違う人のように感じる。それでも、せっかく帰省中の美月と喧嘩するわけにもいかず、菜々美も「うん、食べたよ」と普段通り笑顔を向けた。
「あれ、菜々美、どうしたの、元気ないよ」
菜々美の様子がおかしいと気づいた美月が、すっと額に手を置いた。
「熱はないようね。体調が悪かったら、カラオケ止めて、家に帰る? 菜々美、無理しないでね」
「美月……ありがとう。本当に平気よ」
美月がそっと菜々美と手を繋いだ。小さな頃から知っている妹の手の感触と温もりに、菜々美は小さく息をつく。
「えっと、この先だわ。部屋数が多くてきれいなカラオケ店があるって聞いたの」
母が、保護者の若いママさんから聞いた情報を元に、道案内してくれる。
母娘三人で駅前西口を出て歩いて行くと、一本入った裏道に『占い館』と看板が出ているビルが見えた。
「さっきから若い女性がよく出入りしているけど、ここは何の建物?」
美月が興味深く聞くと、母が「占い館よ」と答えた。
「いろいろな占い師が集まっているビルで、結構流行っているらしいの。美月、興味があるなら、占ってもらう?」
「ううん。占いは……いいわ。それよりカラオケがしたい」
そんな話をしながら、美月と菜々美と母の三人で足早に通り過ぎようとした直後、占い館から罵声が聞こえ、男女が出入り口から出てきた。
「あ……」
菜々美は目を見張った。飛び出してきたのは見越入道のあやかし、柳田研也と、女郎蜘蛛のあやかし、妹尾明日香だ。二人は人型を取っている。
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