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五皿目 見越入道の暴走と和菓子の絆
その10 話してほしかった
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午後まで時間ができ、菜々美は自室で『夕さり』の和菓子のノートを見直し、母は保育用の工作や壁面を作って過ごした。
「そろそろお昼だね、菜々美ちゃん、二人で駅前に出て、何か食べる? そうだ、保育園に通っている子供のママさんたちから、さんすて岡山に、新しいお店が入ったって聞いたのよ」
「わ、行ってみよう、母さん」
菜々美と智子は駅前までバスで出かけた。日差しが強く、駅ビルに入ると冷房が効いてほっとした。
盆休みに入っているので人が多く、まだ昼前だが、新しい店の前は家族連れやアベックなどがずらりと並んでいた。
「行列ができてるわね。どうする?」
「美月と待ち合わせの時間もあるし、別の店で食べようか」
「そうね。何を食べようかな。……あれ?」
母が急に足を止めた。どうしたのだろうと思っていると、菜々美の腕を引っ張ってお店の壁に隠れ、そっと耳打ちする。
「見て、あそこに美月ちゃんがいるの。女友達と会うって言っていたのに、男の人と一緒だわ」
「えっ? まさか、また変な男にストーカーされてるんじゃ……」
今にも飛び出して行こうとした菜々美は、ハッと息を呑んだ。
おしゃれな洋食のカフェの窓際に、美月がいる。テーブルをはさんで向かい合っているのは蘭丸だ。
(えっ、美月と蘭丸さん……?)
愛らしいワンピース姿の美月と向かい合った蘭丸は、黒色のカッターシャツとチノパン姿で、いつもよりおしゃれをして、何やら熱心に話しながら、時折笑顔を見せている。
偶然会ったという体ではなく、二人はとても楽しげに食事をしている。
(美月と蘭丸さんがなぜ二人でいるの……? 二人が会うなんて、私、何も聞いてない……)
美月はモデルという仕事柄、自分から男性を誘うことはなかったと思う。蘭丸が誘ったのだろうか。
昨日、山本オーナーが襲ってきて動転して、あまりよく覚えていないが、蘭丸と美月は打ち解けた雰囲気になっていたと思う。
蘭丸だって若い男性だ。美月と二人きりで食事をしたいと思うのは自然だ。
(でも、私にひとことくらい、相談してくれてもいいんじゃないかな……。美月も……)
美月と昨夜いろいろ話をしたのに、今日蘭丸と会うなんて、ひとことも教えてくれなかった。
それどころか、女友達の名前まで出して、美月は菜々美に嘘をついたのだ。
(なんでだろう……胸が、痛い……)
美月と蘭丸を遠くに感じる。まるで別人のようだ。二人を正視することができなくなり、菜々美は顔を背け、向きを変える。
「行こう、母さん。私たちも別の店で、お昼を食べよう」
「そうね。邪魔しないほうがいいわね。ふふふ、美月ちゃんったら、女友達と会うなんて言って」
「……」
菜々美と母は、一階に下りて別のレストランに入った。オムライスを注文して食べたが、味がよくわからなかった。
「それにしても、可愛い顔をした素敵な男性だったわね。名前とか詳しく知りたいけれど、そっとしておいてあげないと」
今まで菜々美も美月も、特別なボーイフレンドを作ったことがなかったので、母は上機嫌だ。
「うん、そうだね」
菜々美は小さな声で相槌を打った。
「そろそろお昼だね、菜々美ちゃん、二人で駅前に出て、何か食べる? そうだ、保育園に通っている子供のママさんたちから、さんすて岡山に、新しいお店が入ったって聞いたのよ」
「わ、行ってみよう、母さん」
菜々美と智子は駅前までバスで出かけた。日差しが強く、駅ビルに入ると冷房が効いてほっとした。
盆休みに入っているので人が多く、まだ昼前だが、新しい店の前は家族連れやアベックなどがずらりと並んでいた。
「行列ができてるわね。どうする?」
「美月と待ち合わせの時間もあるし、別の店で食べようか」
「そうね。何を食べようかな。……あれ?」
母が急に足を止めた。どうしたのだろうと思っていると、菜々美の腕を引っ張ってお店の壁に隠れ、そっと耳打ちする。
「見て、あそこに美月ちゃんがいるの。女友達と会うって言っていたのに、男の人と一緒だわ」
「えっ? まさか、また変な男にストーカーされてるんじゃ……」
今にも飛び出して行こうとした菜々美は、ハッと息を呑んだ。
おしゃれな洋食のカフェの窓際に、美月がいる。テーブルをはさんで向かい合っているのは蘭丸だ。
(えっ、美月と蘭丸さん……?)
愛らしいワンピース姿の美月と向かい合った蘭丸は、黒色のカッターシャツとチノパン姿で、いつもよりおしゃれをして、何やら熱心に話しながら、時折笑顔を見せている。
偶然会ったという体ではなく、二人はとても楽しげに食事をしている。
(美月と蘭丸さんがなぜ二人でいるの……? 二人が会うなんて、私、何も聞いてない……)
美月はモデルという仕事柄、自分から男性を誘うことはなかったと思う。蘭丸が誘ったのだろうか。
昨日、山本オーナーが襲ってきて動転して、あまりよく覚えていないが、蘭丸と美月は打ち解けた雰囲気になっていたと思う。
蘭丸だって若い男性だ。美月と二人きりで食事をしたいと思うのは自然だ。
(でも、私にひとことくらい、相談してくれてもいいんじゃないかな……。美月も……)
美月と昨夜いろいろ話をしたのに、今日蘭丸と会うなんて、ひとことも教えてくれなかった。
それどころか、女友達の名前まで出して、美月は菜々美に嘘をついたのだ。
(なんでだろう……胸が、痛い……)
美月と蘭丸を遠くに感じる。まるで別人のようだ。二人を正視することができなくなり、菜々美は顔を背け、向きを変える。
「行こう、母さん。私たちも別の店で、お昼を食べよう」
「そうね。邪魔しないほうがいいわね。ふふふ、美月ちゃんったら、女友達と会うなんて言って」
「……」
菜々美と母は、一階に下りて別のレストランに入った。オムライスを注文して食べたが、味がよくわからなかった。
「それにしても、可愛い顔をした素敵な男性だったわね。名前とか詳しく知りたいけれど、そっとしておいてあげないと」
今まで菜々美も美月も、特別なボーイフレンドを作ったことがなかったので、母は上機嫌だ。
「うん、そうだね」
菜々美は小さな声で相槌を打った。
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