ホームレスを装備しました(この小説はホームレス専用の小説です! ホームレスではない方は見ないでください!)

大和田大和

文字の大きさ
23 / 38

能力の正体

しおりを挟む
「女を殺されたくなければ、電撃の包囲を解除しろ!」
少年は私の喉につるぎを押し付けてくる。痛いほど力を込められた刃物は、私の白い肌に食い込む。滴る赤い血が、彼の殺意を物語る。
「私ごとやって!」

私は先生に向かって声を飛ばす。
(ここで電撃を解除したらもうこの少年を倒すチャンスは来ない。先生、お願い! 電撃を解除しないで!)
そして、先生は電撃を解除した。
私は彼に押される形で前に進む。少年は周囲を警戒しながら先生の元に近寄っていく。私は精一杯頭を落ち着かせた。何か逆転の糸口を掴まないと!
「お願いやめて! あなたは一体何が望みなの? 何でこんなひどいことをするの?」
「黙れっ!」

そして、十分距離を詰めると、彼は私の持っている剣をひったくると自分の掌の上に乗せた。
「二人とも動くなよ」
少年は剣の切っ先をまっすぐに先生の喉元に向けている。念動力で遠くから先生を殺すつもりだ。最小限のリスクで目的を達成できる。
剣が細かく震えながら少しだけ少年の掌から浮かび上がる。空気を通して、剣の振動を肌で感じた。少年は心から湧き上がる確信した勝利を口にした。
「俺の勝ちだ」

そして、剣はまっすぐに飛んで先生の喉に深く、深く、突き刺さった。鈍い音と共に、先生は地面に沈み込んだ。
そこから先は形容できないほど残酷だった。簡単に説明すると、少年が先生に念入りにとどめを刺したということだ。
私は彼の束縛から解き放たれて地面に両の膝をついた。力なく俯く私は、まるで冷たい人形。人の形をかろうじて保っている、何か別のものみたいだ。
「次はお前だ」

少年は黒い剣を力一杯振り上げる。そして、豪快に空を切った。彼の剣は空に美しい曲線を描いて正確に私の首を落とした。私の首は放物線を描いて、吹っ飛ばされて地面を転がる。私の顔は無念の表情を浮かべていた。
「これで全部終わったんだ」
少年は胃ガンが摘出された後のような清々しい表情をしている。そんな彼に私は声をかけた。
「まだよ」
「何っ!」

彼は慌てて、剣を構え直す。周囲を確認して、
「まだ生きているのか? 何をした?」
彼は恐る恐る私の首に近寄ってきた。彼は私の首を拾い上げた。私の首はまっすぐに彼の瞳を見つめ返し、可愛らしくウインクをしてみせた。

「うわっ!」
少年は心の底から恐怖の声を上げて、私の首を放り投げた。彼の心臓の音が聞こえそうだ。
「お前は我々に勝てない」
さっきまで地面に沈み込んでいた先生が起き上がった。
「お前も生きているのか? そんなはずはない。絶対に殺したはずだ!」
首を切断された私の死体も起き上がる。私は頭のない部分から声を発した。

「あなたの負け」

私と先生の死体がゆっくりと少年に近づいていく。
「こんな都合のいい能力があるはずがない。これは幻術か、幻覚か何かだろ!」
私と先生の死体が彼のばたつく体を二人掛かりで羽交い締めにした。先生の太い腕が少年の細い首を力一杯締め上げる。

[現実]
「気づいてももう遅いわ! 大人しくして!」
私と先生は彼の体を押さえる。これで完全に私たちの勝ちだ!
「先生! そいつを気絶させて! 早く!」
先生は腕に万力のような力を込める。焼け付くような緊張感が肌の上で踊る。もう少しで勝てる。そして、先生は突然腕の力を緩めた。

少年はメインの束縛から解放されると私を右側から蹴りつけた。彼と最初に出会ったときを思い出す。私は吹っ飛ばされて地面を転がった。

少年の方を見ると、少年も相当ダメージを負っているのだろう、肩で息をしている。
『四十五パーセント』
聞き覚えのある冷たいアナウンスが流れた。
「それがあなたの切り札ね」
「そうだ」
この少年と渓谷で戦った時に、最後に彼が使った能力は未知のままだった。

「装備能力は装備できっこないような物であればあるほど、強く禍々しくなる。あなたは前回、私たちを全滅させる直前に急に、踵を返して去っていった」
少年は辛そうに、脂汗を額から流している。

「あの時、私たちにとどめを刺さなかったんじゃない。刺せなかったのよ。あなたが能力を使うたびに流れるアナウンスはおそらく警告。数字が上昇すればするほどあなたの体に何らかのダメージが入る」
少年は否定も何もせずに、歯を食いしばっている。

「私たちはあの戦いの後、しばらくの間入院したわ。ステージワン、ステージツー、ステージスリーの順に症状が重かった。高熱、吐き気、頭痛、めまい、腹痛、そして、全身を襲う悶絶するほどの苦痛。これらの症状はあなたが常に感じている症状なんでしょ?」

少年は鋭い目つきで私を睨む。刺さるほどの視線が少しだけ痛かった。
「あなたは戦えるような状態じゃないの。もうやめて」
「ダメだ」
「あなたの能力は念動力と今使っている能力の二つ。必ず、念動力の方から使って、その能力だけでケリをつけようとする。攻撃は熾烈で激しい。短期決戦にして、いつも早めに戦闘を終了させようとしている」
「俺の能力がわかったから勝ったつもりか?」

「あなたは強力な装備能力を持っているにも関わらず、黒い剣を常に持っている。最初は念動力で使うためだと思っていたけど、それが“もう一つの能力の発動条件”なんでしょ?」
少年は黒い剣を構える。私もそれに応えるように剣を構えた。切っ先がお互いの体に向かって伸びている。交差した切っ先は見えない火花を撒き散らす。

「あなたの装備しているのは“あなたの病気”でしょ? あなたの能力は“黒い剣を媒体にしてあなたの病気を他者に感染させる能力”よ」
そして、彼は大きく飛び上がり切りかかってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...