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背後
しおりを挟むもうダメだと思った瞬間――
「よくも我の息子に手を出したなああああ!」
最後のピンチを助けてくれたのは、最も手助けとは縁遠い存在だった。真の姿で現れた竜王は巨体で先代の竜王を踏み潰した。
竜王は第三形態になっていた。人間の少女の姿がどれほど力を隠していたのかわかった。
竜王は首が三つあり、全身が黄金色に光り輝いている。
翼は大陸がすっぽり隠せそうなほど大きい。羽ばたくたびに金粉が地上に向かって舞い散る。
頭からは巨大な二本の角がそれぞれの頭に生えている。鱗の一枚一枚は、家のようにでかく分厚い。
「ママー!」
子竜が嬉しそうに飛び跳ねている。
「お前のママって竜王だったのか」
俺は声にならない声を出した。
竜王は三つの首で先代の竜王にかじりつく。野太い牙が、深く深くへと食い込む。
「ぎゃああああああ!」、「ぎゃああああああ!」
そして、勢いよく先代の竜王の体を食いちぎった。先代の竜王の体から大きく三つの肉の塊が奪われた。
竜王はそれらを吐き捨てる。肉塊は空を滑り、新たな浮島となった。
「貴様! 今度こそ息の根を止めてやる! 我の息子に手を出したことを死んで後悔しろ!」
愛する息子を傷つけられた竜王は、忿怒の表情を浮かべる。空気から淀んだ怒りが伝わってくる。激しく燃える怒りの太陽は、烈火のごとく火花を散らす。
「愛はゴミ以下なんじゃなかったのかよ」
俺は竜王の怒りを見て、思わずこぼしていた。
竜王の背中に乗っていたアルとアリシアは飛び降りて、俺の元へと駆け寄る。
「おい! 大丈夫か? 体がバラバラじゃないか?」
俺の視界に、血の気の引いたアルが映る。
「すぐに治してあげるからね!」
アリシアは、普段のおちゃらけた態度ではなく本気で俺のことを心配してくれている。
俺の体のパーツを持ってきてくれた。
俺が起き上がると、先代の竜王と現竜王の対決の真っ最中だった。
「今ここで積年の恨みを晴らす!」、「一千年前の屈辱をお前にぶつけてやろう!」
「やってみろ」
「次の竜王は俺だ!」、「次の竜王は俺だ!」
先代竜王は一瞬で竜王の背後を取った。
俺の背後を取ったあの技だ。先代竜王は巨体に見合わない瞬発力を持っている。
先代竜王は背後から卑怯にも殴りかかる。
そして--
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