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45 愛する人
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困惑しながら聞くと、副所長はジッと私の目を見てから笑って言った。
「いつか教えてやる」
そう言って副所長は私を置いて、施設の出口へと歩いて行く。
私は副所長の背中を呆然と見つめる。
動揺していた姿が嘘かのように、副所長はいつも通り、意地悪な副所長に戻っていた。
はぐらかされた?
いつから好きになったのか、教えてくれてもいいじゃない。
私は足に力をいれ、副所長の背中を追いかける。
「副所長!今教えてくれてもいいじゃないですか!」
副所長の前に、立ち塞がって言うと。
「後悔しないか?」
副所長はさっきと同じ言葉を繰り返す。
副所長の視線にたじろいでしまう。え私は唾をゴクッと飲み込んで「はい……」と、副所長の目を真っ直ぐと見る。
「じゃあ、教えてやる」
副所長の言葉に、何を言われるのかドキドキしていると、副所長は顔を傾け、顔を近づける。
「シャーロットが魔塔に研修としてやって来たとき、魔塔の裏で隠れて一人、泣いているのをーー」「副所長!!」
泣いていたことを言われるなんて思っていなかった私は、副所長の口を手で慌てて塞ぐ。
一人で泣いていたのを見られていた事実に、私の顔は熱くなる。
当時、学生だった私は、異国の地で周りの人たちの知識と魔法の才能に、自分の実力の無さを痛感していた。そして、自分の無力さに、一人で隠れて泣くことがよくあった。
誰にも見られていないと思っていたのに……。副所長に見られていたなんて……。
私が真っ赤な顔で、泣きそうになりながら、副所長の口を手で塞いだまま、口をパクパクとさせる。
そんな私に、副所長は目を細めて私の手を取った。
副所長が私の手を引くと、私の身体は抵抗することなく、副所長に抱きしめられる。
「シャーロットが頑張っている姿を見て、僕も頑張ろうと思えたんだ。魔塔で無気力に生きていた僕に、シャーロットは僕に生きる喜びを教えてくれた」
耳元で囁かれる言葉に、私はびくりと身体を震わせる。
離れようと、副所長の胸を押すと、副所長はグッと私を抱く腕に力を入れた。
「どこへ行ってもいい。だけど……これからは僕だけを見て、僕だけを愛して」
副所長の告白に、言葉が詰まる。
私は今まで、こんなにも誰かに思われたことがあっただろうか?
婚約者の浮気に傷ついた心は、副所長によって癒され、気付けば私は副所長に惹かれていた。
知らなかった感情が溢れ出して、涙が頬を濡らす。
副所長の側にいれば、私が私らしくいられる。そして、副所長となら、どんなことでも乗り越えられる気がした。
「……………はい」
絞り出された短い言葉は震えていた。
私の言葉に、副所長は抱きしめる力を強くした。
「いつか教えてやる」
そう言って副所長は私を置いて、施設の出口へと歩いて行く。
私は副所長の背中を呆然と見つめる。
動揺していた姿が嘘かのように、副所長はいつも通り、意地悪な副所長に戻っていた。
はぐらかされた?
いつから好きになったのか、教えてくれてもいいじゃない。
私は足に力をいれ、副所長の背中を追いかける。
「副所長!今教えてくれてもいいじゃないですか!」
副所長の前に、立ち塞がって言うと。
「後悔しないか?」
副所長はさっきと同じ言葉を繰り返す。
副所長の視線にたじろいでしまう。え私は唾をゴクッと飲み込んで「はい……」と、副所長の目を真っ直ぐと見る。
「じゃあ、教えてやる」
副所長の言葉に、何を言われるのかドキドキしていると、副所長は顔を傾け、顔を近づける。
「シャーロットが魔塔に研修としてやって来たとき、魔塔の裏で隠れて一人、泣いているのをーー」「副所長!!」
泣いていたことを言われるなんて思っていなかった私は、副所長の口を手で慌てて塞ぐ。
一人で泣いていたのを見られていた事実に、私の顔は熱くなる。
当時、学生だった私は、異国の地で周りの人たちの知識と魔法の才能に、自分の実力の無さを痛感していた。そして、自分の無力さに、一人で隠れて泣くことがよくあった。
誰にも見られていないと思っていたのに……。副所長に見られていたなんて……。
私が真っ赤な顔で、泣きそうになりながら、副所長の口を手で塞いだまま、口をパクパクとさせる。
そんな私に、副所長は目を細めて私の手を取った。
副所長が私の手を引くと、私の身体は抵抗することなく、副所長に抱きしめられる。
「シャーロットが頑張っている姿を見て、僕も頑張ろうと思えたんだ。魔塔で無気力に生きていた僕に、シャーロットは僕に生きる喜びを教えてくれた」
耳元で囁かれる言葉に、私はびくりと身体を震わせる。
離れようと、副所長の胸を押すと、副所長はグッと私を抱く腕に力を入れた。
「どこへ行ってもいい。だけど……これからは僕だけを見て、僕だけを愛して」
副所長の告白に、言葉が詰まる。
私は今まで、こんなにも誰かに思われたことがあっただろうか?
婚約者の浮気に傷ついた心は、副所長によって癒され、気付けば私は副所長に惹かれていた。
知らなかった感情が溢れ出して、涙が頬を濡らす。
副所長の側にいれば、私が私らしくいられる。そして、副所長となら、どんなことでも乗り越えられる気がした。
「……………はい」
絞り出された短い言葉は震えていた。
私の言葉に、副所長は抱きしめる力を強くした。
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