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20.トレニア国史
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「前王には王子が三人いたんだ。もちろん、レキシコン王を除いてね。で、困ったことに三人が三人共、王の器ではなかった」
第一王子のザイル殿下は秀才ではあったが、武芸はからきしで騎士達の人気は低く、替わりに第二王子のハルト様は活発な性質で、剣技は騎士団長と互角と言えるほどだったが、学は奮わず。
そして第三王子は――。
「読書家で学者達を唸らせるほどの資質を持っていたらしいけれど、体が丈夫ではなくてね。一年の半分は床の中さ」
(何か歴史ものでよく見るパターン)
「さて」
ラインが空になったカップをとん、と置いた。
「ここから先、長くなるけどいいのかい?」
今は夕食後。
いつもなら後片付けをして休んでいる。
こうして話を聞くのは、お茶が一杯終わるまで、という不文律ができていたけど、ここまできて続きは明日、というのも余計気にかかる。
「続きをお願いします」
「そう言うと思ったよ。でも明日も今日と同じように起こすよ」
(う、そういう意地の悪い笑みも決まってる、ってこれだからイケメンは)
「ん?」
「何でもないですっ!!」
「じゃあ続けようか」
そう言うとラインはもう一杯ハーブティーを淹れてくれた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。その後、ザイル殿下が世継ぎというのは変わらなかったのだけど――」
成人の儀を終えてしばらくして、ザイル殿下は亡くなられてしまったのだ。
それまでとても健勝であられたから毒殺された、という噂も流れたけれど、真相は定かではない。
急遽、第二王子のハルト王子が世継ぎとなったが、その三か月後、トレニア国王ワンド陛下が崩御された。
「普通ならこのまま第二王子のハルト殿下が喪が明け次第、国王となるはずだったんだけどね」
(何だかやな予感)
そう思いながらあたしは何か引っかかるものを感じていた。
(あれ、何だろこの既視感)
「第三王子のカイン王子の後見人、ザクベルク公爵様がものいいをつけたんだ。第一王子が亡くなったのは第二王子の陰謀ではないか、と」
だけどその既視感を探る間もなく話が続いてしまった。
(うわ、メンドクサイ展開きたぁ)
「ここで貴族間の勢力を簡単に説明しておこうか。第一王子が亡くなるまでは第一王子派と第二王子派で拮抗していたんだ。その後、第一王子が亡くなられたことによって、行きどころをなくした第一王子派の貴族達はどうしたと思う?」
(えっとそうなると残るのは第三王子しかいないよね)
あたしがそう答えるとラインは頷いた。
「そうだね。第一王子派だったザクベルク公爵とか、べリンツ伯爵とか主だった貴族が第三王子派へ流れたんだ」
(あれ、ザクベルク公爵って……)
疑問が顔に出たのだろう。
「もともと第三王子派は少数派だったからね」
(貴族の世界って)
あたしがしょっぱい顔をしていると、
「悪いけれど、まだ続くんだ。第二王子はもちろん否定した。まあ誰でもそうするよね。そこを第三王子派が蒸し返す。この繰り返しの末に内戦が起きたんだ」
(ひぇ)
「内戦は半年ほど続いた。まあいろいろあったけれど結果としては第二王子派が勝利を収めた」
「まだあるのっ!?」
「残念ながらね。じゃないとレキシコン王が出てこないじゃないか」
(それはそうだけど)
何かこちらの住人って人の生死が軽すぎる気がする。
(内戦、って簡単にいうけどきっとたくさんの人が亡くなったんだろうなぁ)
「第二王子の戴冠式、神官長から王冠を受けたハルト王は立ち上がろうとした瞬間、頭から倒れ込み、そのまま崩御された」
「はあっ!?」
有り得ない展開に思わず変な声が出た。
「この件も王冠に毒が仕込まれていたのでは、とか言われているね。さて」
――これでトレニア国を継ぐ者は全ていなくなってしまった。
ラインの固い声が狭い室内に響いた。
(第三王子は内戦で行方不明だったっけ)
ラインの表情は何かを悼んでいるようにも見え、あたしが口を開きかけたとき、
「トレニア国民は皆そう思った。だけど違った。だけど違った。まだレキシコン王――その時は違ったけどね――がいらしたんだ」
ラインがそう続けてしまい、あたしは黙って話を聞くしかなくなってしまった。
第一王子のザイル殿下は秀才ではあったが、武芸はからきしで騎士達の人気は低く、替わりに第二王子のハルト様は活発な性質で、剣技は騎士団長と互角と言えるほどだったが、学は奮わず。
そして第三王子は――。
「読書家で学者達を唸らせるほどの資質を持っていたらしいけれど、体が丈夫ではなくてね。一年の半分は床の中さ」
(何か歴史ものでよく見るパターン)
「さて」
ラインが空になったカップをとん、と置いた。
「ここから先、長くなるけどいいのかい?」
今は夕食後。
いつもなら後片付けをして休んでいる。
こうして話を聞くのは、お茶が一杯終わるまで、という不文律ができていたけど、ここまできて続きは明日、というのも余計気にかかる。
「続きをお願いします」
「そう言うと思ったよ。でも明日も今日と同じように起こすよ」
(う、そういう意地の悪い笑みも決まってる、ってこれだからイケメンは)
「ん?」
「何でもないですっ!!」
「じゃあ続けようか」
そう言うとラインはもう一杯ハーブティーを淹れてくれた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。その後、ザイル殿下が世継ぎというのは変わらなかったのだけど――」
成人の儀を終えてしばらくして、ザイル殿下は亡くなられてしまったのだ。
それまでとても健勝であられたから毒殺された、という噂も流れたけれど、真相は定かではない。
急遽、第二王子のハルト王子が世継ぎとなったが、その三か月後、トレニア国王ワンド陛下が崩御された。
「普通ならこのまま第二王子のハルト殿下が喪が明け次第、国王となるはずだったんだけどね」
(何だかやな予感)
そう思いながらあたしは何か引っかかるものを感じていた。
(あれ、何だろこの既視感)
「第三王子のカイン王子の後見人、ザクベルク公爵様がものいいをつけたんだ。第一王子が亡くなったのは第二王子の陰謀ではないか、と」
だけどその既視感を探る間もなく話が続いてしまった。
(うわ、メンドクサイ展開きたぁ)
「ここで貴族間の勢力を簡単に説明しておこうか。第一王子が亡くなるまでは第一王子派と第二王子派で拮抗していたんだ。その後、第一王子が亡くなられたことによって、行きどころをなくした第一王子派の貴族達はどうしたと思う?」
(えっとそうなると残るのは第三王子しかいないよね)
あたしがそう答えるとラインは頷いた。
「そうだね。第一王子派だったザクベルク公爵とか、べリンツ伯爵とか主だった貴族が第三王子派へ流れたんだ」
(あれ、ザクベルク公爵って……)
疑問が顔に出たのだろう。
「もともと第三王子派は少数派だったからね」
(貴族の世界って)
あたしがしょっぱい顔をしていると、
「悪いけれど、まだ続くんだ。第二王子はもちろん否定した。まあ誰でもそうするよね。そこを第三王子派が蒸し返す。この繰り返しの末に内戦が起きたんだ」
(ひぇ)
「内戦は半年ほど続いた。まあいろいろあったけれど結果としては第二王子派が勝利を収めた」
「まだあるのっ!?」
「残念ながらね。じゃないとレキシコン王が出てこないじゃないか」
(それはそうだけど)
何かこちらの住人って人の生死が軽すぎる気がする。
(内戦、って簡単にいうけどきっとたくさんの人が亡くなったんだろうなぁ)
「第二王子の戴冠式、神官長から王冠を受けたハルト王は立ち上がろうとした瞬間、頭から倒れ込み、そのまま崩御された」
「はあっ!?」
有り得ない展開に思わず変な声が出た。
「この件も王冠に毒が仕込まれていたのでは、とか言われているね。さて」
――これでトレニア国を継ぐ者は全ていなくなってしまった。
ラインの固い声が狭い室内に響いた。
(第三王子は内戦で行方不明だったっけ)
ラインの表情は何かを悼んでいるようにも見え、あたしが口を開きかけたとき、
「トレニア国民は皆そう思った。だけど違った。だけど違った。まだレキシコン王――その時は違ったけどね――がいらしたんだ」
ラインがそう続けてしまい、あたしは黙って話を聞くしかなくなってしまった。
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