悪役令嬢の味方をしたら追放されました

神崎 ルナ

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27.どうやら事件のようです

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「そうか。わざわざあいつからの手紙をなぁ」

二階にある執務室の主は、明るい茶色の髪を短髪にした、ガタイのいいおじさんだった。


(うわあ。何か思い切り体育会系だあ……)


ほら、主人公がピンチになったとき。


『ここは任せろっ!!』

って啖呵切って先に行かせて……ってパターンの人。


(後ろに炎とか背負ってそう)

などと失礼なことを思い浮かべながら手紙を渡す。


「初めまして。リリアンヌと申します。こちらがライン――師匠から預かってきた手紙です」

あえて『師匠』と呼んでみた。

あたしがあの『リリアンヌ』だと分かったとしても、何かの牽制にはなるだろう、と思って。


「嬢ちゃん、その年であいつの弟子とはやるなあ」

(またですか)


「おい、オリジン。リリーは十六だ」


あたしが訂正するより先にレン(どうしてかいるんだけど)が口を開いた。


「そりゃ、悪かったな。あそこの人間は皆小さいからなあ」

「俺達がでかいだけじゃないのか」

「でかいのの筆頭が何言ってるんだ」



(えと、何このやりとり)


そもそもこのレンって人がどうしてここにいるんだろう。

そう思ったのが顔に出てしまったらしい。


「まだ説明してなかったな。このレンはな……そういやあいつは何も言ってなかったのか?」

「はい。特に何も」


オリジンさんはふむ、と顎を撫でてから、


「このレンは、まあ、ベテランの冒険者でな。ランクはSだ」

「それってかなり上のクラスじゃ……」


絶句したあたしの隣でレンが赤髪をかき上げた。

「そいつを言うなら、ラインだろ。あいつはSS級じゃないか」


(ええー、何それ、ってか、ラインのかばぁー(二回目)

まあ師匠とか言ってもあたしが習ったのは基本的なことばかりだし、と反芻していると、


「この手紙、何て書いてあるかは嬢……リリーは知っているのか?」


「いえ」

あたしが首を振るのを確認してから、オリジンさんは手紙の封を切った。


「どうだ?」


(って何であんたが聞くの?)

そんなあたしのエア突っ込みなど知らずにやり取りは続く。


「だめだな。断られた」

「くそっ」



「だから言ったろ。もう、あいつには金銀なんて何の価値もないんだよ」


肩を竦めてみせるオリジンさんに、

「その点に関しては俺も同感だ。そこには引っ掛からない、って言ったんだがなあ」


「仕方ない。この件は後日として……リリー」

「はい」

「ギルドカード、作りたいんだろう? この手紙にそれも書いてあった」

「あの、でも」


「心配しなくていい。あんたの『事情』も書いてあった」

どうやらラインが上手く書いてくれたらしい。


(よかった)


「何かあったのか?」


(しまったっ!! この男が居たんだったっ!!)

焦っているとオリジンさんが、


「お前さんには関係ないことだ」

「そうか」

(よかったあ)


さて、とオリジンさんが机上きじょうにあった呼び出しベルに手を伸ばしたとき、凄い勢いで扉が開いた。


「大変ですっ!!」

「ジェシカ、どうした? そんなに慌てて珍しい――」


オリジンさんの台詞を遮ってジェシカさんが声を荒げた。


「フローズン公爵家のご令嬢、カサンドラ様がダンジョンに出たきり戻らない、と門番から報告が来たんですっ!!」



「「なにっ!!」」



(いや、それ誰やねん)




乙女ゲーム『蒼穹に輝く君へ』に出てくる国はフリント王国のみで、ただその続編にリンツ皇子がいるサウス帝国があったと思う。



(うーん、あたしの記憶にはトレニア国に関するものってほとんどないのよねえ)


「あのお嬢さん、こんなときにダンジョンだなんて何考えてんだっ!!」

「Aランク、いやSランクパーティを呼び出せっ!!」


殺気立つ男性陣を前にあたしが取り残されていると、報告を終えたジェシカさんがこちらに来てくれた。


「ごめんなさいね。お邪魔しちゃって。私はジェシカよ。ここの職員なの」

「よろしくお願いします。あたしはリリアンヌです。できればリリーと呼んで下さい」


「よろしくね、リリー」

「はい、ジェシカさん」



「ジェシカ、でいいわよ」

「でも」


茶色の髪に水色の瞳のジェシカさんは落ち着いた印象を与えるけれど、なかなかに頑固だった。


数分後――。


「……よろしくお願いします。ジェシカ」


「はい、こちらこそ」


負けました。



何故かにこにこしながらジェシカさん(頭の中でなら、いいよね)が軽く説明してくれた。


「カサンドラ様は最近台頭してきたフローズン公爵家の次女でね。まだ公表はされてないのだけれど」


と耳打ちされて教えられた情報によると、レキシコン王の婚約者、とのことだった。



(え? でも何でそんなやんごとなき方がダンジョンに?)


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