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29.カサンドラ・フローズン公爵令嬢
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同じ世界でも、国によって差があるんだなあ、って向こうでもそんなものだったか、等と軽く現実逃避していると、オリジンさんが振り返った。
「よし、そろそろ下の層へ行くぞ。確か次の層には抜け道があるはずだ」
(今ここが六層目だから、次の七層目に抜け道があるってことだよね)
緊急連絡用の使い魔(※害のない魔物。ティム済みだけど、高価)からの報告によると、カサンドラ嬢は二十三層にいるらしい。
ちなみにこのダンジョンは五十六層が最下層らしい。
(半分ってことは結構強めの魔物がいる?)
そのカサンドラ嬢ってかなりの腕前なんだろうか。
そう思って聞くと、
「残念ながら違うな」
あまり有り難くない答えが返ってきた。
あたしは七層目への階段を降りながら、
「え、じゃあどうしてこんなところに?」
(護衛たくさんつけて、レベルアップでもしに来たのかな?)
レベルが高い方がハクがつく。
そういうことをする貴族がいる、という話は聞いていた。
だから、そう聞いたんだけど、
「いんや。困ったことにカサンドラ嬢は今おひとりらしい」
「はぁっ!?」
「おいおい。こりゃあ」
七層目にあるという抜け道へ続く扉は、原型が残らないくらい見事に壊されていた。
「魔導具でも使われたんでしょうか? リリー殿は何か感じますか?」
「いえ、特には」
そう答えかけた時、鼻腔を何かの匂いが掠めた。
(これってまさか香水?)
こちらの世界では入浴する機会は少ない。
水が貴重ということもあるけど、入浴は病人がするもの、という意識が強い、って一体どうなってるの!?
そのせいか、ある程度お金に余裕のある層になると、香水を頻繁に使用する。
ちなみにあたしは香水は使っていない。
生活魔法の一つ、『クリーン』で毎日きれいにしてます。
(皆、もう少しお風呂入ろうよ……)
フリント王国にいた頃、この娘、アルフォート殿下に王宮のお風呂に入りたい、って言って、体の具合でも悪いのか、って心配されてたよね。
(……ん?)
何やらおかしな矛盾を感じて頭の中で首を捻っていると、
「リリー殿?」
「あのですね。気のせいかもしれませんが」
香水のような匂いがした、と報告すると、
「それはどんな香りでしたか?」
「花のような――」
あたし達の会話を聞いていたオリジンさんが頷いた。
「決まりだな。ダンジョンにそんな香水つけてくる物好きなんて、そうそういないぜ」
ダンジョンは魔物の巣窟。
特に魔物は匂いに敏感なので、冒険者は気を使っている。
わざと服を汚したり、匂い消しの薬草を用意したり、人によって様々みたいだけど。
「ダンジョンにこんな香水なんぞつけて来た日にゃ、狙って下さいと言ってるようなもんだが。あのお嬢さんには自殺願望でもあるのかね?」
(オリジンさん、直球)
ひやひやしながら見ていると、
「うちのお嬢様が誠に申し訳ありません。しかしながらお嬢様の名誉のために申し上げますが、お嬢様はそこまで無謀ではないかと」
するとそれまで黙っていたレンが口を開いた。
「根拠は?」
緑の瞳が鋭く痩身の弓使いを睨め付けた。
「家人に黙って家を出て、供もなしでこんなところまで来てるんだ。それでもあんたはまだお嬢様の無事を信じているようだが、何故だ?」
レンがそう言うとオリジンさんも同意するように頷いた。
「確かに。ただの素人がたった一人で二十三層、って普通は詰んでるよな」
セクトルさんは少しの間、迷っているようだった。
「……できればこのことは口外無用でお願いします」
あたし達が頷くのを待って、
「お嬢様には、少しばかり変わったスキルがありまして」
「そんなの、聞いてないぞ」
「ダンジョンで役に立つスキルなら、自慢するんじゃないのか?」
(スキル持ちって優遇される、って聞くものね)
あたしのは要らなかったけどなぁ。
と、遠い目になっていると、
「お嬢様のスキルは……『石ころ』です」
(……は?)
「よし、そろそろ下の層へ行くぞ。確か次の層には抜け道があるはずだ」
(今ここが六層目だから、次の七層目に抜け道があるってことだよね)
緊急連絡用の使い魔(※害のない魔物。ティム済みだけど、高価)からの報告によると、カサンドラ嬢は二十三層にいるらしい。
ちなみにこのダンジョンは五十六層が最下層らしい。
(半分ってことは結構強めの魔物がいる?)
そのカサンドラ嬢ってかなりの腕前なんだろうか。
そう思って聞くと、
「残念ながら違うな」
あまり有り難くない答えが返ってきた。
あたしは七層目への階段を降りながら、
「え、じゃあどうしてこんなところに?」
(護衛たくさんつけて、レベルアップでもしに来たのかな?)
レベルが高い方がハクがつく。
そういうことをする貴族がいる、という話は聞いていた。
だから、そう聞いたんだけど、
「いんや。困ったことにカサンドラ嬢は今おひとりらしい」
「はぁっ!?」
「おいおい。こりゃあ」
七層目にあるという抜け道へ続く扉は、原型が残らないくらい見事に壊されていた。
「魔導具でも使われたんでしょうか? リリー殿は何か感じますか?」
「いえ、特には」
そう答えかけた時、鼻腔を何かの匂いが掠めた。
(これってまさか香水?)
こちらの世界では入浴する機会は少ない。
水が貴重ということもあるけど、入浴は病人がするもの、という意識が強い、って一体どうなってるの!?
そのせいか、ある程度お金に余裕のある層になると、香水を頻繁に使用する。
ちなみにあたしは香水は使っていない。
生活魔法の一つ、『クリーン』で毎日きれいにしてます。
(皆、もう少しお風呂入ろうよ……)
フリント王国にいた頃、この娘、アルフォート殿下に王宮のお風呂に入りたい、って言って、体の具合でも悪いのか、って心配されてたよね。
(……ん?)
何やらおかしな矛盾を感じて頭の中で首を捻っていると、
「リリー殿?」
「あのですね。気のせいかもしれませんが」
香水のような匂いがした、と報告すると、
「それはどんな香りでしたか?」
「花のような――」
あたし達の会話を聞いていたオリジンさんが頷いた。
「決まりだな。ダンジョンにそんな香水つけてくる物好きなんて、そうそういないぜ」
ダンジョンは魔物の巣窟。
特に魔物は匂いに敏感なので、冒険者は気を使っている。
わざと服を汚したり、匂い消しの薬草を用意したり、人によって様々みたいだけど。
「ダンジョンにこんな香水なんぞつけて来た日にゃ、狙って下さいと言ってるようなもんだが。あのお嬢さんには自殺願望でもあるのかね?」
(オリジンさん、直球)
ひやひやしながら見ていると、
「うちのお嬢様が誠に申し訳ありません。しかしながらお嬢様の名誉のために申し上げますが、お嬢様はそこまで無謀ではないかと」
するとそれまで黙っていたレンが口を開いた。
「根拠は?」
緑の瞳が鋭く痩身の弓使いを睨め付けた。
「家人に黙って家を出て、供もなしでこんなところまで来てるんだ。それでもあんたはまだお嬢様の無事を信じているようだが、何故だ?」
レンがそう言うとオリジンさんも同意するように頷いた。
「確かに。ただの素人がたった一人で二十三層、って普通は詰んでるよな」
セクトルさんは少しの間、迷っているようだった。
「……できればこのことは口外無用でお願いします」
あたし達が頷くのを待って、
「お嬢様には、少しばかり変わったスキルがありまして」
「そんなの、聞いてないぞ」
「ダンジョンで役に立つスキルなら、自慢するんじゃないのか?」
(スキル持ちって優遇される、って聞くものね)
あたしのは要らなかったけどなぁ。
と、遠い目になっていると、
「お嬢様のスキルは……『石ころ』です」
(……は?)
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