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33.会議を始めます
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ダァンッ、と壁がいい音を立てた。
「これが少しばかりのことですか?」
場所は変わってラインの家の応接間。
と言えば聞こえはいいけれど、テーブルと椅子を四脚も入れれば後は立っているのがやっとというところに六人もいるのだ。
(はっきり言って、手狭)
ゴルゴンを入れた檻を魔導具(もちろんあたしが貰ったのとは違うもの)にサクッ、と収納してから、オリジンさんに手を貸して、ひとまずこの応接間へ落ち着いたのだけど、ここへ来るまでが大変だった。
オリジンさんの石化は、ラインが持っている薬草で何とかなる、とのことでラインがそれを取りに行っている間も、
「こ、国王陛下っ!! すみません、すみませんっ!! 斬首だけは勘弁して下さいっ!!」
とあたしが叫んだのを皮切りに、
「……この赤毛の男が国王陛下っ!? 申し訳ありませんっ!! 先ほどの発言は私の戯れ言ですわっ!! ですから、我がフローズン公爵家はどうかお見逃しを!!」
カサンドラ嬢が最上級の礼を取りながら後ずさる、という器用なことをしてくれた。
すると今度はセクトルさんが、
「お嬢様、それを言うなら私です。……申し訳ありません。まさかこのようなところに、国王陛下がいらっしゃるとは。てっきり然るべきところで政務に励んでおられるものとばかり。いえ、これはただの平民の独り言にございます」
謝ってるんだか、皮肉なのか分からない発言をした。
(どうしよ。せっかく追放だけで済んだのに、ここで不敬罪で命落とすなんて)
そんなあたし達に渦中の陛下は、
「あー、そのなんだ。俺は庶子だからな。そんな陰口は慣れてるしな。気にしないから」
蹴られたのは久々だったけどな。
と付け加えられ、あたしが竦みあがっていると、
「君ねぇ」
薬草を取りに行っていたラインが戻って来て呆れたようにあたしを見た。
「まあまあ、供も連れず、先触れも寄越さずにこんなとこまで来るこいつも悪いんだから、お互い様ってことで勘弁してやってくれないか?」
(うう、オリジンさん、自分も大変なのにいい人だ)
ラインが薬草の入った壺の口を開け、石と化した箇所に擦り込んでいく。
「全く。一国の王を蹴るだなんて」
「誠に申し訳ありません」
「まあまあ」
(ん? オリジンさん、って最初から知ってたっぽくない?)
あの気安さはそうそう出せるものではない。
そう思って聞くと、
「おお、こいつとはこいつがこんなのになる前からの付き合いだからな。どうしてもこんな感じになっちまう」
本当は俺も直した方がいいとは思うんだけどな。
そう続けたオリジンさんに間髪入れず、
「あんたはそのままでいいんだよ。あんたがおれに敬語だなんて虫唾が走る」
(仲いいんだ)
どうやら不敬罪うんぬん、というのは無しになりそうなので、ほっとしていると今度はラインが、
「そろそろ座って落ち着いたらどうかな?」
と皆に椅子を勧めてくれた。
そこまでは良かったのだけど、
まずはレキシコン王が着席(そこは全員一致だった。当人はかなり不満げな顔だったけど)。
(次はカサンドラ嬢かな。何ていっても公爵令嬢だし)
そこまで思ってあたしは疑問を感じた。
(あれ? 公爵令嬢なのに王様の顔知らなかったって?)
しかし、と思い直す。
(庶子ってことはお披露目したのは最近だし、ああいう式典とかって人が一杯だから貴族でも余程近くにいる人じゃないと顔も知らない、って昔何かの本で読んだような……後でセクトルさんに聞いてみようかな)
と見ていると、ラインに椅子を勧められたカサンドラ嬢が文字通り飛び上がった。
「ご冗談をっ!! かの賢者ラインハルト様より先に座るなど、フローズン公爵家の恥さらしですわっ!! ラインハルト様がご着席下さいませっ!!」
(ありゃー)
言われたラインが遠い目をしているように見えるのは、気のせいじゃないと思う。
その後、『リリー、お前女の子なんだから座っておけ』とオリジンさんに言われ、『オリジンさんこそ、その体……』『俺はいいんだよ、この体だと床のほうが楽だ』等の譲り合いの挙げ句、最後の席はあたしがゲットしました。
一連の流れを見ていたラインが、はあ、とため息をついた。
「次があったら、くじ引きでもしようか」
そしてようやく各人の状況説明となったのだけど、レキシコン王がどうしてたった一人でここまで来たのかを説明したところで、ラインがレキシコン王の後ろの壁を、ダァンッ、と叩いたのだった。
「これが少しばかりのことですか?」
「これが少しばかりのことですか?」
場所は変わってラインの家の応接間。
と言えば聞こえはいいけれど、テーブルと椅子を四脚も入れれば後は立っているのがやっとというところに六人もいるのだ。
(はっきり言って、手狭)
ゴルゴンを入れた檻を魔導具(もちろんあたしが貰ったのとは違うもの)にサクッ、と収納してから、オリジンさんに手を貸して、ひとまずこの応接間へ落ち着いたのだけど、ここへ来るまでが大変だった。
オリジンさんの石化は、ラインが持っている薬草で何とかなる、とのことでラインがそれを取りに行っている間も、
「こ、国王陛下っ!! すみません、すみませんっ!! 斬首だけは勘弁して下さいっ!!」
とあたしが叫んだのを皮切りに、
「……この赤毛の男が国王陛下っ!? 申し訳ありませんっ!! 先ほどの発言は私の戯れ言ですわっ!! ですから、我がフローズン公爵家はどうかお見逃しを!!」
カサンドラ嬢が最上級の礼を取りながら後ずさる、という器用なことをしてくれた。
すると今度はセクトルさんが、
「お嬢様、それを言うなら私です。……申し訳ありません。まさかこのようなところに、国王陛下がいらっしゃるとは。てっきり然るべきところで政務に励んでおられるものとばかり。いえ、これはただの平民の独り言にございます」
謝ってるんだか、皮肉なのか分からない発言をした。
(どうしよ。せっかく追放だけで済んだのに、ここで不敬罪で命落とすなんて)
そんなあたし達に渦中の陛下は、
「あー、そのなんだ。俺は庶子だからな。そんな陰口は慣れてるしな。気にしないから」
蹴られたのは久々だったけどな。
と付け加えられ、あたしが竦みあがっていると、
「君ねぇ」
薬草を取りに行っていたラインが戻って来て呆れたようにあたしを見た。
「まあまあ、供も連れず、先触れも寄越さずにこんなとこまで来るこいつも悪いんだから、お互い様ってことで勘弁してやってくれないか?」
(うう、オリジンさん、自分も大変なのにいい人だ)
ラインが薬草の入った壺の口を開け、石と化した箇所に擦り込んでいく。
「全く。一国の王を蹴るだなんて」
「誠に申し訳ありません」
「まあまあ」
(ん? オリジンさん、って最初から知ってたっぽくない?)
あの気安さはそうそう出せるものではない。
そう思って聞くと、
「おお、こいつとはこいつがこんなのになる前からの付き合いだからな。どうしてもこんな感じになっちまう」
本当は俺も直した方がいいとは思うんだけどな。
そう続けたオリジンさんに間髪入れず、
「あんたはそのままでいいんだよ。あんたがおれに敬語だなんて虫唾が走る」
(仲いいんだ)
どうやら不敬罪うんぬん、というのは無しになりそうなので、ほっとしていると今度はラインが、
「そろそろ座って落ち着いたらどうかな?」
と皆に椅子を勧めてくれた。
そこまでは良かったのだけど、
まずはレキシコン王が着席(そこは全員一致だった。当人はかなり不満げな顔だったけど)。
(次はカサンドラ嬢かな。何ていっても公爵令嬢だし)
そこまで思ってあたしは疑問を感じた。
(あれ? 公爵令嬢なのに王様の顔知らなかったって?)
しかし、と思い直す。
(庶子ってことはお披露目したのは最近だし、ああいう式典とかって人が一杯だから貴族でも余程近くにいる人じゃないと顔も知らない、って昔何かの本で読んだような……後でセクトルさんに聞いてみようかな)
と見ていると、ラインに椅子を勧められたカサンドラ嬢が文字通り飛び上がった。
「ご冗談をっ!! かの賢者ラインハルト様より先に座るなど、フローズン公爵家の恥さらしですわっ!! ラインハルト様がご着席下さいませっ!!」
(ありゃー)
言われたラインが遠い目をしているように見えるのは、気のせいじゃないと思う。
その後、『リリー、お前女の子なんだから座っておけ』とオリジンさんに言われ、『オリジンさんこそ、その体……』『俺はいいんだよ、この体だと床のほうが楽だ』等の譲り合いの挙げ句、最後の席はあたしがゲットしました。
一連の流れを見ていたラインが、はあ、とため息をついた。
「次があったら、くじ引きでもしようか」
そしてようやく各人の状況説明となったのだけど、レキシコン王がどうしてたった一人でここまで来たのかを説明したところで、ラインがレキシコン王の後ろの壁を、ダァンッ、と叩いたのだった。
「これが少しばかりのことですか?」
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