悪役令嬢の味方をしたら追放されました

神崎 ルナ

文字の大きさ
54 / 73

54.幕間――サウス帝国第二皇子 ⑤

しおりを挟む
前述したとおり、半端な知識でも欲しがる輩は多い。


またそういった連中は手段を選ばない。


加えて――。


「……あの娘、魅了のスキルを持っていたな」


「どうやらそのようにございます」


『魅了』持ちは滅多に現れないこともあり、扱いを誤ると非常に面倒なスキルだった。


「二百年ほど前だったか。魅了持ちが各国の王族を魅了して、大戦が起きたとか」


「よくご存じですね。その辺りは極秘資料に分類されているはずですが」



「一応、皇族だからな」


帝国の皇族ともなれば入れない場所などないに等しい。

(替わりに責任もあるが)


「なあ、バル」

「何でございましょう」


「この件、フリント王国はどこまで把握していると思う?」


サウス帝国では、魅了スキル持ちは見つけ次第、隔離されることになっている。


「ただちに国王との謁見を申し出ましょう」


「今は留学中の身だ。穏便にな」


「畏まりまして」



(さて、何が出るやら)




次に俺が注目したのは、悪役令嬢こと、カタリナ・ブランシュ公爵令嬢だった。


(どちらかというとこちらが本命かな)


貴族としての教養はもちろん、礼儀作法も完璧で自分の意思を臆することなく言える令嬢。


(なかなかいい逸材じゃないか)

時おり、厳しいことを言うので取っ付きにくいと評されているようだが、それ位なら許容範囲だ。





「まあ、あの『カイザルの晩餐』をご覧になったのですか?」


たまたま入った談話室には、付き添い(もちろん女性だ)を連れたブランシュ公爵令嬢がいたので、少し言葉を交わしてみることにした。


「ウチの回廊に飾ってありますよ。あの作品は人物の描き分けが評価されていますが、俺としてはその色彩の妙が素晴らしいと思いますよ」


「本当ですの?」


話してみて驚いたが、ブランシュ公爵令嬢は俺と感性が似通っているらしい。


この現代、絵画は貴族間の娯楽の一つだったが、当然本物は俺のような皇族や、上流貴族が保有することがほとんどだ。


著名な画家の作品が見たければ、そこへ赴くか、それよりも一段二段も落ちる模写を手に入れるしかないのだ。


ブランシュ公爵令嬢はこの画家がお気に入りのようだったが、ウチの方が早かったらしい。



「では今度――」


「リンツ様」


バルにしては珍しく緊迫感を含んだ声だった。


「いや、済まないね。では俺はこれで失礼させてもらうよ」


「はい、リンツ皇子」


完璧な跪礼カーテシーで見送ってくれたブランシュ公爵令嬢と、つい某『ヒロイン』の姿を重ねてしまう。


談話室を出るとバルが、


「リンツ様」

「分かっている」


幾ら逸材と言えど、こちらはつい先日婚約を解消したばかりだ。



この時期に他の令嬢と親密になるつもりなどなかった。




なかったのだが――。



『この度は大変申し訳ありませんでしたっ!!』


たまたま息抜きのために忍び込んだ空き教室。


まさかそこでこんな興味深いものが見られようとは。


ユーリの報告によると、ここ最近『ヒロイン』の様子がおかしいという。


『何ていうかその、人格変わったんじゃないかってくらい、変わってて』


それは俺も感じていた。


上位の貴族に対する態度も、身分をわきまえたものに変容しており、常ならば喜ばしいことなのだが。


(今度は一体何の策だ)


これまで培ってきた経験が素直にそれを受け入れてくれなかった。


更に気配を殺して聞いていると、真摯に謝罪しているようにも思える。


(今更になって自身の不利に気付いたか)


幾ら第一王子が熱望しているとはいえ、所詮男爵令嬢。


何の後ろ盾もない娘がゆくゆくは王妃など、到底できるものではない。


(それにしても)


遣われている敬語が的確なのだが。


まるで『人格が変わったように』。



(……ふむ)


少し、様子を見させてもらうか。


まずは彼女達がこのフリント王国王妃に話を持ち込むのを止めさせなければ。



『それは待って貰えないかな?』


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

処理中です...