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第9話
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巨大な隕石が街の上空に浮遊している様子は誰もが見て取れることだった。
「おい、何だよあれっ!!」
「んなことより逃げろっ!!」
「ああ、命あっての物種だっ!!」
街の門は逃げ惑う人々で溢れ返ろうとしていた。
「待て、落ち着けっ!! 今騎士団が来てくれるっ!!」
「はあっ!? 騎士団が来てもアレをどうするってんだよっ!!」
激高した群衆に門番は思わず答えに詰まった。
相手は空である。
いかに勇猛果敢な騎士団と言えど空を飛べるはずがなかった。
「ほら見ろっ!! さっさとそこを通せよっ!!」
わらわらと群衆が街の門を抜けて街道へ散って行く。
門番も詰め所にいた兵士達も止めることはできなかった。
そして――。
人気のなくなった貴族街の一角。
かつては立派な邸が建っていたであろうそこは巨大な隕石の目的地らしい。その半壊状態の邸にはごく一部を除いて動く者はいなかった。
「……これで」
イーサンが感慨深げに呟いた時だった。
「おいふざけるなよ」
突如として現れた男がイーサンの頭をしばいた。
「痛ってぇ」
イーサンがその痛みに呻いている隙に男が詠唱する。
「ホーリーアースッ!!」
隕石の表面に罅が入り、砕け散る。
機を逃さず再び詠唱が入る。
「アキュミュレイション――アブソーブッ!!」
一度細かく分解された隕石は小石ほどの大きさになる。
無数の小石がどこかに吸収されたように消えて行く。
最後の小石が亜空間に消えるのを見て男がほっと息をついた。
「……危なかった」
「邪魔するな、ネイビル」
杖で叩かれた頭を押さえながらイーサンが抗議すると、ネイビルと呼ばれた男は手にした杖を振りかざしながら、
「あ? 街どころか国まで消滅させる気なのか? お前がそこまで馬鹿だとは思わなかった」
「止めろっ!! それ、杖じゃなくて槍じゃないのかってくらい痛かったんだがっ!?」
「うるさい、黙れ」
ぎゃあぎゃあと喚く二人の視界の隅でローズが詠唱を始めた。
「――ダークスターッ!!」
それは創作魔法の一種。
先ほどのメテオ程の大きさはないが、闇属性のそれは禍々しい瘴気を放っていた。
「――ホーリーシールド、――アブソーブ」
だが、ネイビルが冷静に放った盾で防がれ、更には分解までする必要はないとばかりにさっさと亜空間に収納されてしまう。
「……な、」
唖然とした様子のローズに、
「お前の時代は終わったんだよ。さて」
仕切り直しといこうか。
ネイビルが殺気をローズへ向けた。
「お前だって殺る気じゃないか」
「手加減はするからどいていてくれ」
イーサンより前へ出たネイビルが再び詠唱を始めた。
「――グローアップアイビー」
たちまちのうちに伸びた蔦がローズの体を絡め取る。
「く、――ファイアウォー……」
猿ぐつわのように蔦がローズの口を塞いだ。
「何かここだけ見るとまあアレな光景なんだが」
「百歳のお婆さん相手には流石に萎えるだろう」
その台詞にもがもがと口元を動かすローズだったが、蔦がしっかりと塞いでいるので言葉にならなかった。
「おい、何か言いたそうだぞ」
そう言ってイーサンが近寄ろうとしたが、
「待て。行くならその柄に掛けた手を下ろして、その剣も置いていけ」
「……信用ないな」
「なら、今の間は何だ?」
しばしの睨み合いの後、ネイビルが詠唱しないよう忠告し、ローズの口を塞いでいた蔦が外される。
「私は九十歳よ」
「「……」」
ローズの言に微妙な沈黙が流れた。
「誤差の範囲だな」
「やっぱり燃やすか」
「よせっ、一応生かして連れて行くよう言われるだろうが。って、舌打ちはやめろ」
非常に残念そうにイーサンが手を下ろした時だった。
「やっぱり、ネイビルに行って貰って正解だったわ」
総髪をした冒険者、サンドラがフランを連れてそこに現れた。
「おい、何だよあれっ!!」
「んなことより逃げろっ!!」
「ああ、命あっての物種だっ!!」
街の門は逃げ惑う人々で溢れ返ろうとしていた。
「待て、落ち着けっ!! 今騎士団が来てくれるっ!!」
「はあっ!? 騎士団が来てもアレをどうするってんだよっ!!」
激高した群衆に門番は思わず答えに詰まった。
相手は空である。
いかに勇猛果敢な騎士団と言えど空を飛べるはずがなかった。
「ほら見ろっ!! さっさとそこを通せよっ!!」
わらわらと群衆が街の門を抜けて街道へ散って行く。
門番も詰め所にいた兵士達も止めることはできなかった。
そして――。
人気のなくなった貴族街の一角。
かつては立派な邸が建っていたであろうそこは巨大な隕石の目的地らしい。その半壊状態の邸にはごく一部を除いて動く者はいなかった。
「……これで」
イーサンが感慨深げに呟いた時だった。
「おいふざけるなよ」
突如として現れた男がイーサンの頭をしばいた。
「痛ってぇ」
イーサンがその痛みに呻いている隙に男が詠唱する。
「ホーリーアースッ!!」
隕石の表面に罅が入り、砕け散る。
機を逃さず再び詠唱が入る。
「アキュミュレイション――アブソーブッ!!」
一度細かく分解された隕石は小石ほどの大きさになる。
無数の小石がどこかに吸収されたように消えて行く。
最後の小石が亜空間に消えるのを見て男がほっと息をついた。
「……危なかった」
「邪魔するな、ネイビル」
杖で叩かれた頭を押さえながらイーサンが抗議すると、ネイビルと呼ばれた男は手にした杖を振りかざしながら、
「あ? 街どころか国まで消滅させる気なのか? お前がそこまで馬鹿だとは思わなかった」
「止めろっ!! それ、杖じゃなくて槍じゃないのかってくらい痛かったんだがっ!?」
「うるさい、黙れ」
ぎゃあぎゃあと喚く二人の視界の隅でローズが詠唱を始めた。
「――ダークスターッ!!」
それは創作魔法の一種。
先ほどのメテオ程の大きさはないが、闇属性のそれは禍々しい瘴気を放っていた。
「――ホーリーシールド、――アブソーブ」
だが、ネイビルが冷静に放った盾で防がれ、更には分解までする必要はないとばかりにさっさと亜空間に収納されてしまう。
「……な、」
唖然とした様子のローズに、
「お前の時代は終わったんだよ。さて」
仕切り直しといこうか。
ネイビルが殺気をローズへ向けた。
「お前だって殺る気じゃないか」
「手加減はするからどいていてくれ」
イーサンより前へ出たネイビルが再び詠唱を始めた。
「――グローアップアイビー」
たちまちのうちに伸びた蔦がローズの体を絡め取る。
「く、――ファイアウォー……」
猿ぐつわのように蔦がローズの口を塞いだ。
「何かここだけ見るとまあアレな光景なんだが」
「百歳のお婆さん相手には流石に萎えるだろう」
その台詞にもがもがと口元を動かすローズだったが、蔦がしっかりと塞いでいるので言葉にならなかった。
「おい、何か言いたそうだぞ」
そう言ってイーサンが近寄ろうとしたが、
「待て。行くならその柄に掛けた手を下ろして、その剣も置いていけ」
「……信用ないな」
「なら、今の間は何だ?」
しばしの睨み合いの後、ネイビルが詠唱しないよう忠告し、ローズの口を塞いでいた蔦が外される。
「私は九十歳よ」
「「……」」
ローズの言に微妙な沈黙が流れた。
「誤差の範囲だな」
「やっぱり燃やすか」
「よせっ、一応生かして連れて行くよう言われるだろうが。って、舌打ちはやめろ」
非常に残念そうにイーサンが手を下ろした時だった。
「やっぱり、ネイビルに行って貰って正解だったわ」
総髪をした冒険者、サンドラがフランを連れてそこに現れた。
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