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第13話 オリビア・ランドール男爵令嬢 (一度目)
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すべて順調なはずだった。
『何もしない王妃を片付けたら、次は側妃だ!!』
『側妃様はまだいいんじゃないか? この国に貢献されてきた方だし、なにより聖女様の血筋かもしれないんだぞ』
『いや。側妃も例外ではない。だが聖女の血筋というのは見逃せないな。牢に入れるが少し様子を見るか』
目の前で繰り広げられる会話に気が遠くなりそうになる。
すでに王宮は落ち、国王であるユクトルや先の王妃様まで捕らえられたという。
待って、どうして私もそこに入るのよ!?
あの『何もしない王妃』の功績はすべて私のものにしてあるのに!!
私は牢に入れられ、先にあの女が処刑された。
だけど――
『なんだこれは!?』
『どういうことだ!?』
『おい、こっちも見て見ろ!!』
あの女を処刑しに行っていた男達が戻って来たとたん、騒ぎ出した。
『こりゃあ……』
ちょっとどうしたっていうのよ!?
イラっとしたとき、胸元から乾いた音がした。
手を当てると幼い頃から絶対に離すな、と誓約まで掛けられたペンダントの石が砕けているのが分かった。
は? 何これ?
私が男爵家の養女だということは知っている。それを聞かされた時には本当の親はきっともっと高貴な存在なのだと思った。
だって、そうでなければこんな高価そうなペンダントなど与えないでしょう?
だから私には王であるユクトルがふさわしいのよ。
そう思っていたのに。
混乱する場のなか、手渡された鏡を覗くとそこには地味な茶色の髪とありふれた色合いの青い瞳をした私がいた。
はあああ!? 何よこれ!? こんなの私じゃないわ!!
その後分かったのはこのペンダントがあの忌々しい女の物と対になっていたこと。
私があの女のような色彩に変わったということは、あの女の髪と瞳が私と同じになったということで。
『あの何もしない王妃を処刑したら髪の色が変わったぞ!!』
『おい、こっちの側妃もだ!!』
『なんだこりゃ!? まるで互いの色を取り替えたみたいだぞ!!』
――は?
状況についていけない私の前に宰相だった人物が来た。
『……遅かったか』
『どういうことですか!? 我々は辺境伯とあなたの主導でことを起こしたのですぞ!!』
貴族階級のおっさんが怒鳴っているけど、それはこっちが言いたいわよ。
『王族に連なる者は私が来るまで処罰はしないよう、通達をしていたはずですが』
冷たい視線におっさんが黙り込んだ。
ちょっともう少しくらい粘りなさいよ!!
『その、あの王妃は仕事もしないで遊び惚けているというではありませんか。でしたらいつ処刑となっても支障はないと思ったのと、興奮した皆を止めるのが難しく……』
『言い訳はいいです』
ぴしゃり、とクラスター公爵が話を遮った。
うわ、怖っ。
『困りましたね。彼女こそが王家の血を引く最後の一人だったというのに』
はあああ!?
この男――クラスター公爵が言うにはあの女、アレクシアは先王が聖女と浮気して出来た子だという。
だが先王は王妃と『真実の愛』で結ばれた、と周知されているため、ここで異母の『王女』が出て来るのは非常に都合が悪い。
そこで身元を隠すことにしたのだが、普通に隠してはその髪色からすぐにバレてしまう。
その当時ユクトルを産んだばかりの王妃の体調面のこともあり、その存在をすぐに露にする訳にはいかなかった。
ちょうど帝国で開発された魔道具が王宮の宝物庫に保管されているのを思い出したクラスター公爵は折よく子を身籠っている貴族女性を見付け、その子供と髪と瞳の色を交換し、王女をその貴族の令嬢、アレクシア・フォンデル公爵令嬢として養育することを考える。
なぜ貴族令嬢なのかというと、そこで教養を積ませておけば、万が一ユクトルが王太子として不適切だった場合、女王にできる、と踏んだからである。
嘘でしょう。
とここまで話を聞いて私はあれ、と思った。
いや待って。あの女が本当に先王の娘ならユクトルとは兄弟になるんじゃないの?
この国では兄弟婚は認められてないよね?
なのにユクトルとあの女が婚約してたのはどういうこと!?
今の自分の危うい立場も忘れすっかり聞き入っていると、クラスター公爵がこちらを見た。
『そういう訳でオリビア・ランドール男爵令嬢。いや、フォンデル公爵令嬢。あなたにはこの国のために贄となってもらう』
――は?
淀んだ目のクラスター公爵がこちらを見た。
『もうこうなれば仕方がない。側妃としてのあなたは素質はどうあれ、人気はある。あなたには王弟の息子を産んでもらう。なに、本当は王ではなく先の王弟の方を愛していたが王に気付かれ、仕方なく愛するふりをしていた、と強引だが理屈は付けられる』
とんでもない内容に私の口から反論が出る。
『何を言ってるのか分かりません。だいたい先の王弟がいらっしゃるなら、その方が王になればいいだけではないですか』
『ことはそんなに簡単ではない』
冷たい表情のクラスター公爵が語ったその内容に私はまた驚かされることになる。
なによ、それ。
そして娶せられた王弟サンダルフォン様は美形だったけれど、いくら顔がよくても子供を産む道具にさせられるなんて冗談じゃないわよ!!
そして、五人もの子を産まされた私は風邪をこじらせてあっけなくこの世を去った。
こんな人生まっぴらだわ。次は絶対に最後の最後まで悠々自適な生活を送るんだから!!
『何もしない王妃を片付けたら、次は側妃だ!!』
『側妃様はまだいいんじゃないか? この国に貢献されてきた方だし、なにより聖女様の血筋かもしれないんだぞ』
『いや。側妃も例外ではない。だが聖女の血筋というのは見逃せないな。牢に入れるが少し様子を見るか』
目の前で繰り広げられる会話に気が遠くなりそうになる。
すでに王宮は落ち、国王であるユクトルや先の王妃様まで捕らえられたという。
待って、どうして私もそこに入るのよ!?
あの『何もしない王妃』の功績はすべて私のものにしてあるのに!!
私は牢に入れられ、先にあの女が処刑された。
だけど――
『なんだこれは!?』
『どういうことだ!?』
『おい、こっちも見て見ろ!!』
あの女を処刑しに行っていた男達が戻って来たとたん、騒ぎ出した。
『こりゃあ……』
ちょっとどうしたっていうのよ!?
イラっとしたとき、胸元から乾いた音がした。
手を当てると幼い頃から絶対に離すな、と誓約まで掛けられたペンダントの石が砕けているのが分かった。
は? 何これ?
私が男爵家の養女だということは知っている。それを聞かされた時には本当の親はきっともっと高貴な存在なのだと思った。
だって、そうでなければこんな高価そうなペンダントなど与えないでしょう?
だから私には王であるユクトルがふさわしいのよ。
そう思っていたのに。
混乱する場のなか、手渡された鏡を覗くとそこには地味な茶色の髪とありふれた色合いの青い瞳をした私がいた。
はあああ!? 何よこれ!? こんなの私じゃないわ!!
その後分かったのはこのペンダントがあの忌々しい女の物と対になっていたこと。
私があの女のような色彩に変わったということは、あの女の髪と瞳が私と同じになったということで。
『あの何もしない王妃を処刑したら髪の色が変わったぞ!!』
『おい、こっちの側妃もだ!!』
『なんだこりゃ!? まるで互いの色を取り替えたみたいだぞ!!』
――は?
状況についていけない私の前に宰相だった人物が来た。
『……遅かったか』
『どういうことですか!? 我々は辺境伯とあなたの主導でことを起こしたのですぞ!!』
貴族階級のおっさんが怒鳴っているけど、それはこっちが言いたいわよ。
『王族に連なる者は私が来るまで処罰はしないよう、通達をしていたはずですが』
冷たい視線におっさんが黙り込んだ。
ちょっともう少しくらい粘りなさいよ!!
『その、あの王妃は仕事もしないで遊び惚けているというではありませんか。でしたらいつ処刑となっても支障はないと思ったのと、興奮した皆を止めるのが難しく……』
『言い訳はいいです』
ぴしゃり、とクラスター公爵が話を遮った。
うわ、怖っ。
『困りましたね。彼女こそが王家の血を引く最後の一人だったというのに』
はあああ!?
この男――クラスター公爵が言うにはあの女、アレクシアは先王が聖女と浮気して出来た子だという。
だが先王は王妃と『真実の愛』で結ばれた、と周知されているため、ここで異母の『王女』が出て来るのは非常に都合が悪い。
そこで身元を隠すことにしたのだが、普通に隠してはその髪色からすぐにバレてしまう。
その当時ユクトルを産んだばかりの王妃の体調面のこともあり、その存在をすぐに露にする訳にはいかなかった。
ちょうど帝国で開発された魔道具が王宮の宝物庫に保管されているのを思い出したクラスター公爵は折よく子を身籠っている貴族女性を見付け、その子供と髪と瞳の色を交換し、王女をその貴族の令嬢、アレクシア・フォンデル公爵令嬢として養育することを考える。
なぜ貴族令嬢なのかというと、そこで教養を積ませておけば、万が一ユクトルが王太子として不適切だった場合、女王にできる、と踏んだからである。
嘘でしょう。
とここまで話を聞いて私はあれ、と思った。
いや待って。あの女が本当に先王の娘ならユクトルとは兄弟になるんじゃないの?
この国では兄弟婚は認められてないよね?
なのにユクトルとあの女が婚約してたのはどういうこと!?
今の自分の危うい立場も忘れすっかり聞き入っていると、クラスター公爵がこちらを見た。
『そういう訳でオリビア・ランドール男爵令嬢。いや、フォンデル公爵令嬢。あなたにはこの国のために贄となってもらう』
――は?
淀んだ目のクラスター公爵がこちらを見た。
『もうこうなれば仕方がない。側妃としてのあなたは素質はどうあれ、人気はある。あなたには王弟の息子を産んでもらう。なに、本当は王ではなく先の王弟の方を愛していたが王に気付かれ、仕方なく愛するふりをしていた、と強引だが理屈は付けられる』
とんでもない内容に私の口から反論が出る。
『何を言ってるのか分かりません。だいたい先の王弟がいらっしゃるなら、その方が王になればいいだけではないですか』
『ことはそんなに簡単ではない』
冷たい表情のクラスター公爵が語ったその内容に私はまた驚かされることになる。
なによ、それ。
そして娶せられた王弟サンダルフォン様は美形だったけれど、いくら顔がよくても子供を産む道具にさせられるなんて冗談じゃないわよ!!
そして、五人もの子を産まされた私は風邪をこじらせてあっけなくこの世を去った。
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