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バーで最後の方、テキーラを頼んだところまでは覚えてる。
(テキーラって、あたしそんなに強くないのに何考えてたんだろう)
一歩間違えれば急性アルコール中毒で救急車じゃん、などと思いを飛ばしたのが不味かったのか、耳朶を噛まれた。
「ほらまた、俺とじゃ退屈だった?」
違う、と振り向きかけて思いきり後悔した。
何でって視界に入ったのは凄いイケメンだったから。
淡い金の髪にどこか楽しげな茶色の瞳で髪は染めたのかと思ったけれど、その整った顔立ちから多分ご両親のどちらかがこの国の人じゃないのかと思わせた。
その茶色の瞳はなぜかあたしを見ていて、
「検分は済んだ? それとも俺じゃダメだった?」
茶化すように言われてあたしの中に危惧が生まれた。
(やっぱりこれって……)
一夜限りの遊びか、と気分が落ち込む。
(ま、そうだよね。捨てられたアラサー女なんてお呼びじゃないよね)
もうすぐ結婚か、とか考えてたので仕事もそれほど身を入れていた訳じゃなく。
(腰かけ、って思われてたよなぁ。やっぱり)
あたしは大学卒業後にこっちに来て就職したクチだ。
それもあり、なかなか馴染めずに十年近くになる。
(最近、会社の皆の視線が痛いんだよね)
いつ、寿退社するの、って言われてるみたいで。
「あの、昨日はすみませんでした」
きっと泥酔したあたしを見かねて声を掛けてきたのに、あたしが強引にことに及んだのだろう。
そう思って口に出した言葉は一蹴された。
「何でそんなこと言うの? 誘ったの俺だよ」
(はいいいいっ!!)
「最初は大丈夫かな、って思って声掛けたんだけど」
はっきり言ってタイプだったし。
耳が有り得ない言葉を拾った。
(は!? 今なんて言ったっ!?)
「後は、うん。好きだな、ってさ。じゃないとここまでしないだろ」
「え、あ、うん」
頭が理解しないうちに肯定の言葉が零れ落ちた。
(いやちょっと待て自分っ!!)
幾ら何でもこれは有り得ない。
もしかしたらこの状況に向こうが酔ってるだけ、というのも有り得る。
(だよね。何か若そうだもの)
どう見ても二十代半ばがせいぜい、ということは年下じゃん、とここまで0.001秒。
(後になってやっぱり違ってました、って言われたくないし)
この先は少し冷静になって結論を出した方がいい、と身じろぎしたとたん、体の中心を熱が焼いた。
それを待っていたかのように中のものが律動を始めた。
「……」
言葉もないあたしに、
「その感じだとやっぱり覚えてないみたいだね。あんなに素直だったのに」
(何が素直だったかなんて知りたくないっ!!)
「ちょっ、……まっ」
静止の声が届いたのか一旦離れてくれた。
だけど体の奥まで蕩けるように繋がっていたようで、これまで出したことのない嬌声としかいいようのないものが零れた。
(嘘やん……)
(テキーラって、あたしそんなに強くないのに何考えてたんだろう)
一歩間違えれば急性アルコール中毒で救急車じゃん、などと思いを飛ばしたのが不味かったのか、耳朶を噛まれた。
「ほらまた、俺とじゃ退屈だった?」
違う、と振り向きかけて思いきり後悔した。
何でって視界に入ったのは凄いイケメンだったから。
淡い金の髪にどこか楽しげな茶色の瞳で髪は染めたのかと思ったけれど、その整った顔立ちから多分ご両親のどちらかがこの国の人じゃないのかと思わせた。
その茶色の瞳はなぜかあたしを見ていて、
「検分は済んだ? それとも俺じゃダメだった?」
茶化すように言われてあたしの中に危惧が生まれた。
(やっぱりこれって……)
一夜限りの遊びか、と気分が落ち込む。
(ま、そうだよね。捨てられたアラサー女なんてお呼びじゃないよね)
もうすぐ結婚か、とか考えてたので仕事もそれほど身を入れていた訳じゃなく。
(腰かけ、って思われてたよなぁ。やっぱり)
あたしは大学卒業後にこっちに来て就職したクチだ。
それもあり、なかなか馴染めずに十年近くになる。
(最近、会社の皆の視線が痛いんだよね)
いつ、寿退社するの、って言われてるみたいで。
「あの、昨日はすみませんでした」
きっと泥酔したあたしを見かねて声を掛けてきたのに、あたしが強引にことに及んだのだろう。
そう思って口に出した言葉は一蹴された。
「何でそんなこと言うの? 誘ったの俺だよ」
(はいいいいっ!!)
「最初は大丈夫かな、って思って声掛けたんだけど」
はっきり言ってタイプだったし。
耳が有り得ない言葉を拾った。
(は!? 今なんて言ったっ!?)
「後は、うん。好きだな、ってさ。じゃないとここまでしないだろ」
「え、あ、うん」
頭が理解しないうちに肯定の言葉が零れ落ちた。
(いやちょっと待て自分っ!!)
幾ら何でもこれは有り得ない。
もしかしたらこの状況に向こうが酔ってるだけ、というのも有り得る。
(だよね。何か若そうだもの)
どう見ても二十代半ばがせいぜい、ということは年下じゃん、とここまで0.001秒。
(後になってやっぱり違ってました、って言われたくないし)
この先は少し冷静になって結論を出した方がいい、と身じろぎしたとたん、体の中心を熱が焼いた。
それを待っていたかのように中のものが律動を始めた。
「……」
言葉もないあたしに、
「その感じだとやっぱり覚えてないみたいだね。あんなに素直だったのに」
(何が素直だったかなんて知りたくないっ!!)
「ちょっ、……まっ」
静止の声が届いたのか一旦離れてくれた。
だけど体の奥まで蕩けるように繋がっていたようで、これまで出したことのない嬌声としかいいようのないものが零れた。
(嘘やん……)
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