屈辱の対価ー冷酷御曹司と愛人の息子は金のためだけに体を重ねるー

紗々

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1.

「はぁっ、はぁっ……、んっ、あぁぁぁっ!……っ!」

 大きなベッドの上で四つん這いになって快楽を貪っている女の嬌声が広い部屋に響き渡る。冬真は女を冷たく見下ろしながらその腰をがっしりと押さえつけるように掴み、自らの腰を激しく穿ち続ける。

「はぁっ、はぁっ、んあぁぁっ!あ!あ!……も
もう……っ、あっ、……うぅぅんっ!」

 女のよがり声を聞きながら、冬真も快楽に息を荒げ、腰を振るスピードを一気に上げる。

「…………っ、くっ……!」
「んあぁぁぁぁぁぁんっ!!」

 最後に数回強く腰を打ちつけ、女の中で勢いよく三度目の射精すると、冬真はあっさりと腰を引き自らをずるりと抜き去った。力尽きた女はそのままうつ伏せにどさりと倒れ込み、白い腰をヒクヒクと痙攣させている。

「はぁっ、はぁっ……、あ、あぁ……、と、とうま、さん、…す、…すごい……」

 冬真はうっとりと余韻に浸る女に向かって拾い上げた下着を投げつけると、

「服着たらさっさと帰れ」

と冷たく言い放った。

「は、…はい……」

 女の弱々しい返事を聞きながら、冬真は全裸のままで部屋を歩き、備え付けのバスルームに向かう。

「葬儀は45分後に始まります。お急ぎください、冬真様」
「うるせぇ。分かってんだよ」

 部屋の隅に控えていた父の秘書である神谷に淡々と告げられ、不機嫌に返事をした冬真はバスルームに消えた。



 門倉冬真の父は国内有数の大企業の社長だった。冬真は幼い頃から物質的には満たされた生活を送りつつも、次期社長として厳しく躾けられ、教育されてきた。抑圧された生活の中で溜まるストレスは、周囲への我が儘な振る舞いによって発散された。周りの大人たちは常に冬真の顔色を窺い、学校では冬真に逆らう者は一人もいなかった。
 取り巻く環境と持ち前の気質によって、冬真は傲慢不遜かつ冷酷非情な人間に育っていった。他人に心を開くことはなく、親しい友人や恋人も作らなかったし、取り巻きの連中は物のように扱った。性欲を発散させたい時は適当に呼びつけた女を気が済むまで犯し、事が終わればさっさと追い出した。冬真に呼ばれて来ない女はいなかった。強い立場に逆らえないというよりも、彼の美しく整った容姿は常に女たちを虜にしたからだ。すらりと高い身長に、均整のとれた引き締まった体。すっと真っ直ぐに通った鼻梁。人を見下すことに慣れきった冷酷な切れ長の目と常に口角の下がった不機嫌そうな薄い唇は、見る者が見れば途方もなく魅力的だった。冬真の容姿はどこにいても人目を引いた。

 熱いシャワーを頭から浴び茶色い髪をかき上げながら、冬真は先日死んだばかりの父のことを考えた。いつも難しい顔をしている男だった。家にいる時に笑った顔は見たことがない。子供の頃から親子らしい会話などほとんどしたこともなかった。話題に上るのは常に勉強のことか成績のこと、仕事のこと。事故に遭い、突然死んだというのに何の感慨も湧いてこない。冬真はすぐに考えるのを止めた。

 はぁ。めんどくせぇ。
 皺ひとつない喪服に袖を通しネクタイを締めながら、冬真は心の中で悪態をつく。今から数時間、辛気臭い空気の中でしんみりとした顔をして退屈な時間をやり過ごさなければならない。長男で一人息子である自分に逃げ場はない。うんざりしながらも冬真は完璧に身なりを整え、待機していた神谷を連れ会場に向かった。



「何をしていたの。時間ギリギリじゃないの」
「…わりぃ」

 会場に着くなり咎めるようにきつい目を向けてきた母にぼそっと詫びる。
 高価な黒紋付に身を包み、一分の隙もなくぴしっと整えた髪に手をやりながら、母は説教を始める。

「もっと自覚を持って。あなたはもううちの社を担って立つ身なのよ。会社の顔であり、家の顔でもあるの。門倉家の人間として恥ずかしくない行動をしてちょうだい」
「……分かってるっつってんだろ」

 冬真は苛つき、不機嫌に返事をする。母も自分同様、父の死を嘆く様子は微塵も感じられない。それもそうだろう。父と母は長年不仲でほとんどまともに会話もしない関係だった。顔を見るのも嫌なのか、普段は父や冬真が暮らす本宅とは別に構えた家で一人優雅に生活している。まさに形だけの夫婦だったのだ。涙なんか出るはずもない。

 9月の蒸し暑い曇天の空の下、会場は喪服を着た大勢の人間で埋まり始めた。皆が一様に冬真と母を気遣うように見て、頭を下げる。はぁ、まじでクソめんどくせぇ。早く終われ。まだ始まってもいないのに冬真はさっさと帰って寝ることしか考えていなかった。
 ふと、隣にいる母が普段以上にきつい目をして会場の外を睨みつける。

「……あの女、何を考えているのかしら。こんな所にのこのこと……!」
「あ?…何の話だよ」

 母の睨みつける視線の先に目をやるが、人が多すぎて何に対して苛ついているのかがさっぱり分からない。

「…一番奥よ。会場の外にいるでしょう。目障りな車椅子の、貧乏臭い女が。…追い返しなさい、神谷」
「承知いたしました」

 俺たちの傍に控えていた神谷が、心得たとばかりにさっと動く。冬真が人だかりの一番外側に目を凝らすと、たしかにいた。車椅子の女と、その後ろに立っている男が見える。遠すぎて顔までは分からない。二人とも喪服を着ている様子もないが、一体何者か。
 神谷が傍に行き、その二人と何やら会話しているのが見える。

「誰だよ、あれ」

 母に尋ねると、憎々しげにこう答えた。

「あの人の愛人よ。まったく…。のこのこ出てくるなんて、何を考えているのかしら。まさか遺産の分け前でもたかりに来たわけじゃないでしょうね。浅ましい」

 …へぇ。なるほどな。親父には愛人がいたわけか。まぁいてもおかしくはねぇな。夫婦仲は冷めきり、金は腐るほどある。
 冬真は考え、二人を見やる。…何を話しているのかはさっぱり分からないが、こんな場所にまで愛人風情がのこのこ出てきてうろついてんのはさすがに外聞が悪い。神谷といつまでも話している。…とっとと追い返すか。
 冬真は立ち上がり、二人の元へ歩き出した。




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