ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー

紗々

文字の大きさ
10 / 63

10.

しおりを挟む
 中1の冬休み。
 親の許可が降りて、俺はついに初めて一人で颯太に会いに行った。しかも、泊まりだ。颯太のおばちゃんの好意で、どうせ会いに来るなら泊まっていってもいいわよーと言ってもらったのだ。嬉しすぎる。おかんに豪華な手土産を持たされた。
 バスに乗って揺られながら、胸が高鳴って仕方なかった。久々に顔を見られる。なんだか年々颯太に会いに行くたびにどんどん緊張している自分がいる。会ってしばらくすれば昔のように普通に喋れるのに、会うまではもう心臓がバックンバックンなのだ。何でだ?これ。楽しみすぎるからかな?
 もうすぐ目的のバス停に着きそうだ。俺はバッグの中から手鏡を取り出して髪型と顔をチェックする。ゴミついてないかな。髪変じゃないかな。どうせ大した髪型してないんだけど、なんかそわそわして何度も見てしまう。

 バス停には颯太が一人で立っていた。グレーのコートを着て深い緑色のマフラーを巻いている。バスの中からその姿を見つけた瞬間、心臓が大きく高鳴った。颯太だ。相変わらず可愛い……、いや何を考えてるんだ俺は。男に対して可愛いって。アホか。

「よー颯太!久しぶりー」
「樹!」

 バスを降りた俺が胸の高鳴りを隠して何気ない風に声をかけると、颯太は満面の笑みで俺を迎えた。屈託のないその笑顔にドキッとする。

「久しぶり。元気そうでよかった」

 嬉しさを隠すこともなくニコニコしている颯太が可愛すぎて、俺の方がまごまごしてしまう。

「…おー。元気元気。…すっげー寒いな今日」
「うん。うち近いからもうちょっと頑張って歩いて」
「任せろ。俺は部活で鍛えてるから平気だ」
「ふふ」

 …なんか颯太の仕草や声がいちいち可愛く見えて仕方ない。胸がぎゅうっとなる。自分の動揺を悟られたくなくて、俺は颯太から目を逸らしキョロキョロと周りを見回しながら、久々に来たなーこの辺、とかブツブツ話しながら並んで歩いた。顔が赤くなってしまっている気がして、妙に恥ずかしかった。


「わー、久しぶりねぇいっくん。また大きくなってー。どうぞ、上がって」

 颯太のマンションに着くとおばちゃんもニコニコと出迎えてくれた。

「こ、こんにちは。おじゃまします…」
「はーい、どうぞー」
「あの、これ、…おかんから、です」

 俺はデカい手土産の箱を差し出した。

「わぁっ、すごい…、ステラのケーキだぁ。こんなにたくさん…。気を遣わせちゃったわね。ありがとういっくん。お母さんに連絡しておくわ」

 おばちゃんはご機嫌で箱を受け取ってくれた。

 俺たちはそのまま颯太の部屋に入り、空白の時間を埋めるかのようにたくさん喋った。主に互いの部活や学校での生活について。でも俺には颯太に絶対に話せないことがあった。

「学校どう?楽しい?」
「んー、まあまあかなぁ。部活のために行ってる感じだな」
「そうなの?ふふ。ちゃんと勉強してる?」
「まぁ一応…。…いや、あんまやってない」
「ふふ」
「颯太はどうなんだよ。相変わらず成績優秀なのか?」
「んー、多分。期末テストは学年で7位だったよ」
「げ!マジかよ!俺下から5番目だったぞ!」
「あははっ」

 俺のリアクションに颯太が楽しそうに笑う。…はぁ、幸せだ。目の前に颯太がいる。この時間が俺にとっては夢のようだった。今日は約1年間あの環境に耐えた俺へのご褒美タイムなんだ。
 彩音先輩との過ちのことは絶対に言えなかった。
 いや、本当は笑い話として話してもいいような気がしていた。他のダチとの会話のときみたいに。「やー、実はさー、俺はずみで3年の先輩とヤっちゃってさぁ。相手の女にそのこと学校中にバラされたり、僻んだ男たちにボコられたりもう散々だったんだよ」とか。この話は仲間内ではいまだにめちゃくちゃ盛り上がる。どうせ派手にバラされてるんだし、俺にとってはもはや自虐ネタだ。でも、なんか颯太には言えなかった。万が一ドン引きされたらどうしよう、とか、嫌われたらもうお終いだ、とか、すごく不安だった。悪い方向に行ってしまったらと思うと、…話すわけにはいかなかった。他のヤツらにはどう思われても別にいい。だけど颯太に軽蔑されるのだけは耐えられない。

 夕方まで颯太の部屋でたくさん喋って、おばちゃんが作ってくれた晩ごはんをご馳走になった。カツカレーといろんな野菜がいっぱい入った豪華なサラダ。うちのおかんよりも盛り付けがすげぇ綺麗だ。遠慮もなくもりもり食べながら、颯太と話したような学校のことをおばちゃんにたくさん話した。颯太は俺よりだいぶ少食だった。「いい食べっぷりねぇ。見ていて気持ちがいいわ。颯太もこれぐらい食べてくれたらいいのに」とおばちゃんにニコニコされた。


「いっくん、颯太、先にお風呂入っちゃってね」

 夕食の後、二人でテレビのバラエティ番組を見ながらケラケラ笑っていたらおばちゃんに声をかけられた。

「はーい」

 颯太が返事をして俺に向き直る。

「いっくん先に入っていいよ」
「えっ」
「それか一緒に入る?」
「……。…………っ?!」
「そうね、二人で入っちゃったら?」
「?!……っ、……っ?!」

 颯太がさらりととんでもないことを言うもんだから返事もできずに動揺していたら、食器を洗っていたおばちゃんまでそんなことを言い出した。

 ……え?
 ……そ、颯太と一緒に、風呂……?



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

恵方巻を食べてオメガになるはずが、氷の騎士団長様に胃袋を掴まれ溺愛されています

水凪しおん
BL
「俺はベータだ。けれど、クラウス様の隣に立ちたい」 王城の厨房で働く地味な料理人ルエンは、近衛騎士団長のクラウスに叶わぬ恋をしていた。身分も属性も違う自分には、彼との未来などない。そう諦めかけていたある日、ルエンは「伝説の恵方巻を食べればオメガになれる」という噂を耳にする。 一縷の望みをかけ、ルエンは危険な食材探しの旅へ! しかし、なぜかその旅先にはいつもクラウスの姿があって……? 勘違いから始まる、ベータ料理人×氷の騎士団長の胃袋攻略ラブファンタジー!

孤独なライオンは運命を見つける

朝顔
BL
9/1番外編追加しました。 自分はアルファであると信じて生きてきたのに、発情したことがキッカケで、オメガだったと発覚してしまった。 アルファだと思っていた時も、孤独で苦しかったのに、オメガになったことで俺の人生はより厳しいものになった。 そんな時、俺は運命と呼べる相手と出会うことになる。 ※※※※※ 高校生×高校生で、オメガバースの設定をお借りしています。 設定はよくあるものだと思いますが、おかしなところがあったら、すみません。 オメガバースについて詳しい説明などは省略しています。 シリアスあり、ラブコメもあり、淡くて青い恋愛がメインのお話です。 ※重複投稿 全十話完結済み

優等生αは不良Ωに恋をする

雪兎
BL
学年トップの優等生α・如月理央は、真面目で冷静、誰からも一目置かれる完璧な存在。 そんな彼が、ある日ふとしたきっかけで出会ったのは、喧嘩っ早くて素行不良、クラスでも浮いた存在のΩ・真柴隼人だった。 「うっせーよ。俺に構うな」 冷たくあしらわれても、理央の心はなぜか揺れ続ける。 自分とは正反対の不良Ω——その目の奥に潜む孤独と痛みに、気づいてしまったから。 番なんて信じない。誰かに縛られるつもりもない。 それでも、君が苦しんでいるなら、助けたいと思った。 王道オメガバース×すれ違い×甘酸っぱさ全開! 優等生αと不良Ωが織りなす、じれじれピュアな恋物語。

青い炎

瑞原唯子
BL
今日、僕は同時にふたつの失恋をした——。 もともと叶うことのない想いだった。 にもかかわらず、胸の内で静かな激情の炎を燃やし続けてきた。 これからもこの想いを燻らせていくのだろう。 仲睦まじい二人を誰よりも近くで見守りながら。

新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜

若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。 妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。 ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。 しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。 父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。 父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。 ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。 野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて… そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。 童話の「美女と野獣」パロのBLです

旦那様と僕

三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。 縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。 本編完結済。 『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。

今からレンタルアルファシステムを利用します

夜鳥すぱり
BL
大学2年の鳴水《なるみ》は、ずっと自分がオメガであることを隠して生きてきた。でも、年々つらくなる発情期にもう一人は耐えられない。恋愛対象は男性だし、男のアルファに会ってみたい。誰でも良いから、定期的に安全に話し相手をしてくれる人が欲しい。でもそんな都合のいい人いなくて、考えあぐねた結果たどり着いた、アプリ、レンタルアルファシステム。安全……だと思う、評価も星5で良いし。うん、じゃ、お問い合わせをしてみるか。なるみは、恐る恐るボタンを押すが───。 ◆完結済みです。ありがとうございました。 ◆表紙絵を花々緒さんが描いてくださりました。カッコいい雪夜君と、おどおど鳴水くんです。可愛すぎますね!

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

処理中です...