ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー

紗々

文字の大きさ
22 / 63

22.

しおりを挟む
 バチーーーンッ!!

「…………ごめん、本当に」

 すっ…げぇ痛ぇ。覚悟していた以上の力で左の頬を張り倒されて俺は呻くような声で謝罪した。口の中に血の味が広がる。蘭は顔中をびしょびしょにして泣きながら、俺を恨みのこもった目で睨みつけている。放課後の教室。誰もいなくなるまで待ってから、俺は蘭に別れを告げた。

「……にんげんの、クズだよ、いっくんって」
「…………。」
「……い、一生、一緒にいるって……。……絶対結婚するって、言った、から……、処女もあげたのに……」
「…………。」
「だ、大好き、だから、……信じたのに……っ」

 蘭のことを何とも思っていなかった俺だけど、この全身全霊の恨み言は、さすがに俺の心にダメージを喰らわせた。自分がいかにクズかを思い知らされる。俺は全てを受け入れるつもりだった。

「…………本当に、ごめん」
「……したい、だけ、だったの……?……さ、最初、から……」
「…………。」
「エッチしたいから、……嘘ついたの?……けっこん、とか言って、おきながらっ……、こんなに、……っ、…こんなに、早く、別れようって……。まるで、ただ……、……ヤりたかっただけじゃん。そうなんでしょ?!」
「……………………うん」
「…………っ?!……はぁぁ?!」
「本当に、ご…」

 ゴンッ!!

「……っ!!」

 俯いていた俺の頭上にすごい衝撃がきた。……何かで殴られたらしい。冗談じゃなく、目の前に火花が飛び散った。見たら蘭は鬼の形相で自分のカバンを高々と持ち上げている。もう一発来そうだ。俺は覚悟して歯を食いしばった。

 ドゴッ!!

「……………………っ」

 …同じ箇所に、2回はキツい。全力で叩きつけてきたんだろう、頭が割れたんじゃないかと思うほどの痛みだ。だが、何をされても文句を言える立場じゃないことはよく分かっている。それだけの扱いをしたのは俺だ。蘭の気が済むまでいくらでも殴られる覚悟だった。
 だけど、蘭はそのまま踵を返して教室から出て行こうとした。ドアのところで立ち止まり、ぐしゃぐしゃの顔で俺を振り返り、睨みつけて言った。

「あんたって、本当に最っ低のクズ野郎だからね!絶対に一生許さない!……いつか、絶対、同じ目に遭うから!いつか……、いつか本当に大切な人ができたときに、同じようにその人から捨てられる。絶対に」
「…………っ、」
「覚えてろよ!ゴミクズ野郎!!」

 それだけ言い捨てると、蘭は教室を出て行った。

「………………。」

 俺はその場にがっくりと崩れ落ちた。最後の蘭の言葉は、俺の心を深く抉った。
 …そうだよな。俺は体目当てで適当な気持ちで付き合っただけだけど、蘭は真剣だったんだ。本気で俺を好きになってくれて、俺を信じて、俺に全てを捧げてくれたんだ。…恨まれて当然だ。
 自分がやったように、俺もいつか、同じ目に遭うのかもしれない。
 いつか、…颯太にこの想いがバレて、気持ち悪いと捨てられるんだろうか。
 頬がジンジンと鈍く痛み、頭は割れそうだった。もう二度と、こんなことをするのは止めよう。真剣に好きになってくれた人を傷付けるようなことは、もうしない。絶対に。

「…………ごめん、なさい」

 立ち上がる気力も湧かず、蹲ったまま俺は蘭にもう一度謝った。俺は情けなくて、薄汚くて、最低なクズ野郎だ。押し潰されそうな罪悪感を抱えて、俺は涙を零した。


 まだ1学期だというのに、これで2年生の残りの学校生活も針のむしろとなってしまった。次の日蘭は学校を休んでいて、蘭と仲が良いグループの女子たちは朝から俺にガンを飛ばしてきていた。

「最低だよねマジで」
「ゴミだよゴミ」
「クズ」
「ヤリチン野郎が」
「死ねよ」

 友達をズタズタに傷付けられた女子たちの呪詛が延々と聞こえてくる。…全ては自分が招いたことだ。分かってる。犯した罪の分、罰は受けなくてはならない。

「…なぁ、おい、樹」
「………………。」
「どうなってんだよ、何だよこの雰囲気。彼女も休んでるし。お前何したんだよ」
「………………。」
「おいっ!おいって!樹!…お前まさか、…妊娠させたんじゃねーだろうな。おい!」

 俺と仲の良い男友達が数人、般若のような顔で俺を睨みつける女子たちに怯えながらもヒソヒソと声をかけてきてくれる。

「…………お前ら」
「んあ?」
「……いいか、俺は当分笑わない。多分俺が楽しそうに笑えば、……刃物が飛んでくる。はさみとか、カッターとか」
「……はっ?なんで?」
「……俺を笑わせようとするなよ。頼むから。当分の間、俺はこのクラスの生ゴミとして隅っこで生活するから」
「何したんだよお前!!」


 夏休みが来るまで、俺は本当に置物のように大人しく過ごした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ぼくが風になるまえに――

まめ
BL
「フロル、君との婚約を解消したいっ! 俺が真に愛する人は、たったひとりなんだっ!」 学園祭の夜、愛する婚約者ダレンに、突然別れを告げられた少年フロル。 ――ああ、来るべき時が来た。講堂での婚約解消宣言!異世界テンプレ来ちゃったよ。 精霊の血をひく一族に生まれ、やがては故郷の風と消える宿命を抱えたフロルの前世は、ラノベ好きのおとなしい青年だった。 「ダレンが急に変わったのは、魅了魔法ってやつのせいじゃないかな?」 異世界チートはできないけど、好きだった人の目を覚ますくらいはできたらいいな。 切なさと希望が交錯する、ただフロルがかわいそかわいいだけのお話。ハピエンです。 ダレン×フロル どうぞよろしくお願いいたします。

金の野獣と薔薇の番

むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。 彼は事故により7歳より以前の記憶がない。 高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。 オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。 ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。 彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。 その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。 来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。 皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……? 4/20 本編開始。 『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。 (『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。) ※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。 【至高のオメガとガラスの靴】  ↓ 【金の野獣と薔薇の番】←今ココ  ↓ 【魔法使いと眠れるオメガ】

白銀オメガに草原で愛を

phyr
BL
草原の国ヨラガンのユクガは、攻め落とした城の隠し部屋で美しいオメガの子どもを見つけた。 己の年も、名前も、昼と夜の区別も知らずに生きてきたらしい彼を置いていけず、連れ帰ってともに暮らすことになる。 「私は、ユクガ様のお嫁さんになりたいです」 「ヒートが来るようになったとき、まだお前にその気があったらな」 キアラと名づけた少年と暮らすうちにユクガにも情が芽生えるが、キアラには自分も知らない大きな秘密があって……。 無意識溺愛系アルファ×一途で健気なオメガ ※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています

諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】

カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。 逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。 幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。 友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。 まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。 恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。 ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。 だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。 煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。 レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生 両片思いBL 《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作 ※商業化予定なし(出版権は作者に帰属) この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。 https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24

【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~

上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。 ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。 「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」 そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。 完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか? 初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

『聖クロノア学院恋愛譚 』記憶を失ったベータと王族アルファ、封印された過去が愛を試すまで

るみ乃。
BL
聖クロノア学院で、記憶と感情が静かに交差する。 「君の中の、まだ知らない“俺”に、触れたかった」 記憶を失ったベータの少年・ユリス。 彼の前に現れたのは、王族の血を引くアルファ・レオンだった。 封じられた記憶。 拭いきれない心の傷。 噛み合わない言葉と、すれ違う想い。 謎に包まれた聖クロノア学院のなかで、 ふたりの距離は、近づいては揺れ、また離れていく。 触れたいのに、触れられない。 心を開けば、過去が崩れてしまう。 それでも彼らは、確かめずにはいられなかった。 ――やがて、学院の奥底に眠る真実が、静かに目を覚ます。 過去と向き合い、誰かと繋がることでしか見えない未来がある。 許し、選びなおし、そしてささやかな祈り。 孤独だった少年たちは、いつしか「願い」を知っていく。 これは、ふたりの愛の物語であると同時に、 誰かの傷が、誰かの救いへと変わっていく物語。 運命に抗うのは、誰か。 未来を選ぶのは、誰なのか。 優しさと痛みが交差する場所で、物語は紡がれる。

処理中です...