ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー

紗々

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「………………。」

 樹からのラインを見て、溜息をつく。

『今度の日曜、どっか行く?会える?』

 ……俺だって、すごく、すっごく、嬉しいよ。それはもちろん本当だ。だって子どもの頃からずっとずっと樹のことばかり見てた。大好きだったんだ。誰よりも。恋しくてたまらなくて、やっと同じ高校に通えることになって、幸せいっぱいだ。
 ……だけど…………。

「………………はぁ」

 樹ってば……、もう、下心みえみえなんだもん…。分かりやすいなぁ…。たぶんこのまま日曜に会ったらずっとそわそわしてる樹が想像つくし、隙あらば二人きりになろうとするだろうし、あわよくばエッチしよう、どうにかその方向に持っていこうとするのがありありと分かる。
 ……早過ぎるんだよなぁ。俺は完全な未経験だってこと、分かってるのかな…。怖いんだよ。そもそもまだ中学生だよ?一応。
 ……樹って……。本気かどうかは別として、今までに何人か付き合った彼女がいることは間違いないんだよね。……そういうこと、全部もう、経験済みなのかな、やっぱり。前にバス停でのキスを目撃した、あの子。好きだったわけじゃなくて、告られたから付き合ってみただけ、すぐ別れたみたいなこと言ってたけど、……たぶん、好きでもないのに恋人同士になったのって、そういうことに興味があったから、なんだよね…。そう考えると心がツキリと痛む。過去の人に嫉妬してしまう。興味ないわけがない。俺でさえ樹とのそういうこと、何度も想像したことあるし…。
 …前に樹の部屋に泊まった時だって、……あれってやっぱり、……ひ、一人でしてたんだ。絶対。俺は早くに寝ちゃってたって、イビキかいてたとか言われて、じゃああれって夢だったのかなぁなんてずっと半信半疑だったけど、たぶん間違いない。なんとなく。……だって樹、エロいもん。絶対エロいこと好きだもん。お互いの気持ちが同じだって分かった瞬間に、

『そっ、颯太!』
『…ん?』
『ホ、ホテル行こう!』
『……。』

 ……だもんなぁ。

「………………はぁ……」

 思い出してはまた溜息がでる。あんなに下心が分かりやすい男がいるだろうか。いやいない。反語。

「……もう。…浮気とか、心配だなぁ…」

 恋人になれたばかりでもう浮気なんて心配している。なんだかおかしくて笑ってしまう。樹には悪いけど、俺の覚悟が決まるまではのらりくらりとかわすしかない。だって怖いものは怖いんだもん。
 俺は少し考えて樹のラインに返信した。

『うん。会いたい』

 ……エッチはまだしたくないけど、会いたいものは会いたいんだ。ずっと我慢してたんだから。



「会いたい?!会いたい!!よっしゃぁぁ!!」

 颯太からの返信を見て、俺は飛び上がった。よ、よ、よしっ。コ、コンドームはどこだ?あったっけ?…………ある、戸棚の中にあった。……1年以上前の、使いかけのやつが。
 スパーンッ!!俺はゴミ箱に投げつけた。ふざけんな馬鹿野郎!!記念すべき颯太との初エッチに他の女と使ってたコンドームの残りなんか持っていけるか!!よしっ。買ってこよう。あとは……、あとは……、何がいるんだったっけ。そうだ、ローション、ローションだ。
 それと、それと……、場所……、場所の確保だ……。金はあったか?金、金……。げ!全然ねぇじゃねぇか!クソッ!ホテルに行けない。どうする?こ、この部屋か?もうそれしかねぇ。日曜の昼、……いやおとんもおかんもいるじゃねぇか!ちくしょう、どうする?……さ、最悪、部屋のドアを閉めたらこのタンスをドアの前にズズッと動かして絶対開かないようにして……。ハァハァ。
 
 颯太の方にまったくその気がないことなんて微塵も考えていない俺は、ウキウキムラムラしながら週末の計画を立てていた。



「……ねぇ、……樹」
「……くっ、……はぁ、はぁ、……」
「ねぇってば。何やってるの」
「……はぁっ、…はぁっ、……ちょ、み、見てないでお前も手伝ってくれよ。こ、これ……ドアの前に……」

 日曜のお昼。会ってすぐに二人でパスタを食べに行き、食べ終わるやいなや案の定そわそわし始めた樹に半ば強引に連れられて、樹の部屋までやって来た。おじさんとおばさんにご挨拶したらA高合格のお祝いを言ってくださって、照れながらありがとうございますと言った瞬間、「じゃ、俺たちは高校生活について大事な話し合いがあるから!絶対に部屋に入ってくんなよ!」と樹が俺をグイグイ引っ張って部屋に連れ去った。おじさんもおばさんもポカーンとしてた。
 そして、今。

「はぁ、はぁ、はぁ、……くっ、お、……重いな、このタンス……」
「………………。」

 樹は汗をかきながら何故か部屋にあった大きなタンスをドアの方にズリズリと押している。何故かっていうか、……魂胆はみえみえだ。
 はぁ。バカ……。

「ねーえってば」
「ふんっ!ふんっ!」
「…………しないからね、俺」
「くっ……!……、……へ?」
「だから!」

 俺は万が一にもリビングのご両親に聞こえないようごく小声で言った。

(エッチなんかしないって言ってるの)
「はえ?!な、な、なんでだよ!だ、だっておま」
(シーーーッ)

 樹が叫ぶもんだから慌てて人差し指を唇に当てて静かにしろと促す。

(なっ、……なんでだよ!なんでダメなんだよ!いいじゃんか!)
(いいわけないでしょバカ!おじさんたちがいるのに)
(バレねぇようにタンスをドアのところまで運ぼうとしてんじゃねぇか!ドアすぐに開けられないように!大丈夫だって!)
(ちょっとは落ち着いてよ!明らかにおかしいでしょ。ドア開けようとしたらタンスなんかで塞いであったら。こいつら何してたんだってなるじゃん。変に思われてもう二人きりにはさせてもらえなくなるかもよ)
(……くっ。……だ、だって、だってお前……、やっとだぞ。やっと恋人同士になれたのに。触らせろよ!)
(バカ!)
(なっ!このっ……!)

 頭の中どうなってるんだろう。微妙に部屋の中央付近にまで動かしたタンスは置き去りに、俺めがけて飛びかかってくる。すること以外まったく考えていない。性欲の権化だ。大好きな樹だけど、さすがにちょっと引く。

(ちょっと!!やめてよ!!)
(チューぐらいさせろよチューぐらい!どんだけこっちが我慢してたと思ってんだ!)
(頭おかしい!リビングにおじさんとおばさんがいるんだよ?!)
(お前シたくねーのかよ颯太!)
(だからそういう問題じゃ)

 俺に抱きつきながらほっぺたの横までグイグイ迫ってきた樹の顔と頭を乱暴に押しどけていると、突然おばさんが声をかけてきた。

「樹ー、そうちゃーん」

「!!」
「?!」

 ガチャ



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