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犬も食わないハジメテの
こじれる思い~sideA~
しおりを挟む申し訳ありません!一つ前と同じ内容でUPしてましたね。
下記、全文修正いたしました。お手数ですが、こちらからもう一度読んでいただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
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(あ、またいる…)
私は思わず足を止める。
往生際悪く何度前方を見ても消えないその姿に、憂鬱な気持ちでため息をついた。
待ち合わせがあるから行かなきゃいけないのに、足が竦んで動かない。しかし、少し離れた場所で俯く私を、目敏く見つけた彼女は、向こうからズカズカと近づいてきた。
彼女は、私とルークが付き合いだして程なくして、こうして時々私の前に顔を出すようになったお姉様方の内の一人で、特に熱心な人だ。
「あなたまだルークに付き纏っているの?分かるでしょう?あなたみたいな子、彼が一番苦手にしてるって」
腰に手を当て、顎をそらすように話す彼女は、着る人を選ぶ体のラインの出る服を着こなして、堂々としている。その動作一つ一つに自信が滲み出ていた。見た目からして私とは正反対な彼女。ルークと学生時代に付き合いのあった人で、当時から沢山の友人に囲まれた華やかなグループに属していた彼女。私も顔くらいは知っていた。ただ、卒業してすぐに、別の人と結婚したと思ったけど……。
彼女は最近こうして現れると、毎度毎度、私の容姿や、性格を揶揄してくる。不当に言い掛りをつけられている筈なのに、彼女の自分こそが正しいと言う態度の前にはどんなに言葉を尽くしても虚しいだけだった。結果、今では顔を見るだけでため息が出る始末だ。
(拙いなぁ。早く帰ってもらわないと、ルークが迎えにきちゃう)
……と、言っても、彼女――――名乗りもしないから名前も知らない、は毎日ルークが私を迎えに来ているのを知っているからこそ、ここで待っているのだろう。ルークに会うために。
黙っていても埒が明かないので、私は一つ深呼吸をして顔を上げる。
「私たちのお付き合いが貴女に何か関係ありますか?」
勇気を奮い立たせながら話してみても、昨日の失敗を引きずっているせいか、どうしても声に覇気が出なかった。
彼女は私の言葉を鼻で嗤う。
「そうね、私には関係ないわ。私は別にあなたがいても気にしないもの。元々、お互いに相手がいる気軽な関係だったしね。……でも、あなたはどうかしら?」
その物言いに眉を吊り上げる。まだルークと関係があるような口ぶりだ。
私の怪訝な顔を勝ち誇るように見た彼女は、自分の豪華な金髪にくるくると指を絡めながら言う。
「私夫と別れたの。しがらみも無くなったし、また、ルークとよりを戻そうと思って」
「そんな簡単に……」
「あら、学生時代から有名よ?ルークは来る者は拒まず、去る者は追わず。しかも、年上好み。だから、ま、あなたと私じゃ、あなたの方に行かなくなるのは時間の問題かもしれないけどー?」
意地悪く嗤いながら彼女が話す言葉が耳を滑っていく。
そんなわけない、耳を貸すなと思いながらも、ルークが妙に結婚について焦っている様子に、心の中に疑いの気持ちが生まれる。
もしかして、体のいい、お飾りの妻を用意して、自分は沢山の女性たちと遊び回りたいっていう……?
私は、いわゆる適齢期を過ぎていて、でも、仕事はちゃんと持っている。そこそこ纏まったお金を持っているから養わなくてもいいし、結婚に焦っている女だったら、どんな条件突き付けても頷くだろうって思ってる?
それでなければ、私みたいな地味な女なんて選ばないんじゃ……。
自分の胸に沸いた言葉の数々を打ち消したいのに、否定するにはルークとの会話が少なすぎた。ルークが珈琲を好んでいることすら私はこの間知ったばかり。大切にされている気はするが、これが一時的なパフォーマンスでないかなんてどうやったら納得できるの?
足元が崩れるようなグラグラとした気持ちに、座り込んでしまわないよう拳をぎゅっと握り込んだ。
黙ってしまった私に満足したのか、彼女はふふふ、と笑うと「また来るわ」と言いながら足取り軽く去って行った。
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