世界に蔑まれた黒の転移者 -拝啓-母さん、僕はこの異世界を滅ぼすことにしました。-

天風緋色

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第一章 理想

第9話 出発からのトラブル

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旅立ちの準備は整った。
着ていたコンビニの制服で作った簡易的な袋に木の実を詰め、近くに生えていた竹を使って水筒を作り準備は万全だ。

『それじゃー行くか!』

「ワン!」

僕たちは人里を探すため拠点を離れ森の中に分け入った。まずはこの森を抜けださなければならない。コロに先頭を任せ森を進んでいく。右も左も分からないこんな森の中で無作為に進んでいくのは危険極まりないが、なぜだか僕はワクワクしていた。某動画サイトサバイバルの達人の影響だろうな。サバイバル系動画恐るべし。

道中わかった事がある。
それは僕が話す事をコロがしっかりと理解しているという事だ。

『コロ、少し休憩しよう』

「わん!」

このように僕の問いに反応し答えてくれる。僕の言葉を理解している証拠だ。

『結構歩いたな。日が完全に落ちる前に野営の準備もしなきゃいけないな』

『コロ、今から食べられる獲物をとってこれるか?』

「わん!」

とコロが一声吠え仮に向かおうとするさなか突然。


「たすけてくれーーーっ!」

と人が助けを呼ぶ声が聞こえた!
僕は立ち上がり

『いくぞ!コロ!』

と声をかけ声のする方へと向かった。すると森を抜け開けた場所に出た。
そこには横たわる数人の人間と肩を押さえうずくまる小太りの男。その男を取り囲むように5匹のゴブリンがいた。

僕はすぐさま
『コロ!ゴブリンを倒せ!』

と命令をだす。以前の戦闘でレベルが上がったからかコロは瞬く間にゴブリン達を倒してしまった。周りの安全を確認し僕はうずくまった小太りの男性に近づいた。

『大丈夫でしたか!?』

すると小太りの男性は僕を見るや否や

「ひっ!異端者!」

と声を上げる。

『異端者?』
僕は何のことかわからず首をかしげる。小太りの男は矢継ぎ早に

「いえいえ!何でもございません。命を救っていただき本当にありがとうございます!」

と頭を下げてきた。そこにゴブリンを倒したコロが意気揚々とした感じで僕にすり寄ってくる。

「ま、魔物を従えてる…」

『あ、この子は怖くないですよ。僕の友達なんで』

「魔物と友達…」

話がややこしくなりそうなので僕は話題を変えることにした。

『一体何があったんですか?』

小太りの男は我に返ったのか、淡々と状況を話し始めた。

小太りの男の名前はイザール。商人をやっていて近くの村で行商を行い王都への帰りにゴブリンに襲われたそうだ。行商の際は衛兵や冒険者を雇うのが常らしいが護衛費をケチり新人冒険者2人をつれて行商に出かけたらしいが運悪く多数のゴブリンに遭遇し経験の浅い冒険者では多数のゴブリン相手には歯が立たず今に至るそうだ。

『それは災難でしたね。』

「護衛費をケチるんじゃなかった。全く役立たずの冒険者め」

「あなた様のおかげで本当に助かりました。ありがとうございます。」

命を張って守ろうとしてくれた相手に役立たずとは…この人の事好きになれそうにないな。

『取り合えず冒険者の方の安否を確認しましょう』

僕はイザールの元を離れ倒れている冒険者の元へ向かう。
1人は男性の冒険者。喉元を貫かれすでに絶命していた。人の死を目の当たりにして吐き気を催したが何とかこらえた。

もう一人の冒険者の方にも向かう。
コチラは女性のようだ腹に傷を負っているが息はある。

『イザールさん!こちらの女性はまだ息があります!ここから王都と村はどちらが近いですか!?』

「ここからですと村に引き返したほうが近いと思いますが、-まさか引き返すんで?」

『まだ息があるんですよ!村に引き返して治療してもらいましょう!』

僕は人の死を目の当たりにして興奮しているのか声を荒げた。

「わ、わかりました。ではその冒険者を馬車に乗せましょう。」

「ですが、そっちの冒険者は乗せられませんよ。重いと馬がばててしまいますし急がなければ女冒険者も助からないかもしれませんから。」

確かにイザールの言う通り一刻を争う事態だ。男性の冒険者には申し訳ないが今は助かる命を優先しなければいけない。

『わかりました!』

「それと旦那!このフード付きのマントを羽織ってください。これから行く村はよそ者を嫌います。旦那の黒髪や黒い瞳は目立つので」

『わかりました。』

「お聞き入れ感謝します。それと倒したゴブリンから魔晶石をとっておいた方がいいですよ!魔晶石は高値で取引されますから」

「私が魔晶石を集めておきますから旦那は冒険者を馬車へ。それと…」

そういいながらコロの方をチラチラと見ている。

『安心してください、コロには村の外で待っていてもらいます。』

「ご理解痛み入ります。」

イザールはいそいそと倒したゴブリンから魔晶石を集め僕は冒険者の女性を馬車に乗せた。

そして僕達は急ぎ馬車を走らせ村へと向かった。



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