世界に蔑まれた黒の転移者 -拝啓-母さん、僕はこの異世界を滅ぼすことにしました。-

天風緋色

文字の大きさ
17 / 26
第一章 理想

第16話 出会い

しおりを挟む
ここがあのおばさんの言っていたパン屋だな。
入口には花が飾られ猫をあしらった看板には、フレッツのパン屋と書かれている。
店のドアを開けるとドアベルがカランカランとなり奥から「いらっしゃいませー!」と元気な声が聞こえてきた。

店内もオシャレにデザインされ綺麗に陳列されたパンのいい香りが鼻をくすぐってくる。
さっき串焼きを食べたばかりだが腹の虫が鳴ってきた。

「いらっしゃいませー!フレッツパン店へようこそ!」

声のする方へ顔を向けると、おばさんに聞いた通り綺麗な女性が笑顔でに向け立っていた。

『あっ、ク、黒パンを買いたいんですけどっ…!』

なぜだか緊張してしまった僕はしどろもどろになってしまう。-情けない…。

「黒パンですね!色々種類がございますがどれになさいますか?」

『いや、黒パンの事あまりよく知らなくて…。』

「黒パンの事を知らない…もしかして貴族様ですか!ご無礼申し訳ございません!!」

と彼女は勢いよく頭を下げる。

『いえ!違うんです!ただの冒険者です!僕の生まれた所ではあまりなじみがなかったので!』

僕は慌てて否定をした。

「そうだったんですね!良かった…。」

彼女はほっと胸を撫でおろす。貴族にはやはり礼を尽くさなければいけないのだろう。

「もしよければ試食されてみますか?」

『いいんですか?』

「はい!あまりたくさんは試食させてあげれませんけど!」
と彼女は冗談交じりに微笑みながら試食品の準備をしてくれた。

「これが一般的によく食べられてる黒パンです。どうぞ召し上がってみてください。」

すすめられた試食品の黒パンを手に取り口に入れる。普通のパンより硬く少し酸味があるが風味もよく美味しい。

『とっても美味しいです!』

「そうなんです!うちの黒パンは村一番ですから!」

と立派な胸を突き出し自慢気な表情をしている。
つい目の行ってしまいそうな胸から慌てて視線を外し

『そ、それじゃあこの試食した黒パンをください!』

「ありがとうございます!量はどれくらいになさいますか?」

量か…コロも食べるかな。まあ食べなかったら僕が食べればいいか。

『それじゃ一斤お願いできますか?』

「はい!ありがとうございます!それでは銅貨3枚です!」

『それじゃあ銅貨3枚』

「はい!確かに頂戴しました!」

「ぶしつけなんですがお客様は旅人さんですか?」

と急に質問してきた。確かにフードを目深にかぶった僕の風貌は旅人のそれに見えるだろう。

『これまで旅をしていたんですが、縁あってこの村に住むことにしたんです。』

「そうなんですね!あ!私はエミリスと言います!」

『僕はソラと言います。』

「ソラさん…素敵な名前ですね!これからもうちのお店で黒パン買ってくださいね!」

と挨拶がてら営業をかけられてしまった。でも悪い気はしない。彼女の笑顔はとても素敵で一緒にいるとなぜか胸がドキドキしてくる。

『ま、また来ます!』

僕はパンを受け取るとそそくさと店を出た。

(はーっ。エミリスさんか。綺麗な人だったなー。)

そんな事を考えながら調味料やその他の生活費必需品を購入し僕は家路へとついた。

村から離れ森に入ったところでコロを呼ぶ。


「おかえりなさいませ!ソラ様!」

『お待たせコロ。何か変わった事はなかった?』

「はい!特に変わった事はございませんでしたがゴブリンと数回先戦闘になりました!」

『大丈夫だったか?』

「全く問題ございません!あの商人が言っていた魔晶石もしっかり回収してきました!」

なんとできる子なんだうちの子は…!

僕はコロを抱きしめ全力でよしよししてあげた!コロの尻尾は今にも飛んでいきそうな勢いだ。

『それじゃあ帰ろうか!』

「はい!」

今日はたくさんの出会いがあった。みんな素敵な人ばかりで前の世界での自分からは考えられないほど多く話をした。そんな少しづづ変わっていく自分がいやではなく、心地よかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

俺だけ“使えないスキル”を大量に入手できる世界

小林一咲
ファンタジー
戦う気なし。出世欲なし。 あるのは「まぁいっか」とゴミスキルだけ。 過労死した社畜ゲーマー・晴日 條(はるひ しょう)は、異世界でとんでもないユニークスキルを授かる。 ――使えないスキルしか出ないガチャ。 誰も欲しがらない。 単体では意味不明。 説明文を読んだだけで溜め息が出る。 だが、條は集める。 強くなりたいからじゃない。 ゴミを眺めるのが、ちょっと楽しいから。 逃げ回るうちに勘違いされ、過剰に評価され、なぜか世界は救われていく。 これは―― 「役に立たなかった人生」を否定しない物語。 ゴミスキル万歳。 俺は今日も、何もしない。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。 ↓ PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。

処理中です...