不器用なベビーシッター

いぇい

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不器用なベビーシッター

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兄夫婦は結婚3ヶ月目ぐらいに子供が授かり
生まれてからお家にお邪魔する機会が増え
月に一回休日前に1泊をして兄夫婦のベビーシッターをするのが日課になった。
初めて見た時は生後1ヶ月経たずで、常にどちらかの膝と腕に頭を乗せてる印象だったが、
1年くらい経つと自分で立ったり簡単な言葉を喋るなど欲しいことが顔に出るようになった。
お義姉さんが大学卒業して以来の友達に会う約束があり朝7時から出かけて
目覚めた時には僕と兄、1歳の甥っ子と3人でこたつを囲んでいた。
兄は土曜日というもの娘の世話をしながら
次の仕事の準備のため作業をする。
僕が来たからには楽させてまいと
甥っ子の面倒を見るようにした。
「だっごぉ。」
「はーいおとうちゃんは忙しいから
おじちゃんが抱っこするねー。」
懐いていない猫を抱っこしたように
持ち上げても安定がしない。
「うわーん。だっごぉ。」
足を打たれたゾンビかのように這いつくばり近くにいる兄の膝に手をつけ立ち上がる。
無言で兄は甥っ子を膝の上に乗せ
黙々と変わらず作業をする。
一瞬大人しくはなるが、やはり数分経てば出かけた母が恋しいのか1歳たとうがどうしても急に泣いてしまう。
最初はあやそうと試みるがなかなか泣き止まないため、机の上に置いてある赤ちゃん用の水を飲ませてやっと落ち着くようになった。
そして、そのまま大人しくしてくれよと言わんばかりに
いつも見せている赤ちゃん用の動画をテレビで流すようにした。
僕はどうすれば懐いてもらえるのかベランダでいっぷくしながら考えていた。
吸い終えた後に背を向けベランダの窓を閉めていると兄が
「はい、おじちゃんが遊んでくれるよー。」
と言いつつ、僕にパスをしてくれた。
今度は逃さまいと赤ちゃん用のおもちゃを使い
自分で遊んでみて目を引き立てる作戦に出た。
案の定、音の出る道具な為すぐさま駆けつけ
奪い取って遊ぶようになった。
よしよし、この調子だと心の中で思っていたが
音がうるさすぎたのか兄は手を伸ばし家の外で耳をすませば聞こえる足音くらい小さな音になってしまった。
音が出ていないただのガラクタだと気付き出した甥っ子は飽き飽きとして
兄の元へ戻ろうとするが僕にはまだ策があったのだ。
「はーい、今度はぶーぶーですよー。」
木で組み立てられた三輪車を目の前におき
誘導して目をつけるようにした。
甥っ子は、その三輪車を押しながら机の周りをなぞるように回って目的地についた顔をするので僕はつくり笑顔で
「うわー、すごいおめでとう~。」
と拍手をしながら褒める。
甥っ子は無視をして来た道を戻るという事を3回以上は繰り返した。
それにまた1回1回同じ反応で繰り返して慣れない事をしたため
次は、僕は心身ともに疲れてしまった。
かたつむりのようにこたつに入り携帯を触っていると気付けば30分ほど休んでいた。
甥っ子は兄の膝の上で満足げに目についたものを触っていた。
そろそろ変わってくれと兄は「そろそろ赤ちゃんと遊ばんかーい。」
と言われたので、さっき使っていた
ガラクタのおもちゃを鳴らして横になりながら
「はーい、全国ライブ始めるよー。」
ふざけまじりで惹きつけようとしたが
どうしても思い通りには興味を示さなかった。
「お前に寄せるんじゃなくてお前が寄せにいかんかい。」
と明確なアドバイスをいただいたので
それに従っていると
案外心を開いて遊ぶようになっていたがまた、
立ち止まって座り込みぐずり出す。
僕は赤ちゃん言葉を使い続け
「はいぐでーん」と寝かせつけ落ち着かせようとしたが
赤ちゃんには制御が効かず少し音が出るくらいに頭をぶつけてしまった。
愛を込めて育てる親というものは敏感になり子供の心配をして状況の説明をもとめた。
納得いくまで説明をし最後に謝罪を付け加えた。
「すみやしぇんでちた。」
赤ちゃん言葉を使ってたせいかポロッと出てしまい兄の腹を立ててしまった。
「おい、ちゃんと態度は作れよ?」
あぁ、いらん事をしてしまった。
後悔先に立たずでした。
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