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6 全く性格の違う菜々子と夏子が入れ替わった! 会社は? 夫婦生活は? どうすればいいのよ~!
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しおりを挟む「とりあえず、名前教えてくれないかな?」
「…遥人。」
「遥人君か。…えっと…あなたは…」
「甥だよ。ママが尚之兄ちゃんの姉だよ。」
そっかー、甥っ子かぁ~。なんだ、心配して損した!
「中学生? 高校生?」
「…中一。」
「えーーーーー!」
「何でそんな驚くんだよ!」
「カッコよすぎ~! 中一でその完成度なの~? 信じられない! 世の中って不公平だよね~! 持てる者と持たざる者の差、有り過ぎでしょ!」
「何だよ、それ! ってか、俺、持てる者とかじゃないし。どっちかっていったら持たざる者の方だよ…。」
「え~! 君、そんなこと言ってたら、全国のモテない男子たちから反感買っちゃうよ~!」
「…マジウザ。」
「お腹空いてるでしょ? すぐ作るからテレビでも見て待ってて! 今日は時間も無いから大したのは出来ないから期待しないでね!」
「あんたが作るの? 俺に料理を…。」
「他に誰がいるの? ここにはインビジブルな誰かがいるってことですか~! って、そうだったら怖いじゃんっ!」
私が一人で盛り上がっていると、遥人君は頭を傾げながら呆れた様子でリビングのソファの所に行ってしまった。さあ、腕を振るいましょうか! 私はミートソーススパと簡単なサラダを作った。ミートソーススパが嫌いな男子はあまりいないから、きっと遥人君も食べてもらえるんじゃないかな…。
私はいつものように大輝好みのケチャップたっぷりな庶民的な甘めのソースを作った。いくら富裕層の子とはいえ、中高生の男子って、分かりやすい料理が好きだもんね…きっと…大丈夫でしょう…。食事の支度が済んで、リビングにいる遥人君を呼んだ。彼はテーブルの上を見ると、目を見開いて驚いていた。どうしたんだろ…。この家庭はお金持ちみたいだから、もしかして私の料理があまりにもお粗末すぎたとか?
私は改めて部屋の中を見回した。家具はシンプルだけど、よくみたらどれも高価な外国の有名ブランドばかりだ。このテーブルだって大理石だし…。きっと、普段は世界三大珍味とか、ミシュランシェフ監修のディナーとか、そんなの食べてんのかな…。田舎の素人の手料理なんて、きっと今まで見たことも無いのかも…。そんなの張り切って出してしまった自分が恥ずかしくなってきた。
「食べていいの?」
「う、うん…。だけど…お口に合わないかもしれないだろうから…あ、そうだ! ウーバー頼もうか?」
「いいよ、これで。」
「そ、そう?」
遥人君は行儀よく「いただきます」と手を合わせると、無言で私の作った哀れなミートソーススパゲティを食べた。私は固唾を飲んでそれを見ていた。遥人君は何も言わない。お口に合ったのだろうか? いや、何も言わないという事は、きっと田舎くさい料理だと思っているのかもしれない…。うっかりいつもの感じで献立を決めたのが間違いだった! そこに尚之さんが帰ってきた。
まずいっ! これを尚之さんに食べさせるわけにはいかない。彼は社長だし、きっと毎晩美食三昧のグルメ王のはずだっ!
「誰が美食三昧のグルメ王だって…?」
心の声が漏れてしまっていた…。
「い、いえ、独り言ですっ! あ、あのっ! 尚之さんの分のお食事、今からウーバーイーツで頼みますねっ?」
「…そこに二人分あるけど…。」
「こっ、これはっ! 私の分と亡くなった私の祖父の影膳でございまして…」
遥人君がプッと吹き出した。
「それ…君が作ったの?」
「…す…すみません! とんでもないお目汚しをっ! すぐに下げますので…」
遥人君がまたプッと吹き出した。
「いいよ、それ食べるから。」
尚之さんは一度奥へ行って、着替えてからまた戻ってきた。どこにでもあるようなTシャツとパンツなのに、何でこんなに着こなしてるの? スーツ姿もカッコよかったけど、こんなラフな格好、色気すら漂っている! あんたはモデルですか? 世の中、ほんと不公平だわ…。そんな田舎者の妬みに気付きもせず、彼は「いただきます」と言って、私の作った哀れなミートソーススパゲティを食べ始めた。私もテーブルについて一緒に食べた。三人とも無言だったので、緊張のあまり味なんかわからなかった。
「ごちそうさま。」
二人はそう言うと、お皿を下げようとした。
「あ、そのままで! 私やりますから。」
二人は顔を見合わせた。
「君がそう言うなら…。」
尚之さんはそう言うと、遥人君と一緒にリビングに行った。
「夏子のやつ…どうしちゃったの?」
「…事故で…頭の打ちどころが悪かったみたいだ…」
リビングから二人がコソコソ話をしているのが聞こえた。
感じ悪いな…。確かに私の料理は田舎臭くてあなた方のお口に合わなかったかもしれませんけど、そんな風に言わなくてもよくない? 夏子はこんな冷たい人たちと一緒に暮らしてたのか…。さぞかし気苦労が多かっただろうな…。
私は夏子が可哀そうになった。やっぱり都会の生活は神経がすり減っちゃう。早く大輝のいる地元に戻りたい…。
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