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6 全く性格の違う菜々子と夏子が入れ替わった! 会社は? 夫婦生活は? どうすればいいのよ~!
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しおりを挟む…目が覚めた。私はいつの間にかタクシーの中で尚之さんの肩にもたれて寝ていた。何だかすごく都合のいい夢を見ていたような気がする…。最悪な事に、彼の肩によだれまで垂らしている!
「…菜々子って?」
ひぃっ! 私、寝言言ってた?
「と、友達です。地元の。私たちの結婚式にも来てた…。」
「そっか…。」
私は寝ぼけ眼で尚之さんの横顔を見た。酔いが抜けてないせいか、景色がぼんやりと見える。でも、それでも、尚之さんはカッコよく見えた。見れば見るほど、入れ替わった時、最初に見た時よりも、もっとカッコよく見える。何故だろう? あんなに苦手なタイプだと思っていたのに。冷たいって思っていた彼の優しさを知ったから? 一見クールに見えて本当は人を思いやる心を持っている人だって分かったから? 遥人君の事も面倒見てあげてるし、騙されて結婚したのに何だかんだ言って夏子の事もちゃんと守っている。実はこの人、めちゃめちゃいい男じゃん! あぁ、私は自分の気持ちに気付いてしまった! これは紛れもなく恋心だ! ハァ…カッコいい…トロ~ンとしちゃう…
「…素敵な人だな…尚之さん」
ハッ! また心の声が漏れてしまった。聞こえた? 聞こえて無いよね…。外を眺めていた尚之さんは、ゆっくりと顔をこっちへ向けた。
「…いまさら、そんなこと言う?」
彼は憎らしそうな顔をして私を睨んだ。
「ごめんなさい、ごめんなさい! どうか忘れてくださ…」
尚之さんは私に追いかぶさってキスをしてきた。手を私の首筋に伸ばして、髪を撫でた。それから私の手を握って指と指を絡めてきた。温かい手…。夏子は何故この手を手放そうとしているんだろう…。って、ちょっと~! 一体、私は何をしているの!
「ちょ、ちょっと! 何でこんなこと…」
私は尚之さんから離れた。尚之さんはまっすぐ私を見ていた。
「変だな…君が可愛く見えてきた…。」
彼はそう言うと、また窓に肘をついて外を眺めた。尚之さんは何事も無かったかのようにしているけど、私はさっきの事が頭の中を何度も駆け巡って、その度にドキドキして、手も震えてきた。私は胸の前で自分の手を抑えて目を瞑り、深呼吸をした。早く鼓動が治まるように。そしてこの気持ちが治まるように…。だって、この人は夏子の旦那さんなんだから…。
レストランの帰り、タクシーの中であんな事があったというのに、尚之さんはそんな事は無かったかの如く、前みたいにクールにそっけなくしている。あれは一体何だったんだろう? 私の事、可愛く見えてきたって言ってたよね? もしかして…私の事好きって事? 顔が一気に赤くなっていくのが分かった。胸の奥から喜びの感情が湧き上がってくる。
ふと、前にかけてある鏡を見て我に返った。夏子の美しい顔が写っていた。そうよ。これは夏子の体だ。夏子の顔だからそう言ってくれたのだ。いくら離婚前提で暮らしているとはいえ、一度は惚れて結婚までしたんだから。夏子の破天荒な性格が原因だったとはいえ、尚之さんの好みは夏子なんだよ。もし、私が元の私だったとしたら、きっと彼は好きにはならない…。
さっきまで上がっていた気持ちがどん底に落ちた。いつかはこの体を夏子に返さなければならない時が来る。その時までそつなく過ごそう。戻った時に悲しくならないように、これ以上尚之さんを好きになるのはやめよう…。
その後はなるべく普通に過ごそうと心掛けた。お酒も飲まないようにした。うっかりまた本音が出てしまうといけないから。そして遥人君はちゃんと学校に行ってくれるようになった。彼は彼なりに簡単ではない自分の人生に対して正面から戦っている。私は何にも出来ないけど、せめて彼が普通に生活できるようにサポートしたいと思った。
尚之さんも最近仕事が忙しくて疲きっている。ここのとこ、ずっと帰りが遅い。たまに帰って来られない時もある。よくわからないけど、会社で問題が起きているみたい…。心配だけど、ド素人の私が彼の助けになるようなアドバイスなんて出来るわけが無いし、でも何か役に立ちたい! 私に出来る事って無いのかな…。仕事の役に立てなくても、せめて尚之さんが抱えているストレスを軽減できるような事って無いだろうか?
私はネットで調べてみた。人は非日常を体験することで、ストレスを軽減できることがあるらしい。非日常ねぇ…。そうだ! 私は計画を立てた。
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