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6 全く性格の違う菜々子と夏子が入れ替わった! 会社は? 夫婦生活は? どうすればいいのよ~!
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しおりを挟む遥人君は今晩、真帆さんの部屋に帰ると言って、二人はマンションを後にした。玄関先で二人を見送ると、尚之さんは私の手を取って、ベランダへ連れて行った。ソファ代わりに出していたエアベッドの上私を座らせると、尚之さんはキッチンから新たなグラスとワインを持って来た。
「もう少し飲まない? これ、社員からプレゼントしてもらった、僕の誕生年のワインなんだ。」
「そ、そんな貴重な物、取っておいた方がいいんじゃないですか? もっと特別な日とか、そう! 還暦とか古希とか…いや、どうせだったら紀寿、いっそのこと大還暦祝いに開けましょうよっ!」
「…俺に120まで生きろって? もはや祝ってくれる人、誰も残っていないでしょ…」
「そ、それもそうですね…」
「それに…今日は特別な日だから…」
「…今日が?」
「そう! 僕たち夫婦の愛が再確認出来た日。」
「愛が…再確認…って…。オイッ…オイッ…ウッ…ウゥゥ…」
「何で泣くの?」
だって…私は本当は菜々子なのだから。
尚之さんは本当の私を好きという訳では無いから…。
彼は夏子との愛を再確認したんだ…。
「ウゥゥゥ…ウグッ…オイッ…オイッ…」
ダメだ…止まらない。
鼻水まで垂れ流している。
ティッシュ!
ティッシュ取って来よう!
立ち上がろうとすると、尚之さんが私の手を引っ張ってそのまま体を押し倒した。
「何で泣いてんの?」
尚之さんは私の髪を優しく撫でた。
「…だって…悲しくて…」
「何で悲しいの?」
「だって…尚之さんは…その…夏子の事が…好きだから…ウッ…ウッ…」
「…ダメなの?」
「…ウグッ…い…いえ…そんな…夫婦の問題、私が口挟める問題じゃ…そもそも無いですから…ウッ…ウッ…ウッ…」
私は涙と鼻水まみれの汚い顔を両手で抑えて尚之さんに背を向けた。すると彼は私を後ろから抱きしめた。
「君が何言ってんのか、ちょっとわからない。俺の事、もしかしてまだ嫌い?」
「そんな事あるはずないじゃないですか! 私は…オウッ…ウッ…夏子が…羨ましい…」
「さっきから…何の話してんの? 夏子は君だろ?」
「…違うの。ごめんなさい! 私、あなたを騙していたの! ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」
これ以上自分の気持ちを押えられない。
ズルい事も考えた。
夏子のフリをしてこのまま尚之さんと幸せに暮らそうかって。
だけど…、大好きな彼をこのまま騙し続ける事なんて、私には出来ない。
いっそ全てバラそうか?
私は本当は菜々子なんです。
あなたの妻の夏子と体が入れ替わってしまったんです。
あなたはそれでも私を愛していると言えますか?
…そんな事、言えるわけないよ。
だって本当の私は、田舎の冴えないOLで、何の特技も無くて、夏子みたいに美人じゃない…。
尚之さんのような人が、本当の私を好きになる筈なんて有り得ない…。
私はその場を立ち上がって、部屋を飛び出した。このまま尚之さんと夏子の暮らす部屋にはいられない。マンションを出て、行く当ても無く走った。走るのに疲れて歩きだしたら、後ろから付けられているのに気付いた。確実に後ろに誰かいる。
私が歩くとその誰かも歩いて、立ち止まるとその足音も止まる。周りは住宅街、辺りに人影は無い。ケータイも持たずに飛び出してきてしまった。
どうしよう、助けも呼べない。
もしかして付けてきているのは…この間車に引き込まれそうになった…夏子が昔付き合っていて、良くない別れ方をした…あの男?
恐怖で鳥肌がたって、足がガクガク震えた。体が強張ってその場から動けなくなった。足音はどんどん近づいてきて、ついに私の真後ろまで来た。叫ぼうとするけど、声にならない。
「夏子…待ちくたびれたよ。」
耳元で囁かれた。
あの男だった!
男は私を押さえつけて持っていたロープで私の両腕を後ろで縛った。そして口にガムテープを貼られて声が出せなくなった。
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