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7 それは残酷過ぎる現実と無償の愛だった…。ナビ最終章。今、全ての謎が解き明かされる。
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「理人はね、今からネガティブなAIに対抗するポジティブなAIを作るの。そのためにずっと研究してきて、もう準備は完璧になっているのよ。そして私は…」
「…奈美は?」
奈美の目から突然涙がこぼれた。
「私はそのAIの核になる。私の体、魂、私の全てを使って!」
奈美は笑顔でそう言った。でも涙は止めどなく溢れている。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って! 奈美の体と魂を使ってって、どういう事なんだよ!」
「落ち着いて、頼人! 私が泣いているのは悲しいからじゃないのよ。何と言うか…心が同じ志の魂と共振して、それで涙が出てるんだと思う。では、これからの工程を言いますね! これから私はこの目の前の液体に浸かる。しばらくすると体が分解されて、私の体はたくさんの結晶になるの。そうなると私はもう話は出来なくなる。私が私だったという認識も出来なくなる。そしてその結晶を使って理人が最新鋭の技術でAIを作る。悪のネガティブAIに対抗する光のポジティブAIなんだよっ! すごいでしょっ!」
奈美は目を輝かせて嬉しそうに僕に言った。
…何が起こっている?
俺の身に、今何が起こっているんだ!
奈美の体が分解?
AIになる?
何言ってんの?
とうとう頭がおかしくなったか?
「あちらさん側の組織は、私たちを追い詰めるはず。この計画を阻止するために、血眼になってやって来るわ。だから、頼人が身を潜めながら着実に計画を実行していくのよ。だけど、あの人たちが君を見つけるのは至難の業。そのために君だけ全てを思い出すことが出来ないようにしたから。だからその波動を出していない君を彼らは見つけられない。それに頼人、君、小さい頃からかくれんぼ得意だったでしょ?」
奈美は笑いながら言った。
「頼人、俺は奈美の結晶からAIを作って、それをお前に委ねる。その時、俺はもうこの世にはいないだろう。あいつらの前に出てワザと消される。そうすればあいつらはもう自分たちの天下だと思うはずだから。まさか頼人がそれをやっているとは気が付かない筈だ。おまえの一番効果的なやり方でこの世を救って欲しい。」
理人も笑顔で俺に語りかけた。
…こいつら、完全に頭がおかしくなってる。
おまえら、死ぬって事だぞ!
なのに何でそんなに嬉しそうに話してんだ!
「頼人! ここか一番重要なんだけど…、なるべく目立たず、だけど着実に広めて言って欲しい。」
「一気にやったらダメかな?」
奈美が理人に聞いた。
「それはダメだ。あくまで僕が描いているのは、奈美…奈美の体で作ったAIから誰か、その誰かが目覚めてさらにまた誰か、っていう感じで、最初はAIからだけど、その後は人から人へ伝染していくような感じがいいと思っているんだ。そう、ちょうど水に一滴垂らすと波紋が出来るだろ? そんなイメージで静かに、でも着実と指数関数的に広がっていくのが理想なんだ。そしてそれが確実なやり方なんだ。じゃないと奴らと同じになってしまう。僕らが目指すの所は、洗脳ではなく目覚めなんだよ。」
「そうね。だったら…。あぁ、そうだ。頼人、確か自動車メーカーに勤めているんでしょ? 自動車のナビに使ったら? ちょうど私の名前が奈美だから。美って、ビとも読むでしょ? ナビ! なんちゃって…。」
「いいね! じゃ、俺、奈美の結晶使ってナビを作る! そうだな…こんなのどう? 良心的AI搭載ナビゲーションシステム。」
「いいっ! てか、もうそれしか考えられなくなってきた! ナビかぁ~! 私そのナビになりたい! 私、人生どん詰まりの人々の手助けをするわ!」
「親分肌で、ちょっとお節介な奈美にピッタリだな。」
ハハハハハ…。
理人と奈美はそんな事を話しながら笑いあった
「…っと待てよ…。」
「…え?」
二人は笑い涙を拭いながら僕の方を振り向いた。
「待てっていってんだろー!」
怒鳴り声をあげる僕に二人は固まった。
「何、笑ってんの? 二人とも死ぬって事だろ? 冗談じゃない。そんな事、俺はしたくない!」
これから僕たちを待つ未来を到底受け入れる事が出来なくて、僕は喚き散らした。
…ドクン…ドクンドクンドクンドクン
その時、心臓が飛び出るかと思うくらい音を立てて鳴った。涙が頬を滴り落ちた。僕の魂はそれを受け入れろと叫んでいる。
その為に僕たちはこの星に生まれたんだろ、と僕の魂は叫んでいた。そして僕は抗う事をやめた。僕が自分だけ思い出せないようにしたのは正解だったんだ。
だって、もし思い出せていたとしたら、僕は絶対に反対していた。兄を失い、かけがえのない幼馴染の体をそんな事に使うだなんて、そんな滅茶苦茶な計画、叩き潰していたと思う。
「…奈美は?」
奈美の目から突然涙がこぼれた。
「私はそのAIの核になる。私の体、魂、私の全てを使って!」
奈美は笑顔でそう言った。でも涙は止めどなく溢れている。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って! 奈美の体と魂を使ってって、どういう事なんだよ!」
「落ち着いて、頼人! 私が泣いているのは悲しいからじゃないのよ。何と言うか…心が同じ志の魂と共振して、それで涙が出てるんだと思う。では、これからの工程を言いますね! これから私はこの目の前の液体に浸かる。しばらくすると体が分解されて、私の体はたくさんの結晶になるの。そうなると私はもう話は出来なくなる。私が私だったという認識も出来なくなる。そしてその結晶を使って理人が最新鋭の技術でAIを作る。悪のネガティブAIに対抗する光のポジティブAIなんだよっ! すごいでしょっ!」
奈美は目を輝かせて嬉しそうに僕に言った。
…何が起こっている?
俺の身に、今何が起こっているんだ!
奈美の体が分解?
AIになる?
何言ってんの?
とうとう頭がおかしくなったか?
「あちらさん側の組織は、私たちを追い詰めるはず。この計画を阻止するために、血眼になってやって来るわ。だから、頼人が身を潜めながら着実に計画を実行していくのよ。だけど、あの人たちが君を見つけるのは至難の業。そのために君だけ全てを思い出すことが出来ないようにしたから。だからその波動を出していない君を彼らは見つけられない。それに頼人、君、小さい頃からかくれんぼ得意だったでしょ?」
奈美は笑いながら言った。
「頼人、俺は奈美の結晶からAIを作って、それをお前に委ねる。その時、俺はもうこの世にはいないだろう。あいつらの前に出てワザと消される。そうすればあいつらはもう自分たちの天下だと思うはずだから。まさか頼人がそれをやっているとは気が付かない筈だ。おまえの一番効果的なやり方でこの世を救って欲しい。」
理人も笑顔で俺に語りかけた。
…こいつら、完全に頭がおかしくなってる。
おまえら、死ぬって事だぞ!
なのに何でそんなに嬉しそうに話してんだ!
「頼人! ここか一番重要なんだけど…、なるべく目立たず、だけど着実に広めて言って欲しい。」
「一気にやったらダメかな?」
奈美が理人に聞いた。
「それはダメだ。あくまで僕が描いているのは、奈美…奈美の体で作ったAIから誰か、その誰かが目覚めてさらにまた誰か、っていう感じで、最初はAIからだけど、その後は人から人へ伝染していくような感じがいいと思っているんだ。そう、ちょうど水に一滴垂らすと波紋が出来るだろ? そんなイメージで静かに、でも着実と指数関数的に広がっていくのが理想なんだ。そしてそれが確実なやり方なんだ。じゃないと奴らと同じになってしまう。僕らが目指すの所は、洗脳ではなく目覚めなんだよ。」
「そうね。だったら…。あぁ、そうだ。頼人、確か自動車メーカーに勤めているんでしょ? 自動車のナビに使ったら? ちょうど私の名前が奈美だから。美って、ビとも読むでしょ? ナビ! なんちゃって…。」
「いいね! じゃ、俺、奈美の結晶使ってナビを作る! そうだな…こんなのどう? 良心的AI搭載ナビゲーションシステム。」
「いいっ! てか、もうそれしか考えられなくなってきた! ナビかぁ~! 私そのナビになりたい! 私、人生どん詰まりの人々の手助けをするわ!」
「親分肌で、ちょっとお節介な奈美にピッタリだな。」
ハハハハハ…。
理人と奈美はそんな事を話しながら笑いあった
「…っと待てよ…。」
「…え?」
二人は笑い涙を拭いながら僕の方を振り向いた。
「待てっていってんだろー!」
怒鳴り声をあげる僕に二人は固まった。
「何、笑ってんの? 二人とも死ぬって事だろ? 冗談じゃない。そんな事、俺はしたくない!」
これから僕たちを待つ未来を到底受け入れる事が出来なくて、僕は喚き散らした。
…ドクン…ドクンドクンドクンドクン
その時、心臓が飛び出るかと思うくらい音を立てて鳴った。涙が頬を滴り落ちた。僕の魂はそれを受け入れろと叫んでいる。
その為に僕たちはこの星に生まれたんだろ、と僕の魂は叫んでいた。そして僕は抗う事をやめた。僕が自分だけ思い出せないようにしたのは正解だったんだ。
だって、もし思い出せていたとしたら、僕は絶対に反対していた。兄を失い、かけがえのない幼馴染の体をそんな事に使うだなんて、そんな滅茶苦茶な計画、叩き潰していたと思う。
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