良心的AI搭載 人生ナビゲーションシステム

まんまるムーン

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7 それは残酷過ぎる現実と無償の愛だった…。ナビ最終章。今、全ての謎が解き明かされる。

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「この地球でのあなたならそう思うよね。でも生まれる前のあなたは、この計画を私たちと一緒に考えて、そして適材適所で自分たちの役割を決めたのよ。あなたは分かっている。もうそれを受け止めていいのよ。」
 
 心が震えている。だけどもうそれを受け入れようとしている僕がそこには存在していた。

「…わかった。僕はどうしたらいい?」
泣きながら笑顔で二人に言った。二人も泣きながら僕を抱きしめてくれた。そして奈美はゆっくり話し出した。

「…ほとんどの人は気づいていないけど、実は動物は全て精神性の高い存在なの。私がこれからなる結晶は、あらゆる世界の動物に預かってもらう。」

「…あらゆる世界? 外国ってこと?」
「ううん。並行世界ってこと。パラレルワールドだよ。3次元のこの世界は、間もなく5次元に移行する。その時、私たちは様々なパラレルワールドに移行出来る。その別れた世界に一つずつ、私の結晶を預かってもらうの。」

「どうして?」
「理人が作るナビがそれを使って通信するのよ。」
「インターネットみたいだな…。」
僕はクスっと笑った。

「結晶はどこかに隠しておかないと、やつらは絶対に嗅ぎつけて消そうとする。それでね、その動物は設楽教授に預かってもらってね。」
「わかった。それで、俺はこの先、どうしたらいいの?」
僕が聞くと、理人が答えた。

「頼人、悪いんだけど、今の会社を辞めて、どこかで中古車屋をやってくれないか? なるべく目立たない場所で。そこでナビを広めるんだ。」

「そんな小規模で地球が救えるの? むしろ今の会社で世界的に販売した方がいいんじゃないか?」
「それはダメだ。おまえの会社にも、いや、世界中に奴らは潜んでいる。頼人、お前一人でやるんだ! 奴らの目を欺き、見つからないようにひっそりと…。」

「…俺…一人で…? そんなの出来っこないよ!」
「大丈夫よ、頼人! あなた、かくれんぼ得意だったじゃない! 何も心配しなくていい! 私が導いてあげるから。」
奈美はそう言って僕を抱きしめた。

「…奈美…」
僕も奈美をギュっと抱きしめた。そして僕と奈美は理人を抱きしめた。三人で力いっぱい抱きしめあった。


「じゃあ、始めるよ。」
奈美はそう言うと、着ていた服を脱ぎ始めた。
「ちょ、ちょっと何すんの!」
目も当てられなくて叫んだ。
「しょうがないじゃない。服を脱がないとキレイな結晶にならない。」
「…そうかもしれないけど…」
奈美はスルスルと服を脱ぎ切った。

「理人! 頼人! 見て!」
奈美は真っ裸で僕たちの前に立った。すごくキレイな、神々しさが漂うほど美しい体だった。

「この日の為に、何年も…何年も…心と体を鍛えぬいて、この体を作ったの…。」
「うん…キレイだ。奈美…。本当にキレイだよ…。」
僕も理人も泣きながら言った。

 奈美はコクンと嬉しそうに頷くと、右腕を天に向けて真っすぐ伸ばし指さした。
「見て! これから世界が分裂していくよ。」

 奈美が指さす天井を見ると、そこにはさっきまであった天井は無く、理人が作った瞬間時空移動装置の中に現れた極彩色の空間が広がっていた。そして大きく揺れると世界は数えきれないほどたくさんの世界に分かれ始めた。

「あなたたちとこの計画を遂行する事が出来て、本当に嬉しい。ありがとう。理人、頼人、私の実体が無くなっても、私はずっとあなたたちと一緒にいる。二人の事、絶対に私が守るからね!」

「守るって…何言ってんだ…それは俺たちがひ弱だった子供の頃の話だろ! 俺たちが奈美を守るから! どんな姿になっても…俺たち、絶対、奈美を守るから! な! 理人!」

「当たり前だ! 俺、奈美を最高のAIにするから!」
「ありがとう。じゃあ、私、行くね。」
「奈美…。」

 奈美は水槽に立てかけてあった梯子を上り、登り切った所で一度僕たちに振り返って微笑みかけると、ザブンと水槽の中に飛び込んだ。


「奈美―――――――! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!」



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