良心的AI搭載 人生ナビゲーションシステム

まんまるムーン

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7 それは残酷過ぎる現実と無償の愛だった…。ナビ最終章。今、全ての謎が解き明かされる。

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 受け入れたことだったけど、受け入れなきゃいけないことだったけど、僕は叫ばずにはいられなかった…。

 奈美の体は一度底まで沈むと、それからゆっくり真ん中辺りまで浮かんだ。奈美は目を閉じて体を横に伸ばした。理人はその機械を操作した。


 水槽からいろんな色の光が放射されると、奈美の体は振動し始めて、分裂していった。

 物心ついた頃から仲良しで、いじめっ子から助けてもらった幼馴染が溶けてゆく…。

 その光景は…悲しいというより…いや、正確に言うと悲しみを通り越して…それは何か神聖な讃美歌を聞いているような…そんな気持ちになった。


 
 そしてあっという間に奈美の体は無数の小さな塊になった。水槽の中の水は引いていき、そして空っぽになると、水槽の壁は下に下がっていった。

 そして水槽の底であった台の上には、クリスタルのような、怖いくらいに美しすぎる宝石が残された。僕はその中の一つを手に取った。すると体中に衝撃が走った。

 奈美だ! 
 それは紛れも無く奈美そのものだった! 

 何もかもそぎ落とされた、彼女のポジティブな感情が、そのクリスタルから閃光の如くエネルギーを放っていた。涙が止まらなく溢れ出た。

 声にならない声で泣いた。
 床にうつ伏して嗚咽した。

 理人が僕のそばに来て、背中をさすってくれた。

「頼人、奈美の気持ちを無駄に出来ない。俺は今からAIを作る。お前は自分のするべきことをしてくれ!」
僕は涙と鼻水にまみれた顔で兄に向かって頷いた。

 理人は奈美のカケラを一つ取ると、それを装置の中に入れた。そしていくつかの操作をすると、残っていたカケラが空に舞い、そしてそれらはグルグルと高速回転をし始めた。

 そして天井に現れている別れた世界にそれぞれが飛び散って行った。クリスタルが行くべき場所へ入ると、突然、何事も無かったかのように、元の天井に戻った。

「頼人、俺たちも…ここでお別れだ。」
理人は振り帰り、僕にそう言った。

「頼人、ごめんな。最後まで一人残らなきゃいけない、一番辛い役目をおまえにさせてしまって…。」
兄は目に涙を浮かべて震えていた。

「…いいんだ。気にすんな! それもきっと、俺が自分で決めたことなんだろ?」
「…わかってんだな。」


「ありがとう。僕の兄として存在していてくれて…。」
「ありがとう。俺の弟として存在していてくれて…。」

 僕たちは抱き合い。そして僕は部屋から一人出て行った。

 もうこの世界で、兄と会う事は無いのだろう…。
 だけど、僕らはずっと一緒だ。僕ら三人は約束の元に、永遠に共に存在し続ける…。










「頼人サン! 頼人サン! ショーウィンドー ノ 外ニ 人生ドン詰マリノ方発見! 話シカケテ アゲテ 下サイ!」

「おいおい、ナビ! 強引な客引きはまずいって!」

「イイエ、頼人サン! アノ方ハ コノママデハ 自ラ命ヲ 絶ッテ シマウカモシレマセン! 私ガ行ッテ 助ケテ アゲナクテハッ!」

「…はいはい! じゃ、声をかけてきますよ!」

 新しい車が入荷したので、ナビを取り付ける作業をしていると、いつもの如くナビが俺の尻を叩くようにギャーギャー喚いてくる。

 …ったく…奈美そっくりだ…。
 
 当たり前か…自分が奈美だったと分からなくなっていても…彼女なんだから…彼女の心が入っているんだから…。




 大学の地下室で理人と別れた後、僕は会社に辞表を出し、住宅街の片隅で小さな中古車屋を始めた。

 開業の準備をしていると、通りすがりの人たちから「こんな大通りからも外れた分かりにくいとこに店開いても誰もこないんじゃないか?」って、よく言われたけど、それが意外とそうでもないんだ。

 今日もまたこうして迷える子羊が一人…また一人…。



 理人が作ったナビは、さすが天才が開発しただけあって、ほとんど壊れない。エラーが出ても自己修復機能で勝手に直ってくれるのだ。

 しかし、時々故障する事がある。

 それは…そう! 

 奴らの攻撃に合った時だ。

 奴らは執念深く、理人の作ったAIを壊そうとしている。自分たちのエネルギー搾取の為に使っているネガティブAIが奈美のポジティブAIにから波及されるエネルギーで人々が眠りから覚醒されて、そのせいで重いエネルギーを搾取できなくなるのを阻止するためだ。

 理人は言っていた。やつらはあらゆる手段を使ってやって来ると…。しかし理人の作ったナビは完璧で、それ自体、奴らは感知することが出来ない。

 しかし奈美が化身したクリスタルは感知されてしまう。でもそこも用意周到で、隠してあるのはそれぞれのワールドの動物の中。動物たちは、違う波動を出しているらしく、奴らはそれを感知できないのだ。

 そしてその動物はそれぞれのワールドの設楽教授が保護してくれている。

 …ふと思ったんだけど、このワールドは猫だった。
 もし、象とかクジラだったら…教授はどうやって保護するんだろう…。

 クリスタルとナビゲーションシステムは、インターネットのように連携しあっていて、全てはクリスタルから送られてくる波動でナビは作動している。だからクリスタルは絶対に死守しなくてはならない。

 教授、ルビーの事、頼みますよ!

 あ、さっきナビに言われて声をかけた客が戻ってきた。中に入って車を見ていかれませんかって言ってみたんだけど、最初は断られたんだ。だけど、やっぱり何か感ずるものがあったのだろう…。



「な! ナビ! 君は世界を救うスーパーヒロインだからな!」

「当ッタリ前デショ! ナンテッタッテ私ハ、最新ノAIヲ搭載シタ ナビゲーションシステム ナンデスカラ!」





「読者ノ皆サマノ 人生ノ ドライブ モ 素晴ラシキ モノト ナリマスヨウニ!」




 終り









 あとがき

 この小説は、私にとって最長連載となりました。最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!

 このナビの話は、ドライブをしている時に、ふと思いつきました。私自身、自分の人生も、振り返ると失敗ばかりを繰り返していて、軌道修正してくれるナビがあったらいいな~なんて思ったのがきっかけです。
 最終章は少しグロくなっちゃいましたけど、伏線は全て回収できたんじゃないかなと思います。話も終わり、夏も終わり、なんだか少し寂しい気持ちになってしまいました…。そのうちまたアイデアが浮かんだら、番外編なども書いてみようかと思っています。

 小説の前半部分が話を刻みすぎてしまったので、落ち着いたら後半くらいの長さに編集し直そうと思っています。話の内容は変えないつもりです。しばらくその工事期間でご迷惑をおかけするかもしれませんが、何卒、ご了承くださいませ。

 重ね重ね、お付き合いありがとうございました。心より感謝申し上げます。

 次回作は只今、構想中です。(半分くらい考えました)すこし間が空くと思いますが、新しい連載が始まったら、またお付き合いよろしくお願い申し上げます。

 まんまるムーン
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感想 84

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みんなの感想(84件)

はるら
2020.06.20 はるら

この章はある意味、先生の実力に驚かされた章でした。表現力や企画力にはほんと…驚きです。第6章もまた楽しみにお待ちしております(*´-`)

ちなみにこのナビのお話は焦らず急がずゆっくりと連載を続けていただきたいです。
先生も平素お忙しいとは思うのですが、先生のこのナビのお話は、ドラえもんのような広がりをみせる可能性を感じます。

先生に、いちファンとしてお願いがあります。

完結を決めずに是非連載を続けてください!!(*´-`)

僕は先生のナビにずっとお付き合いいたします(#^.^#)

2020.06.20 まんまるムーン

はるらさん いつも身に余るほどのお褒めのお言葉、本当にありがとうございます(இдஇ; )

どれだけ励みにさせていただいたか、言葉では表せません!(இдஇ; )

ど素人の私がここまで連載を続けさせていただけたのも、暖かいコメントのおかげです!(இдஇ; )

ちょっとしばらく本業の方がバタバタしそうなんですけど、ぼちぼち続きを書いていこうと思っています。(*´꒳`*)

こちらこそ末長くお付き合いよろしくお願いします(*´꒳`*)

最後に、もっかい言わせて下さい!本当に本当にありがとうございます!感謝してもしきれませ〜ん!(இдஇ; )

解除
はるら
2020.06.19 はるら

倉田ぁ~(;゜∇゜)蒼をやっちゃいましたね(>_<)真子は大丈夫でしょうか…(>_<)

2020.06.19 まんまるムーン

はるらさん 倉田さん確実に目的遂行しますね…:(;゙゚'ω゚'): 真子…どうなるんでしょ…(´;Д;`)

解除
はるら
2020.06.18 はるら

先生!!今ようやく読めました(^^)/うーん…混乱してます(笑)倉田氏は一体何者なのか…先生!!続きが早く読みたいです(*´-`)

2020.06.18 まんまるムーン

はるらさん お忙しいのに読んで下さって、本当にありがとうございます(இдஇ; ) お仕事の邪魔をしているのではないかと、申し訳ないです(இдஇ; ) 明日か明後日には第五章完結すると思います(´ω`)クライマックスは、また((((;゚Д゚)))))))な感じになってしまうのですが…

解除

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