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しおりを挟む家に帰ると、父も母も不在だった。そういえば、連休だから温泉旅行に行くって言ってたっけ…。俺はじーちゃんちに行くからたまには夫婦水入らずで行ってくれば?と言ったんだった。荷物を片付けてソファに座ったら、なんだか腹が減ってきた。何か食おうと冷蔵庫を物色していたら類からメッセージがきた。
(暇だから今から行っていい?ついでに何か食わせて!)
(ちょうど何か作ろうかと思ってた。いつでもどうぞ。)
俺は料理をするのがけっこう好きで、類や旭にも時々ふるまったりしている。二人からは、この道に進んだ方がいいなんて言われるから、まんざらヘタくそでもなさそうだ。冷蔵庫にナスと豚肉があったので、それを使ってソーメンを作ることにした。ナスを薄めの半月切りにして、豚肉と一緒に炒める。その時おろしにんにくも入れる。火が通ったら仕上げにゴマ油をひと垂らしして、深めの皿に盛る。そこにおろしショウガとすりゴマを入れて麺つゆをかける。最後にラー油を多めに上から垂らす。後はソーメンを茹でるだけだ。ソーメンを茹で終わったところでタイミングよく類がやってきた。いつの間に話が回ったのか、旭も一緒にやってきた。
「私をのけ者にして自分達だけ旨いものを食べるなんて絶対許さないからね!私は鼻が利くんだから隠し通せるわけないっ!」
旭は持ってきたプリンの袋を俺に渡しながら言った。
「今日の乃海飯は何かなぁ~。」
類はスキップしながら家の中へ入っていった。
「ナスと豚肉のピリ辛つけソーメンでございます。」
俺はテーブルセッティングをして、リビングでゲームをしている類と旭を呼んだ。
二人はナスと豚肉のピリ辛ソーメンを見ると、たちまち目を輝かした。
「やばっ、これ永遠に食べられるって!」
旭はソーメンをズルズル食べながら言った。
「今日も安定の乃海飯だな。」
類も一心不乱に食べながら言った。
二人ともに気に入ってもらえてよかった。俺は人が美味しそうにたくさん食べている姿を見るのが好きだ。二人が言うように、料理の道に進むのもまんざら悪くないかも。でもなぁ、料理の世界は厳しいからなぁ…。
「ソウルメイトとか…ツインソウルっての、どうよ?」
唐突に旭が聞いてきた。
「魂の伴侶とか、もともと一つの魂が二つにわかれた片割れとかいうやつ?」
俺がそう言うと旭はソーメンをズルズル食べながら頷いた。
「おまえ顔に似合わずそういうロマンチックな話題好きだな!ってかさ、俺はもうそのツインソウルってのに出合ったけどね!」
類が自信満々に言った。
「マジで?誰?」
俺と旭は同時に類に聞いた。
「3組の栗原凜っているだろ!あの子と俺は絶対前世から繋がってるソウルメイトだな!」
「何でわかったんだよ?てか、おまえたち付き合ってんの?」
「いや、まだだけど、時間の問題だね。前から可愛いなと思ってたんだけど、俺と目が合うと恥ずかしそうにサっと目を逸らすんだよ!毎回だぜ!絶対意識してるだろ俺のこと!」
「それ…あんたと目を合わせたくなくて逸らしてるだけでしょ。キモって思われてるね!」
「キモって何だ!おまえ言っていい事と悪い事が…。」
「だいたい、栗原凜って、うちの学校のアイドルじゃん!360度どこから見てもいつみても完璧な表情してるんだよ!完全に自分がモテるってわかってるって!そんなモテの将軍相手におまえ如きモテの足軽が相手にされるわけない!」
旭と類はギャーギャー言い争っている。
俺はその間、食器の後片付けをして、まだ言い争いが続いているのを確認してから食後のコーヒーを入れた。コーヒーを持っていくタイミングでほぼ言い争いは終わった。コイツらとの付き合いも長くなると、こういう時間配分も的確になってくる。旭はコーヒーをグビっと飲んで話し始めた。
「魂の片割れとか言ってさ、なんだかロマンチックな響きがするけどさ、おかしくない?もともと一つの魂が分かれて二つの魂になるってことはだよ、それぞれ独立した人格になったってことじゃん。じゃ、なんで生まれかわってまた一つになんなきゃいけないの?そこからまた分かれて魂が細分化して増えていくってならわかるけど。んで、会ったからって何なんだろ?そのパワーで世界に平和が訪れるとかあるんならわかるけど、ただ会ってまた恋愛するだけだったら、人類的にはあんまり意味無くない?」
「ま、そう言われたらそうかもしれないけど、俺とアイツは魂の片割れ、とか聞いたらロマンチックじゃん!うっとりするじゃん!恋愛もより盛り上がるだろ!前世からまた出会うと約束していた二人。輪廻転生を繰り返してもまた必ず君を探す!…めっちゃ良くね?俺と凜の輪廻転生ラブストーリー、即ドラマ化決定だろ!」
類はウットリしている。
旭はそんな類を冷めた目で見ている。
「なんか…昔どこかで聞いたような気がするんだけど…、ひたすら祈りを捧げる人々っていうか集団ってあるらしいよな。それでいろんな災いを本当に避けたりすることもあるらしいって。それで全ての災いが避けられるとは思わないけど、そういう思念のパワーって、俺はあると思うんだよな。もしかしたらツインソウルとかいうのに会わなければいけない宿命があるとしたら、出会うことによって、喜びとか愛とかのパワーがいろんなものにいい作用を与えるのかもしれないよな。」
俺は何気なく言ったのだが、類も旭も妙に納得している。
「それは何となくわかる。日本って特に言霊信仰ってあるじゃん。それもそれに近いのかもね。歴史を勉強しても、何かすごく強い力で何度も何度も宣伝されたことって、いつの間にかそれが本当の事、正しい事って思って、最悪戦争とかに突入したりすることたくさんあったみたいだもんね。現代の私たちから見たら、何でそんなバカなことするんだろって思うようなことでも、より多くの思念のパワーがあると、その場にいるとそう思うようになるのかも。みんなが敵意とか嫌悪とかマイナスの感情を持ってると、そこからまた不安とか恐怖とかいろんなマイナスの感情が生まれてきて、負のスパイラルになって泥沼になるのかもね…。という事はその逆もあるわけだよね。という事はツインソウルだかソウルメイトだか、運命の相手と出会って、超劇的な恋に落ちて愛のパワーを世界中に満たすってのも意味があることかもしれないね!」
旭は鼻息混じりに言った。
「やっぱ俺と凜の愛で世界を救うんだって!」
類はウットリと自分の世界に浸っている。
「…前世からの約束って言えば、昨日じーちゃんのとこに行って昔の恋話聞いてさ、その後そこの職員さんから変な話聞いてさ…。」
俺は類と旭に、じーちゃんから聞いた話と石田さんから聞いた話をした。
「何そのいい話!全米が泣き喚くだろ!」
類は涙と鼻水を垂れ流して、じーちゃんと同じような事を言った。
意外にも旭も目に涙を溜めている。
「私、そういうプラトニックな純愛、突き刺さるんだよね。やばい!乃海のじーちゃんの若い頃、私のドストライクかも!」
「じーちゃん、自我崩壊的な秀才じゃなかったっぽいけどな…。」
俺がそういうと類が転がりまくってウケていた。
旭はそんな類の首を絞めていた。
「俺明日、その大黒堂に行ってみようと思ってる。」
ちょうど都合よく三連休で明日まで休みなのだった。
「え、マジ?俺も行く。」
「おもしろそうだから私も行く。」
こうして、明日は三人でじーちゃんが昔住んでた町にある大黒堂へ行くことになった。
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