3 / 101
3
しおりを挟む「今度さ、皆で会わない? 私、セッティングするから!」
モッコが言った。
「うん! いいね!」
朋美は即答した。
「…あの子も呼んで大丈夫?」
モッコが神妙な顔で聞いてきた。
ーあの子…沙也加の事を言っているのかな…?
「私に気を使う必要ないよ。」
朋美は言った。
「…そう? だって…」
モッコは言葉を濁した。
朋美と沙也加の関係…確かに朋美は彼女の事が苦手だった。しかし自分が苦手だからと言って、高校時代に同じグループだった子を一人だけ呼ばないというのは大人げない。
―それにしても…沙也加もこっちに住んでるの?
「沙也加もこっちにいるのよ!」
モッコに考えていた事を言われた。
「旦那さんの転勤で、二年くらい前からこっちに住んでるんだって。きさらぎ駅じゃ無くて二駅先の弥生ヶ丘なんだけどね。」
「そうなんだ…。」
朋美は沙也加との事を思い出して、少し気分が落ちていった。でも高校卒業して何年も経つし、彼女だって大人になっている。昔とは違うかもしれない。そう思って気を取り直した。
「じゃあさ、私が皆に連絡して日程や場所とか決めるから! 今度また連絡するね。」
モッコは言った。
「なんだかモッコだけにいろいろさせちゃって悪いわ。」
「そんな事ないよ。私、今は仕事してないし。まあ、仕事してなくてもする事はたくさんあるけど、それくらいの余裕はあるから気にしないで!」
「…じゃあ、申し訳ないけどお願いするわ。」
モッコは家族の元へ戻っていった。
「朋美~! お腹空かない? そろそろお昼にしようか?」
過去の思い出に浸っている朋美は夫の呼びかけで我に返った。
「あ! もうこんな時間だ…。」
お昼と分かるとお腹が鳴りだした。
「街の探索を兼ねてどこか食べに行こうよ。」
和也の提案で、朋美たちは外食することにした。
とりあえずレストランの多い駅の周辺めがけて歩いた。
新しく出来た街だけあって、どこも歩道の幅をたっぷり取ってある。歩道と車道の間には自転車専用の道路もある。その道路沿いには5m感覚で街路樹が植えてあり、木漏れ日が優しく降り注ぐ。
「これだけ木が植えてあると、夏でも日傘が要らないよね…。」
朋美はふと呟いた。
「女性に優しい街づくりって感じだよね。」
和也も感心して言った。
「偶然かもだけど、日焼けにまで配慮してくれたかのような街づくりだし、これだけ広いとママチャリでも安心だし、こんな配慮って企画部に女性が多いか、そんな意見が通りやすい風通しのいい会社なんだろうね!」
朋美は言った。
「俺らも東南に面接受けに行くか!」
和也はニヤっと笑って言った。転職する気なんか、さらさらないくせに…と思いながら、ふと夫から目を逸らし、通りの向かい側を見ると、感じのいいカフェがあるのに気付いた。
「ねぇ、あそこ…良くない?」
「お! いいじゃん。入ろうか!」
朋美たちはさっき通り過ぎた横断歩道まで戻り道路を渡った。店の前まで来ると、表のテラス席を片付けていた店員さんが朋美たちに気付き
「いらっしゃいませ!」
と、とびきりの笑顔を向けてくれた。
その男性は朋美たちと同世代くらいだった。もしかすると、この店の店長さんかな…そんな事を何気なく思いながら二人は店内に入った。
道路に面する壁は全面ガラス張りで、店内は明るかった。壁は打ちっぱなしで、天井も剥き出し。至る所におもしろい形の植物が置かれてあって、落ち着く空間だった。
そして朋美はパスタ、和也はサンドイッチを注文した。スタッフの女の子は、どうやら入りたてのようで、慣れない端末作業に四苦八苦していた。奥から若い男性が出てきて、その女性のスタッフと交代した。
「大変お待たせして申し訳ありませんでした。」
男性店員は頭を下げた。「店長」と胸のプレートに書いてあった。
「どう見てもあの店長20代前半ってとこだな…。」
席に着くなり和也がカウンターの方を見ながら呟いた。どうでもいい事だったので、朋美は話を半分に聞きながら窓の外の景色を眺めていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる