天使だけど転生して「悪役令嬢」に!

たくの

文字の大きさ
2 / 23

第二章 破滅フラグのとの遭遇

しおりを挟む


クラリッサ――リリスとして転生した彼女は、「破滅」という言葉が頭の片隅にこびりついていた。
乙女ゲームの知識では、破滅フラグの序盤はヒロインであるセリア・アルステルとの出会いでほぼ確定する。その後は嫉妬と誤解の積み重ねが、悪役令嬢クラリッサを破滅へと導くのだ。

「そんな結末は絶対に回避する!」
ベッドに腰掛けながら、リリスは意気込んだ。しかし、天界での無邪気な善行とは異なり、今回の使命は慎重さを求められる。

「まず、セリアに対抗しようとしないこと。そして、王太子アレクシスとの関係を悪化させないこと……だよね。」
前世の経験から「なんとかなる精神」でやり過ごそうとする自分を抑え、慎重に戦略を練ることに決めた。

舞踏会――運命の第一歩

数日後、宮廷で開催される舞踏会の知らせが届く。
これはクラリッサにとって避けて通れないイベントだった。セリアが正式に王太子アレクシスと出会う重要な場面だからだ。

「舞踏会か……どうせ参加しないといけないんだし、ここでしくじるわけにはいかない。」
彼女はゲームの記憶を思い返しながら、自分なりの準備を始めた。

まずは、派手な装いを控えめにすることを決めた。悪役令嬢としてのクラリッサは、ヒロインを見下すように煌びやかな衣装で会場に現れ、周囲の注目を一身に集めることで、セリアとの対立を深めていた。しかし、リリスとしてのクラリッサは違う道を選ぶ。

「シンプルなドレスを選ぼう。これなら、威圧感もないし……きっと周りの印象も変わるはず。」

メイドたちが不思議そうな顔をしながらも、彼女の指示に従って控えめな淡いブルーのドレスを用意した。それを纏ったクラリッサは、鏡の前で微笑む。

「よし、これで悪役っぽさは薄れた……はず!」
不安と期待を胸に、彼女は舞踏会へと向かった。

セリアとの出会い

広間に足を踏み入れると、クラリッサは貴族たちの視線を一身に集めた。いつも通り、いや、それ以上の注目を浴びていることに気づく。

「なんでみんなこっちを見るの?」
冷静に周囲を見渡すと、どうやら彼女の「控えめな装い」が逆に際立っていたらしい。これまで煌びやかで高慢な印象だったクラリッサが、穏やかで落ち着いた雰囲気を纏っていたのだ。

「クラリッサ様、お美しい……」
「今日はずいぶんと優雅で落ち着いていらっしゃるな。」

周囲のざわざわ

セリアとの出会い

クラリッサが会場に足を踏み入れると、周囲の反応が予想以上に穏やかで、少し驚いた。以前のように周囲から高圧的に見られることはなく、むしろ好意的な視線が注がれていたのだ。

「クラリッサ様、お美しい……」
「今日はずいぶんと優雅で落ち着いていらっしゃるな。」

その言葉を耳にしながら、クラリッサは少し不安そうな顔をしていたが、心を落ち着けて周囲に笑顔を向けることにした。これが、天使としての心構えが必要な瞬間だった。

広間の中心に視線を移すと、王太子アレクシスと共に立っている一人の少女が目に入った。淡いピンクのドレスを身にまとったその女性――セリア・アルステルが、周囲の目を集めながらも、どこか控えめに立っていた。

「これがセリアか……」

クラリッサの心臓が少しだけ早鐘を打った。ゲームの記憶の中で、セリアはヒロインとして王太子と結ばれる運命にあった。それに対して、クラリッサは悪役令嬢として彼女をいじめ、最終的に破滅を迎える。だが、その運命は絶対に回避しなければならない。

「こんな風に、何もせずに対立しないようにすれば……」

クラリッサはその場で深呼吸をして、意識的に肩の力を抜いた。そして、セリアが王太子アレクシスと笑顔を交わしながら話しているのを見て、心を決めた。

「行こう、クラリッサ。試す価値はあるはず。」

クラリッサは、少し遅れてセリアの方に歩み寄り、ついに彼女に声をかけた。

「セリアさん、はじめまして。クラリッサ・フォン・エーデルシュタインです。」
穏やかな声で話しかけると、セリアが一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに微笑んで答えた。

「はじめまして、クラリッサ様。私はセリア・アルステルです。」
「あなたがヒロインのセリアさんですね。こうしてお話できて光栄です。」
クラリッサは優雅に微笑んだ。

セリアは少し戸惑いながらも、クラリッサの温かい態度にすぐに打ち解けた様子だった。ゲームでは、クラリッサはセリアに対して冷徹で嫉妬心を抱き、数々の陰湿な策略を巡らせるが、リリスとして転生した彼女は違う。

「私も、クラリッサ様とお話しできて嬉しいです。」
セリアは優しく答えた。その笑顔に、クラリッサの胸の中に奇妙な感情が湧き上がる。ゲームでは、セリアが持つ純粋な心に対して、クラリッサはどこか反発していた。しかし、今の彼女は違った。セリアが思っていた以上に、心が温かくて魅力的な人物に感じられたのだ。

「ふふ、こんなに素直な方だったのですね。」
クラリッサは心の中でほっと一息つき、セリアと軽く会話を交わしながら舞踏会を楽しんでいた。

その後も、クラリッサはセリアとの関係を少しずつ深めることができ、周囲の人々からも驚きの声が上がった。これまで冷徹で高慢な印象が強かったクラリッサが、突然態度を改め、ヒロインに優しく接しているのは予想外だったからだ。

アレクシスの反応

舞踏会が進むにつれて、クラリッサは周囲の貴族たちの視線を集め、王太子アレクシスの姿も次第に彼女の近くに現れる。

「クラリッサ様、今日の貴女は本当に素晴らしいですね。」
アレクシスが微笑みながら話しかけてきた。その言葉に、クラリッサは少し驚きつつも、礼儀正しく返答する。

「ありがとうございます、アレクシス様。私、少しでも皆さんと良い関係を築きたくて。」
「そう言ってもらえると嬉しいです。」
アレクシスは少し笑いながら、クラリッサに話しかけた。だが、その眼差しの中には、わずかな疑念が見え隠れしているようにも感じられた。

(アレクシス様……)
クラリッサは心の中で少し戸惑いながらも、その視線を受け止めた。彼女の心は少しずつ、これまでの悪役令嬢とは異なる方向に動き始めていた。

未来への不安

舞踏会が終わり、クラリッサは一息ついた。その夜、彼女は一人静かな部屋で考え込んでいた。

「こんなに簡単に関係がうまくいくわけない……これからどうなっていくのか、本当に怖い。」
だが、同時にクラリッサは決意していた。この新しい道を歩むことで、彼女自身も何かを学び、成長できるかもしれないという予感がした。

「セリアに対して嫉妬しないように……アレクシス様との関係も、少しずつ築いていく……」
クラリッサは自分自身に言い聞かせながら、今後の道をどう進むべきかを考えていた。

「でも、もう一つ大事なのは、破滅フラグを完全に回避すること。」
彼女は心の中で静かに誓った。この運命を変えるため、天使としての力を全て使ってでも、悪役令嬢の道を外れようと決意したのだった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...