九条真の事件簿「謎めいた遺言」

たくの

文字の大きさ
3 / 4

九条真の事件簿 第三章 「兄の証言」

しおりを挟む

九条と美咲が書斎の調査を進めていると、乱暴に扉を開ける音が響いた。そこに現れたのは、美咲の兄、浅倉隆(あさくら たかし)。40代半ばの精悍な顔立ちで、スーツ姿のまま九条たちを鋭い目つきで睨みつけていた。

「美咲、何をしている。父の書斎に他人を入れるなんて聞いていないぞ!」
「隆兄さん、探偵の九条先生に協力してもらっているの。遺言の謎を解くために」
「遺言の謎だと? そんなもの必要ない! 父は長男である俺にすべてを託したに決まっている!」

隆の声は怒りに満ちていたが、九条はまったく動じず、コーヒーカップを優雅に傾けていた。
「ふむ……確かに、長男が相続するのは伝統的な考え方ですね。しかし、そうだとすれば、なぜお父様は『一番大切な人に』などという曖昧な書き方をしたのでしょうか?」

「そんなの知らん!」
隆は明らかに苛立っていたが、九条は静かに微笑んで彼を観察する。
「浅倉さん、少しお伺いしてもいいですか? お父様とは最近どのようなご関係でしたか?」
「関係? 普通だ。父とは日常的に会話をしていたし、最後まで信頼されていたはずだ」

「なるほど。では、こちらの手紙についてご存じですか?」
九条は先ほど見つけた封筒を隆に見せた。隆はそれを一瞥し、眉をひそめる。
「……そんなもの見たことがない」

九条は頷きながら立ち上がり、ゆっくりと書斎を歩き回り始めた。
「お父様がこの手紙を残した理由を考えると、どうやら遺産相続について『条件』を示している可能性が高いですね。たとえば……家族が協力すること、あるいはある種の課題を解決することが、その条件かもしれません」

「ふざけるな! 遺産はゲームじゃない!」
隆は怒りをあらわにするが、九条はさらに続ける。
「ところで、浅倉さん。この部屋にはあなたが最近手を加えた形跡がありますね」
「……何のことだ?」

九条は部屋の隅にある小さな金庫を指差した。
「この金庫、他の家具よりも埃が少ない。つまり、最近動かしたか掃除をした可能性があります。そして、この金庫の鍵は現在どこにありますか?」

隆は一瞬表情をこわばらせたが、すぐに平静を装う。
「そんなもの知らん。父が管理していたはずだ」
「そうですか。それなら調査を続けるしかありませんね」

九条の観察力に圧倒される美咲と隆。しかし、九条の回りくどい説明に美咲は頭を抱え始めた。
「九条先生、要点だけ教えてもらえませんか?」
「要点とは、つまり……ええと、まあ、ひとつひとつのピースを集めることが重要です。今はまだ全体像が見えないのです」

「それがわからないから聞いてるんです!」

こうして、九条の探偵劇は混沌を極めつつも、少しずつ真相へと迫っていく。兄・隆の背後に隠された秘密とは何か? そして金庫の中には何があるのか――?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社員の青年と清掃員の老婆の超越した愛

MisakiNonagase
恋愛
二十六歳のレンが働くオフィスビルには、清掃員として七十歳のカズコも従事している。カズコは愛嬌のある笑顔と真面目な仕事ぶりで誰からも好かれていた。ある日の仕事帰りにレンがよく行く立ち飲み屋に入ると、カズコもいた。清掃員の青い作業服姿しか見たことのなかったレンは、ごく普通の装いだったがカズコの姿が輝いて見えた。それから少しづつ話すようになり、二人は年の差を越えて恋を育んでいくストーリーです。不倫は情事かもしれないが、この二人には情状という言葉がふさわしい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...