九条真の事件簿「謎めいた遺言」

たくの

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九条真の事件簿 第三章 「兄の証言」

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九条と美咲が書斎の調査を進めていると、乱暴に扉を開ける音が響いた。そこに現れたのは、美咲の兄、浅倉隆(あさくら たかし)。40代半ばの精悍な顔立ちで、スーツ姿のまま九条たちを鋭い目つきで睨みつけていた。

「美咲、何をしている。父の書斎に他人を入れるなんて聞いていないぞ!」
「隆兄さん、探偵の九条先生に協力してもらっているの。遺言の謎を解くために」
「遺言の謎だと? そんなもの必要ない! 父は長男である俺にすべてを託したに決まっている!」

隆の声は怒りに満ちていたが、九条はまったく動じず、コーヒーカップを優雅に傾けていた。
「ふむ……確かに、長男が相続するのは伝統的な考え方ですね。しかし、そうだとすれば、なぜお父様は『一番大切な人に』などという曖昧な書き方をしたのでしょうか?」

「そんなの知らん!」
隆は明らかに苛立っていたが、九条は静かに微笑んで彼を観察する。
「浅倉さん、少しお伺いしてもいいですか? お父様とは最近どのようなご関係でしたか?」
「関係? 普通だ。父とは日常的に会話をしていたし、最後まで信頼されていたはずだ」

「なるほど。では、こちらの手紙についてご存じですか?」
九条は先ほど見つけた封筒を隆に見せた。隆はそれを一瞥し、眉をひそめる。
「……そんなもの見たことがない」

九条は頷きながら立ち上がり、ゆっくりと書斎を歩き回り始めた。
「お父様がこの手紙を残した理由を考えると、どうやら遺産相続について『条件』を示している可能性が高いですね。たとえば……家族が協力すること、あるいはある種の課題を解決することが、その条件かもしれません」

「ふざけるな! 遺産はゲームじゃない!」
隆は怒りをあらわにするが、九条はさらに続ける。
「ところで、浅倉さん。この部屋にはあなたが最近手を加えた形跡がありますね」
「……何のことだ?」

九条は部屋の隅にある小さな金庫を指差した。
「この金庫、他の家具よりも埃が少ない。つまり、最近動かしたか掃除をした可能性があります。そして、この金庫の鍵は現在どこにありますか?」

隆は一瞬表情をこわばらせたが、すぐに平静を装う。
「そんなもの知らん。父が管理していたはずだ」
「そうですか。それなら調査を続けるしかありませんね」

九条の観察力に圧倒される美咲と隆。しかし、九条の回りくどい説明に美咲は頭を抱え始めた。
「九条先生、要点だけ教えてもらえませんか?」
「要点とは、つまり……ええと、まあ、ひとつひとつのピースを集めることが重要です。今はまだ全体像が見えないのです」

「それがわからないから聞いてるんです!」

こうして、九条の探偵劇は混沌を極めつつも、少しずつ真相へと迫っていく。兄・隆の背後に隠された秘密とは何か? そして金庫の中には何があるのか――?

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