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12歳
未来への憧憬
しおりを挟む『ひぃ!やっぱり恐れていた事が………ねぇ、カテリーナ。そろそろお茶会がお開きの時間なんだけど、お願い。思い出した範囲でいいから登場人物と今後の流れを是非お手紙で教えて下さいな。流石にまだ死にたくないわ」
『あ、あの私にもご迷惑でなければ是非教えてください。何か流れを変えるいい算段が浮かぶかもしれませんし…』
カテリーナはガッテン任せろと胸を叩いた。しかし同時に申し訳なさそうな顔になる。
『でもさぁ、正直推しメンだった脳筋以外の詳しい情報忘れてるのよね……オリヴィアには絶対死んで欲しくないから力は尽くけど………』
『それは全然大丈夫!多少教えてもらえるだけでもだいぶ違うと思うから…』
ミレイユと私は気にしないでいいと首を横にブンブンふった。
カテリーナはぱっと見垂れ目でぽってり唇で、口元のホクロが悩ましく、既に胸の膨らみも12歳の時点でかなりの大きさになっているお色気溢れる娘なのに、中身のせいかとても親しみやすい。是非姐御と呼びたい。
『とりあえず手紙は他の人に読まれても平気な様に日本語で書いて送るからそのつもりでね!またお茶会があるはずだからお互いの情報もその時交換しましょう』
三人で取り決めをして防音結界を外し、滞りなく和やかにお茶会が終わりましたよーという雰囲気をだしながらお互いの帰路に着く。
ーーーー
解散してから私は公爵家の図書館へ向かった。良くても国外追放ならば周辺国について調べておく事と、市井の情報と後は福音についてだ。
『私は無駄に魔力が高いからやっぱり冒険者かしらね』
この世界には各地にダンジョンがありその中には高レベルなモンスターがいる。ダンジョン内は全て治外法権の為、本当に実力のある人じゃないとそもそも味方に寝首をかかれかねない。そんな危険があってもモンスターの持つ素材と魔石は魅力的なのだ。
というかダンジョン探索とかめちゃくちゃ憧れる。
私って乙女ゲームこそしていなかったけど異世界もののライトノベルは良く読んでてダンジョンなど行きたくてたまらない場所の一つだ。
『国外追放……案外悪くないわ』
正直王妃教育受ける位なら各地の語学を学んだ方が数倍今後の役に立つ。
「何一人でブツブツ言ってるんだ?」
思考の海に浸っていると、突然背後から声がかかりビクッ!となる。叫ばなかった事を褒めてほしい。
「ジーク……驚かせないでくださいませ」
後ろを見るとジークが立っていた。短く刈り上げた赤毛に意志の強そうな焦茶の切れ長の目でこっちを見下ろしていた。
双子なのに私と全然似てない。
「なにかご用?」
「いや……用事って言うか……今日ドリュー家の娘もお茶会に来てたんだろ?どんな感じだったのかなってさ」
珍しくもじもじと歯切れ悪く話すジークを見て、こいつめっちゃわかりやすい奴だなと思った。
どうせヒロインが来たらカテリーナ捨ててそっち行くくせに!
「カテリーナはとっっっても美しくて、心根も素晴らしい方でしたわ!あんな素敵な方とお友達になれて誇らしい限りですの」
貴様がこれから逃す魚は大きいのだぞと言って聞かせる。
「? お前なんかいつもと雰囲気違うな?いつもなら他人に興味ありませんって返してくるのに」
「!!」
ジークの野性の勘は恐ろしい。意外とジークは他人を良く見てる。朴念仁に見えてそうでもないのだ。逆に私の方が他人に関心などなかった。今までは……
『これからはそうはいかないわね』
「ん?なんか言ったか?」
「いいえ、こっちの話」
私が王太子の正式な婚約者として周知されたのはこの5日後の事だった。
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