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第21話 コミュニティアウィルス
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エクス艦隊提督
アルティゼル首相の決定により、エクスの艦隊はコミュニティアの北、北極迂回ルートからインペリア侵攻をすることになった。
普通の進路を取るならば、インペリアの東、ファザーシーから当然侵攻する、しかしインペリアの東海岸から攻め入るにはすべて山を超えなければならない。航空兵器が投入できなくなった現在の状況からすれば、山越えは輸送がまず難しくなる。一体いつの戦争なのだというくらい、兵糧の輸送は難しくなった。
コミュニティアの北回りのルートはまずインペリアの想定外だろう、だが危険もある。コミュニティアの動向だ。コミュニティアは三年前から伝染病の大流行を理由に完全に鎖国状態にあり、領海に侵入した艦隊を問答無用で追い出すという政策を貫いている。
伝染病というのは限りなく嘘だと思われるのだが真相は誰にもわからない。だがなんらかの生物兵器が流出して被害を出すというのはいかにもコミュニティアでありそうなことだ。
もう艦隊は領海に侵入しているがコミュニティアは無反応だ。
提督「何もないな」
副船長「ハイ、何も反応有りません」
提督「本当に疫病で全滅したんじゃないだろうな」
副船長「まさか、またいつもの秘密主義ですよ、秘密にしたがるということ事態、何も武器を持っていないということの証明じゃないですか、本当に強いなら、秘密にする必要がまったくない」
この副船長は楽観的な男だ。平和の時代にはそれがこの男の取り柄だが、セカイは突然動乱の時代になった。誰かが言っていた、楽観主義は病気だ。それも死へと至る病であると。
提督「観測係、何も見えないか?」
観測「ハイ、船影はどこにもありません」
このまま、何もなく通過できればいいのだが、コミュニティアは何しろ横に長い、このままインペリアまで何も起こらないほうが奇跡だ。
気象係「提督!このまま速度をゆるめずに行けば、ブリザードに直撃することになります、船を戻して一度ディヴァインランドへ停泊するべきだと思います」
やはりな。問題は必ずやってくる。
提督「そんなことは出来ない、首相からは一瞬の時も逃してはならないと言われている、ローグの艦隊など一瞬で木っ端微塵にされているだろう、機を逸すれば我々の陽動部隊が全滅する、氷塊接触による沈没を防ぐためになるべく暴風の影響を受けないように陸に近づいて侵攻を続ける、座礁に気をつけろ」
副船長「しかし!そんなのコミュニティアに撃ってくれと言ってるようなものじゃありませんか?」
提督「コミュニティアに本当にその意思があるならもう撃ってきている」
副船長「そりゃ・・・そうかもしれませんが」
最悪なことにブリザードは猛烈な勢いに発達し、まるで意思があるようにエクス艦隊へ向かってきた。ただの嵐ではない、凍てつくような猛烈な吹雪だ。ガラスはすべて凍りつき何も見えなくなった。衛星通信も頼りにならない。
操舵係「航行不能です!一度停泊しましょう!」
選択の余地はない、鹿半島、という鹿の頭のような形になっている半島の、鹿の顎のあたりにある入り江に艦隊を停泊させることにした。
港には人っ子1人いなかった。本当にコミュニティアには人の気配というものが感じられない、それがいよいよ恐ろしくなった。もちろんこの吹雪で外をほっつき歩いている人間はいないだろうが、どの建築物も廃墟のように明かり一つついていない。そうか、停電しているのだった。世界中どこも、発電所のテロによって光がつかないのだ。ウィルスというよりも、凍死して死んだのかもしれない。
提督「観測係、なにか見えないか?灯台の一つでも?」
・・・
提督「観測係!」
・・・
副船長「まさか寝てるんじゃねぇだろうな、この寒さで寝たら死んでしまうぜ、オレ見に行って来ます」
オマエが行かなくても・・と言おうとしてやめた、こいつは本当に良い人間なんだろう、他人を助ける為に平気で自分の命を危険に晒す。
副船長
甲板の状態は想定よりも何倍も悪かった、すべてが凍てついている、いわゆるホワイトアウトってやつなんだろう、伸ばした手の先が見えない。たかだか数十メートル先の観測台まで必死になって進む。
凍ったドアをこじ開けて中に入ると観測係がふたりともぶっ倒れていた。
副船長「おい!どうした!何があった!?」
答えが何もない、まだ死んではいないが、眼を覚ます気配が無い。
ウィルスというコトバに騙されていた、これはもはや毒ガスだ。感染した瞬間に意識を失い、もう二度と目覚めない、じゃあなんでオレは無事なんだ?クソっ!とにかく陸から離れないと
ブリッジに戻ると提督も倒れていた・・・、なんてことだ!
副船長「こちら司令部、提督が倒れた、無事なやつはいるか!?いますぐ陸から離れろ!ウィルスが蔓延している!!」
・・・
副船長「全艦隊に次ぐ!今すぐに陸から離れろ!そして誰か生きてるやつは答えろ!」
・・・
副船長「誰でもいい!生きてる人間は答えろ!!」
・・・
なんてことだ・・・、エクス艦隊が・・・全滅してしまった・・・かつてセカイの海を統べたエクス艦隊が・・・それにしてもなぜ?なぜオレだけは無事なんだ?抗体を持っていたのだろうか?いや、通信機の近くにいる人間が全滅しただけで抗体を持った人間が生き残っているはずだ。コミュニティアの人間はかなりの数が疫病で死んだと言われるが、全滅したわけではない。生存者を集めて帰還しなければ・・・
アルティゼル(エクス首相)
伝令「首相、コミュニティアに向かった艦隊との連絡が途切れました・・・」
アルティゼル「・・・どういうことだ」
伝令「わかりません、しかし何度無線を送っても応答がありません、エクス艦隊は・・・消失しました」
アルティゼル「ふざけるな!なぜかと聞いている!コミュニティアの攻撃を受けたのか!?」
伝令「わかりません、ブリザードと遭遇して鹿半島に一時避難したという通信を受けてその後一切連絡がつきません」
なんだと・・なんだっていうのだ!全滅!?バカな・・・
アルティゼル「・・・まだ全滅と決まったわけではない、悪天候によって通信が途切れただけだ・・、しかし作戦の続行は不可能と判断する、全艦隊に連絡、総員撤退せよ」
そこへ別の伝令が飛び込んで来た、みるからにバッドニュースを抱えた人間の顔をしている。クソ野郎め、次から次へと・・・。
伝令2「首相!!ディヴァインランドから侵攻を受けています!」
バンっ!拳で机をぶん殴った。こんな血のたぎるような怒りを覚えたのはいつぶりだろうか、久しく忘れていた感情だ。この眼の前がチカチカするような怒りというものは・・・
アルティゼル「裏切ったな!亡霊どもめ!神聖騎士団を殲滅してこのセカイからディヴァインランドを無くしてやる!正統教会を根絶やしにする!1人も残さん!」
アルティゼル首相の決定により、エクスの艦隊はコミュニティアの北、北極迂回ルートからインペリア侵攻をすることになった。
普通の進路を取るならば、インペリアの東、ファザーシーから当然侵攻する、しかしインペリアの東海岸から攻め入るにはすべて山を超えなければならない。航空兵器が投入できなくなった現在の状況からすれば、山越えは輸送がまず難しくなる。一体いつの戦争なのだというくらい、兵糧の輸送は難しくなった。
コミュニティアの北回りのルートはまずインペリアの想定外だろう、だが危険もある。コミュニティアの動向だ。コミュニティアは三年前から伝染病の大流行を理由に完全に鎖国状態にあり、領海に侵入した艦隊を問答無用で追い出すという政策を貫いている。
伝染病というのは限りなく嘘だと思われるのだが真相は誰にもわからない。だがなんらかの生物兵器が流出して被害を出すというのはいかにもコミュニティアでありそうなことだ。
もう艦隊は領海に侵入しているがコミュニティアは無反応だ。
提督「何もないな」
副船長「ハイ、何も反応有りません」
提督「本当に疫病で全滅したんじゃないだろうな」
副船長「まさか、またいつもの秘密主義ですよ、秘密にしたがるということ事態、何も武器を持っていないということの証明じゃないですか、本当に強いなら、秘密にする必要がまったくない」
この副船長は楽観的な男だ。平和の時代にはそれがこの男の取り柄だが、セカイは突然動乱の時代になった。誰かが言っていた、楽観主義は病気だ。それも死へと至る病であると。
提督「観測係、何も見えないか?」
観測「ハイ、船影はどこにもありません」
このまま、何もなく通過できればいいのだが、コミュニティアは何しろ横に長い、このままインペリアまで何も起こらないほうが奇跡だ。
気象係「提督!このまま速度をゆるめずに行けば、ブリザードに直撃することになります、船を戻して一度ディヴァインランドへ停泊するべきだと思います」
やはりな。問題は必ずやってくる。
提督「そんなことは出来ない、首相からは一瞬の時も逃してはならないと言われている、ローグの艦隊など一瞬で木っ端微塵にされているだろう、機を逸すれば我々の陽動部隊が全滅する、氷塊接触による沈没を防ぐためになるべく暴風の影響を受けないように陸に近づいて侵攻を続ける、座礁に気をつけろ」
副船長「しかし!そんなのコミュニティアに撃ってくれと言ってるようなものじゃありませんか?」
提督「コミュニティアに本当にその意思があるならもう撃ってきている」
副船長「そりゃ・・・そうかもしれませんが」
最悪なことにブリザードは猛烈な勢いに発達し、まるで意思があるようにエクス艦隊へ向かってきた。ただの嵐ではない、凍てつくような猛烈な吹雪だ。ガラスはすべて凍りつき何も見えなくなった。衛星通信も頼りにならない。
操舵係「航行不能です!一度停泊しましょう!」
選択の余地はない、鹿半島、という鹿の頭のような形になっている半島の、鹿の顎のあたりにある入り江に艦隊を停泊させることにした。
港には人っ子1人いなかった。本当にコミュニティアには人の気配というものが感じられない、それがいよいよ恐ろしくなった。もちろんこの吹雪で外をほっつき歩いている人間はいないだろうが、どの建築物も廃墟のように明かり一つついていない。そうか、停電しているのだった。世界中どこも、発電所のテロによって光がつかないのだ。ウィルスというよりも、凍死して死んだのかもしれない。
提督「観測係、なにか見えないか?灯台の一つでも?」
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提督「観測係!」
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副船長「まさか寝てるんじゃねぇだろうな、この寒さで寝たら死んでしまうぜ、オレ見に行って来ます」
オマエが行かなくても・・と言おうとしてやめた、こいつは本当に良い人間なんだろう、他人を助ける為に平気で自分の命を危険に晒す。
副船長
甲板の状態は想定よりも何倍も悪かった、すべてが凍てついている、いわゆるホワイトアウトってやつなんだろう、伸ばした手の先が見えない。たかだか数十メートル先の観測台まで必死になって進む。
凍ったドアをこじ開けて中に入ると観測係がふたりともぶっ倒れていた。
副船長「おい!どうした!何があった!?」
答えが何もない、まだ死んではいないが、眼を覚ます気配が無い。
ウィルスというコトバに騙されていた、これはもはや毒ガスだ。感染した瞬間に意識を失い、もう二度と目覚めない、じゃあなんでオレは無事なんだ?クソっ!とにかく陸から離れないと
ブリッジに戻ると提督も倒れていた・・・、なんてことだ!
副船長「こちら司令部、提督が倒れた、無事なやつはいるか!?いますぐ陸から離れろ!ウィルスが蔓延している!!」
・・・
副船長「全艦隊に次ぐ!今すぐに陸から離れろ!そして誰か生きてるやつは答えろ!」
・・・
副船長「誰でもいい!生きてる人間は答えろ!!」
・・・
なんてことだ・・・、エクス艦隊が・・・全滅してしまった・・・かつてセカイの海を統べたエクス艦隊が・・・それにしてもなぜ?なぜオレだけは無事なんだ?抗体を持っていたのだろうか?いや、通信機の近くにいる人間が全滅しただけで抗体を持った人間が生き残っているはずだ。コミュニティアの人間はかなりの数が疫病で死んだと言われるが、全滅したわけではない。生存者を集めて帰還しなければ・・・
アルティゼル(エクス首相)
伝令「首相、コミュニティアに向かった艦隊との連絡が途切れました・・・」
アルティゼル「・・・どういうことだ」
伝令「わかりません、しかし何度無線を送っても応答がありません、エクス艦隊は・・・消失しました」
アルティゼル「ふざけるな!なぜかと聞いている!コミュニティアの攻撃を受けたのか!?」
伝令「わかりません、ブリザードと遭遇して鹿半島に一時避難したという通信を受けてその後一切連絡がつきません」
なんだと・・なんだっていうのだ!全滅!?バカな・・・
アルティゼル「・・・まだ全滅と決まったわけではない、悪天候によって通信が途切れただけだ・・、しかし作戦の続行は不可能と判断する、全艦隊に連絡、総員撤退せよ」
そこへ別の伝令が飛び込んで来た、みるからにバッドニュースを抱えた人間の顔をしている。クソ野郎め、次から次へと・・・。
伝令2「首相!!ディヴァインランドから侵攻を受けています!」
バンっ!拳で机をぶん殴った。こんな血のたぎるような怒りを覚えたのはいつぶりだろうか、久しく忘れていた感情だ。この眼の前がチカチカするような怒りというものは・・・
アルティゼル「裏切ったな!亡霊どもめ!神聖騎士団を殲滅してこのセカイからディヴァインランドを無くしてやる!正統教会を根絶やしにする!1人も残さん!」
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