芋と魚介類はかく語りき

三衣 千月

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五、芋と魚と家族の形

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 律が兄の家で生活するようになってから一ヶ月ほどが経ち、役所への婚姻届の提出やら、各種名義の変更などで年末は慌ただしく過ぎていった。律は家にいる間はもうパイプを銜えなくなっていた。妹にも能力の事を話したからである。
 そして律の家族と兄は当然ながら面識がある。幼馴染であるのだからそれは不思議な事ではない。兄が改まって挨拶に行った時も、律に向かって「捕まえるのが遅い」と言ってのけたくらいであった。兄の家庭に父母がいないことは知っていたので、「アンタがしっかりするんだよ、でもいつでも頼っておいで」と兄に激励もくれた。兄は苦笑いをしていた。
 妹は大学入試が近づいてきたこともあってここの所は部屋に籠って勉強することが多くなった。

「妹ちゃん、夜食作ったよ」
「いつもありがとう、おねえちゃん」

 年末年始は驚くほど何事も無く過ぎた。妹が受験生だったということもあっただろうが、もともと兄も律も形式張ったことに気を回す人間ではなかったからだ。

「気にしなさんな。体調にはほんと気をつけなよ」
「うん、お兄ちゃんの二の舞にはならないから大丈夫!」
「アイツはほんと馬鹿だったよなあ」

 笑いながら、二人で兄の受験失敗談で盛り上がる。兄は自らの大学受験の際に神頼みと称して全国の芋と名のつく神社を片端から詣で、その疲れから試験当日に寝込んでしまった過去を持つ。幸い前期試験だったため、後期試験では律や妹を始めとする周囲の人間に徹底的に行動を監視され、まるで護送される犯罪者のような雰囲気で試験会場へと連行されたのだった。

「兄の悪口はそこまでだ二人とも」

 兄が自室から顔を出す。部屋で芋に関わる書籍を読み漁っていた兄は不穏な会話にたまらず割って入った。

「事実だろうが。ま、反面教師としては最高だよアンタは」
「なにおう。俺ほどできた人間もおるまい。人間、一つところに己を懸けるのが常道だろう」
「和を以って尊しと習わなかったか? 合わせる人間の身にもなれ」

 あきれたように律は言い、妹はそれを見て微笑ましいと思う。

「はいはい、夫婦喧嘩はそこまでにしてよね。ねえ、お兄ちゃんってどうしてそんなに芋が好きなの?」

 妹はふと思いついた質問をぶつけてみた。当然のように受け入れていたが、そもそも兄の芋に対する情熱はどこから湧いてくるのだろう。いつからだったろうと思い返してみても思い出せない。兄はいつでもこうだった気がする。

「そういやアタシも聞いたことなかったな。中学ん時にゃあもう、イモイモ言ってたよな」
「そんなに大した話でもないぞ。あれは小学5年の運動会の時だ」
「んー、何かあったか?」
「母が弁当を作ってくれた。妹よ。お前はまだちみっ子だった。ぴよぴよと音のなる靴を履いて母と共にいたのだぞ」
「思い出せないや」
「デザートが大学芋だった。兄ちゃんは生まれて初めてそれを食べたのだ」
「あ、思い出した。あんたノドに詰まらせてたね。周りが水を飲め、茶を飲めってのに全然飲まねえの」
「それほど惜しかったのだ。それほど美味かったのだ。流し込んでたまるかと思ったのを憶えている」
「結局気絶して保健室いったんだよな。おばさん、大慌てでアンタ担いで行ってさ。妹ちゃん置き去りにされたんだぞ」
「ぴよぴよの私が?」
「ああ。で、帰ってくるまでアタシが見てたんだ。妹ちゃんはあの時も今も可愛いのにアンタときたら……」

 どことなく、兄と律の顔が穏やかである。思い出話の中に出てくる母を思い出しながら話しているからかも知れないなと妹は二人を見ていて思う。自分の記憶にある母の姿は台所で料理をしている姿である。

「まあ、それがきっかけだな。後はまさに芋づる式だ。芋への興味がどんどん膨れ上がっていった」
「え、それだけ?」
「うむ。きっかけなど、運命の切れ端など、そんなものだ」

 もっと大げさなエピソードがあるかと思っていた妹は拍子抜けした。

「妹よ。お前にもいつか分かる。手繰りよせて初めて分かるのだ。兄ちゃんの場合はそれが芋だった。それだけだ」

 そんなものかなあと妹は分かったような分からぬような顔をして「ふうん」と言いながら一つ伸びをした。

「おいコラ。アンタの運命の相手はアタシだろうが。浮気か?それは浮気と捉えていいのか?」
「芋に嫉妬するヤツがあるか!」
「おねえちゃん、意外とツンデレなんだねー」

 頬を膨らませる律の機嫌をとるのに、兄は大変な労力を要したという。



   ○   ○   ○



 センター試験も終わったある日。妹は束の間の休息と称してコタツを占有しており、兄は数日前から隙あらば台所に立っていた。なんでも、手間のかかる料理をしているとの事で、何を作っているのかと聞いても「美味いものだ」としか答えてくれなかった。律は変わらず助教授として働いており、家の家事全般は相変わらず兄の担当するところであった。律はできる事を手伝うと申し出ていたが、兄が頑として譲らなかった。

 今日の兄はどこか緊張しているように見える。
 いつも間延びした雰囲気を纏わせている兄が襟を正すのは芋料理を作っている時くらいのものだと妹は思っているので、これは非常に珍しいことであった。

「妹よ。今日は来客がある。一緒に夕食を食べるからな」
「んー、分かったー。誰が来るの?おねえちゃんの友達?」
「なぜ兄ちゃんの友人の可能性を疑わないのだ」
「お兄ちゃんに友達いるの?」
「いない」
「ほらね」
「ま、まあいい。お前も前に会っただろう。律の研究室の教授だ」

 大騒ぎをしてしまった学園祭の記憶を引き出し、妹は申し訳ない気持ちになった。確かにちらりと会ったような気がする。穏やかそうな人だった。

「ふうん。おねえちゃんが教授になるとか?」
「はっは、まだまだ早い。詳しくは夕食の時に話す」

 そう言うと兄は再び台所に戻り料理を再開するのだった。

 夕刻、律が大学から戻って来た。彼女は帰ってくるなりパイプを外してコタツに潜り、まだコタツに陣取っていた妹に話しかけた。

「寒いなあ。あ、聞いてくれよ妹ちゃん。今日、うちの教授がなんかそわそわしてたんだよ妙に」
「一緒に来なかったの?」
「は?」
「お兄ちゃんが、今日は教授と一緒にご飯食べるって言ってた」

 エプロンをつけた兄がリビングに来て、「おかえり」と声をかけた。

「今日、教授来るのか?」
「聞いていないか?自分で伝えると言っていたが」
「なんかそわそわしてんなあと思ってたけど。何も聞いてないぜアタシは。何かあんのか? あ、ついにアタシが教授に推薦されるのか?」
「自分でもまだ早いと分かっているだろう」
「だよなあ。なんだろ、わかんねえな。そういや、妙にかしこまった服だった気もする」

 その時、インターホンのチャイムが鳴った。それが教授だと分かると、妹と律は慌てて自室へと走った。そのままでいいと兄は言ったのだが、「そうもいくか、この芋!」「私、部屋着だもん!」と兄を揃って非難した。
 兄は玄関を開けて教授を出迎えた。なるほど確かに整ったスーツを着ている。いつもラフな格好でフィールドワークに出る教授を見ているならば、確かに違和感を感じるだろう。

「いつもの格好で良かったと思いますよ」
「いやあ、緊張してしまってね。律君に言い出すきっかけも掴めなかった」
「意外な一面ですね」
「いやあ、すまない」

 教授をリビングに案内し、兄はしばらく教授と話をした。しばらくすると律と妹もそろりそろりと戻ってきて、4人はコタツを囲む形で座った。ではさっそく食事の用意に、と兄が立ち上がる。
 何やら気恥ずかしいと感じているためか、律もすぐさま言った。

「ア、アタシも手伝おうか?」
「うぇっ!?」

 妹の口から妙な声が漏れる。確かにこの面子で教授と妹がリビングに残っても気まずいだろう。それを察したのか律は複雑そうな顔をしている。

「じゃあ私が手伝うよお兄ちゃん!」
「いや、ここは僕が手伝おうか」

 教授がおもむろに立ち上がる。「いや、教授は座っててくださいよ」と慌ててとめる律を見ながら、兄はコントのようだと愉快に感じていた。この場でただ一人、いつもの普段着である兄は静かに言った。

「では父さん・・・、お願いします。今日は前に言っていた海老芋ですよ」
「おお、それはいい。楽しみだ」

 男二人が台所へ消えていくのを、女性陣は固まって見ていた。視線はリビングと台所をつなぐ空間に固定されたままだった。

「今、お兄ちゃんなんて言ってた? おねえちゃん」
「聞き間違いかな、うん、きっと」
「そ、そうだよね!」

 二人は混乱するまま、料理が出来上がるのを待った。台所まで確かめに行く覚悟を決めるには、あまりにも唐突な話題であったため、二人は天気の話題もろもろでなんとか場を繋いでいた。

 兄が一日かけて用意していた食事が卓に並ぶ。それはどれも兄が得意とする料理であった。つまり、芋を使った料理だった。これだけ芋が並んでいれば惚れ薬としての効果は抜群だろう。見て驚いたのは妹である。よもや教授を惚れこませてしまおうと考えているのではないかと内心、気が気でなかった。
 料理と兄とを交互に見る妹の視線に気づき、兄は目で落ち着けと諭し、口を開いた。

「食事の前に紹介しよう。こちら、うちの父だ」
「え、と、あの……。え?」
「教授……が?」

 脳の回転が追い付いていない妹と、何を言っているのだこいつはと兄と教授を見る律。答えるように二の句を継いだのは教授であった。

「正しくは元・父だけれどもね。僕は三行半を突き付けられた人間だよ」

 そう言って、教授は、いや兄妹の父は遠い目をした。しかしすぐに視線を料理に移す。

「まあまあ、話は食べながらだ君たち。冷めてしまってはもったいない」

 箸をとり、教授は小皿に乗った料理を取り分けて一口食べ、「うん、実にうまい」と言った。それを皮切りにめいめいが食事を始める。

 父はゆっくりと語った。

 父もまた、兄や律のように食を愛する人間である。それは今も昔も変わることはない。そして父は結婚を機に、それらの食へのこだわりを捨てる決意をした。

「僕も家庭を持ったならば、まして親となったならば、だよ。気軽にうまいものを食べに出てはいけないと思った」

 父は己を捨てて家庭を築くことを選んだ。

「しかしそれがいけなかったらしい。君らの母の目には、無理をしている事がばれていた」

 もとより風来坊の気質のある父である。それは兄も、同じ研究室にいる律もよく知っていた。

「もう20年近くも前になるかなあ。それなりに学者として頑張ってはいたのだがね。どうにもこのままでは大成しないらしかった。でもね、それでもいいと思っていたのだよ。僕と、あいつと、息子と。お腹の中の娘。4人で暮らしていけたらそれで良いと」

 静かに、静かに語られる話に、三人は聞き入っていた。父の声には、どこか後悔の念があるように感じられた。

「しかしね。妻に怒られてしまった。やりたいことをやらない僕など、芋以下の存在だと」

 そうして父は叩き出されるように食民俗学へと逃げ込み、その研究に没頭していった。家庭の事を忘れるほどに研究の成果は上がり、教授としての地位は高まっていった。

「心のどこかで後悔していたのだろうね。僕は家庭を捨てた人間だと、自分を卑下し続けた……」
「それでいいでしょう、別に」

 兄が不意に口を挟む。里芋の煮っ転がしをもぐもぐとやりながら兄はいつも通り平然としていた。

「家族の形は、人それぞれです」
「しかしだね……」

 言いよどむ父に、妹が言葉を紡ぐ。

「私は、お父さんにいて欲しかったよ……。どうして、お母さんが死んじゃった時に言ってくれなかったの?」
「済まない。今更、家族面などできようはずもないと……」

 父は俯いた。そして母を亡くした年、父はちょうど日本にはいなかった。食材を求めて諸外国を巡り、戻ってきてしばらくしてからその事実を人づてに聞いた。
 そして兄は遺品の整理や役所への各種手続きを済ませる中で、自らの父親がかつての恩師である教授と同一人物であることを知ったのだった。

「アンタ、何で妹ちゃんやアタシに黙ってたんだよ。言ってくれたってよかっただろう」

 律の目が非難の色を帯びている。兄はこれまた平然と山芋の短冊を口へと運んだ。

「何かワケがあるのだろうと思ってな。実の父とは言え、一人の人間だ。夫婦間の問題にやすやすと立ち入るものではない」
「でもそれにしたって……」

 納得がいかないと言ったように律は乱暴にじゃがいもの天麩羅をかじる。

「僕が黙っていて欲しいとお願いしたんだよ。やはり、罪悪感の方が大きくてね……」
「罪悪感は煮ても焼いても食えんでしょう。今日、ここに父として来てくれた。俺は、それでいいと思っています」
「……ありがとう。本当に……。僕はなんと言えばいいのか……」

 そして、兄は周りをゆっくりと見回した。

「律よ。父が嘘をついていると思うか?」
「……あっ」

 弾かれたように律が言い、口元へ手をやる。律はもう、家の中でパイプを銜えていないのだ。つまり、父の懺悔は、悔恨の言葉は、何一つ飾りのない本心なのだ。

「妹よ。父が惚れているように見えるか?」
「見え……ない」

 それはつまり、兄が父を家族だと認めている証拠に他ならなかった。芋を使った惚れ薬は家族には効き目がないのだから。

「俺はな、思うのだ。家族の形は、一つではないと」

 兄は思っていた。母が亡くなってから発現したであろうこの奇妙な能力は、今日、この日のためにあったのではないかと。母が兄妹二人と律に遺してくれたものなのではないかと。
 もちろん、科学的根拠はないし、実際にそれらがに証明されている訳でもない。しかし、これらの力が、兄妹と父を繋ぐ絆のように思えて仕方がなかったのだ。

「芋ばかり食う旦那がいてもいいではないか。魚を寵愛する妻がいてもいい。一個小隊を率いる妹がいてもいいだろう。ならば風来坊の父の何が悪い」

 兄は笑った。そして言った。

「これがうちの家族だ。異論はあるか。あればことごとく却下だ」
「はあ。アンタ、ほんとに屁理屈ばっかりだな、もう」

 律は仕方がないというように首を振った。妹も、大きく息を吐き出してそれに続く。二人の顔は穏やかである。

「そうだね。お兄ちゃんが言うならしょうがない」

 父は静かに一筋、涙をこぼした。

「君は本当に昔の妻にそっくりだ」



   ○   ○   ○



 穏やかに夕食が進む中、兄は「今日のメインです」と台所から人数分の小鉢を運んできた。それは兄が数日かけて用意していた料理だった。

「これは……"いもぼう"だね」
「ええ、前に言っていた海老芋が手に入ったので」

 いもぼう。海老芋と棒鱈を炊き込んだ料理であり、古都・京都の冬の名物としても有名なものである。兄がこれを作ったのには訳があった。

「出合いものか……」
「え、っと。お父、さん。出合いものって?」
「無理はしなくてもいいぞ、妹よ」
「私なりに頑張ってるんだからお兄ちゃんは黙ってて!」

 出合いもの。季節の食材の取り合わせの中でも、特に相性の良い海の幸と山の幸を材料に使った料理であり、調理の際にお互いがお互いの味を引き出す良い組み合わせのことを言う。

 特にこのいもぼうは乾燥した棒鱈を数日かけて水でもどし、さらに数日煮込むなど、手間暇をかけて作られる料理である。

「あー、こないだ北海道で買った棒鱈か。やっと食わせてくれるのか」
「棒鱈は確かに北海道の特産物だ。しかしこの料理は京都の名物だ。なぜだか分かるか、妹よ」
「え、知らない。なんだろう、京都で魚を食べたかったから?」
「はっは、30点やろう」
「ゼロじゃないんだ、やった」

 棒鱈は、鱈を天日で干し上げたものであり、保存に向いている食材である。平安の時代に都への献上品として棒鱈が京都に持ち込まれたのがその始まりであった。
 乾燥させたことにより旨味は凝縮され、より深い味わいをもたらす。炊き合わせる際にも、棒鱈から出る成分が芋の煮崩れを防ぎ、また海老芋から出る灰汁が棒鱈の身を柔らかくする効果があるのだ。非常に理にかなっている食材の組み合わせなのである。
 この食材の組み合わせの妙により、いもぼうのことを「夫婦めおと炊き」と呼ぶ地域もあるのだ。それらの事を簡潔に兄は語った。

「律と一緒になるのに、これほど良い組み合わせもないでしょう。どうしても父さんにこれを食べて欲しかった。この小鉢のように、良い所を合わせる夫婦でありたい」

 父は「うん、うん」と涙声になりながら一口食べた。そして小さく、掠れた声で「うまいよ、これは。うまい」と呟いた。

「僕は、妻の気持ちを分からぬイモだった。二人にはその心配はいらないね」

 涙を拭って父は笑った。兄は胸を張って言う。

「父子揃ってイモ。いいではないか。俺はイモであることを誇りに思うぞ」
「そんなの、お兄ちゃんだけだよ」
「根っからの芋野郎だな、アンタは本当に」
「芋に根が生えて何が悪い。芋を愛するが故に兄なのだ! 兄が思う故に芋はあるのだ!」
「いいから食うぞほら。ご高説はいいから冷める前に食わせろ」
「あ、すまん。食ってくれ食ってくれ」

 兄は高速で手のひらを返し、四人は朗らかにいもぼうを食べた。その日の食卓は遅くまで団欒の気配が佇んでいたのだった。



   ○   ○   ○



 春が訪れ。

 教授は変わらず大学で教鞭をとり、気が向いた時にふらりとうまいものを食いに出る。
 助教授は魚介類を愛で、研究室の学生たちはめいめいに好きな食材を研究する。

 妹は大学に合格し、義姉とともに毎朝大学へと通っている。

 兄は変わらず無職である。
 妹が大学に入学し、自らも所帯を持ったことをよい機会とみて再び定職に就こうと考えていた。現段階では状況は芳しくないが、兄は変わらず兄のままである。

 ――芋が芽吹くには時間がかかる。しかし大丈夫だ。俺は冬を越えて栄養を蓄えたイモだ。家族という良質の土壌を得た今、俺に怖れるものはない。

 兄は変わらずイモ野郎であり、イモ兄貴、イモ男爵、ポテト伯爵、ポテ男である。妻を始め、妹も父もそれを認めながら家族そろって暮らしている。
 本人たちがいいと言っているならば、それでいいのである。普通の家庭と違ってもいいのである。家族の形など、芋のように不揃いで、てんでばらばらなものなのだから。
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