6 / 75
第一章 Side A
6 エリーといなくなった王太子
しおりを挟む
エリーが城でフェイビアンやブラッドリーと知り合ったのは9歳のときだった。父がエリーが妻に似て優秀であると自慢したのを国王陛下が聞きつけて、フェイビアンの学友の一人として城に呼ばれたのが理由だった。
実際にエリーはアーチボルト家の子にしては礼儀正しく、物覚えもよかった。少し遅れていた教育もあっという間に二人に追い付いて一緒に学ぶようになったし、鍛錬に関しては二人よりもはるかに強かった。
そんなこんなで学友として認められたエリーは夏はアーチボルト領で、冬は王都で過ごすという生活を送っていた。
エリーが10歳の冬のこと、アーチボルト領を含むブルテン東部で質の悪い風邪が流行し、多くの子供や老人、体の弱い女性が亡くなった。その中にはエリーの母も含まれた。
当時、エリーと既に海馬部隊の一員であった長兄・フレデリックは王都におり、病床の母の命令でフレデリックだけがアーチボルト領に呼び戻され、まだ子供であったエリーは王都にとどめられた。
アーチボルト家の頭脳であった母は、その仕事を子供の中では頭脳派であるフレデリックとエリーに引き継いでいた。フレデリックが母に何かあった時のために呼び戻されるのは当然であった。
エリーはただ一人、王都で母の回復をずっと祈っていた。
そんな時にお会いしたのが、当時王太子であったセオドア殿下である。
セオドアはフェイビアンとそっくりな金髪と水色の瞳をしたハンサムな青年だった。当時は17歳で、一人で王都に残されたエリーを心配して訪ねてきてくれるほどに優しい人だった。
18歳だった長兄のフレデリックはセオドアと知り合いであったらしく、エリーのことを聞いていたらしい。
「侯爵夫人が回復するように祈っているよ。病気の治療法を今、調べてもらっているところだから、きっと何か見つけてくれるよ。」
身近に感染者がおらず、どこか他人事だったフェイビアンやブラッドリーと違い、セオドアは本当に病気の蔓延に心を痛めているようだった。当時から一部の国政に携わっていた彼は、すぐに人の往来を停止して、医療団を派遣してくれたらしい。
結局、母は回復することはなかった。母の死に目にも会えず、葬儀にも参列できなかったエリーを忙しい合間にもセオドアは気にかけてくれた。
その優しい王太子にエリーがなついたのは当然だった。
春が来ると流行り病は収まり、医療団が治療薬を見つけたことで翌年からは発生しても多くの死者も出さずに済んでいる。
翌年の夏、セオドアは海軍に視察にやってきた。案内を務めた長兄のフレデリックにわがままを言ってエリーも二人と一緒に海馬部隊の演習を見学した。
「アーチボルト侯爵の海馬はやはりひと際大きいのだね。」
「ええ。父のオリヴィアは歴代でも群を抜いて大きいです。」
「フレデリックの海馬も白かったが、白い海馬はアーチボルト侯爵家占有なのかい?」
「まさか!弟妹の海馬はグレーですよ。白い海馬は珍しいですが、野生にもちらほらと見られますよ。一番多いのはグレーですが、その濃淡には個体差があります。」
「あの体の大きさは使役したときからか?海軍で大きく育つのか?」
「父の海馬はもともと大きかったと聞いていますよ。でも使役してからも成長したようです。」
なんて話をしながらのどかに海馬部隊の演習を見ていた。
この視察の後だ。
セオドアが『海馬部隊の弱点を見つけた』と言い出したのは。
セオドアは情報が洩れることを恐れて、誰にも自分が見つけた弱点を言わなかった。その結果、セオドアが行方不明になった今、弱点はなかったものとみなされてなんの対策もなされていない。
ーーーー
「あの日、王太子殿下が視察したのは海馬部隊の行軍演習と海馬の世話の様子だけです。そこから危機感を抱くような弱点が見つけられるはずですよね。」
「それはそうだが、エリー。俺もあの日から毎日考えているが、さっぱりわからない。…殿下はヒントの一つも残していかれなかったからな。」
苦々しい顔をしているのは長兄のフレデリックだ。父と同じ真っ赤な髪にきれいに筋肉のついた長身の持ち主である。現在24歳で海軍の王都駐在部隊を率いている少将である。
数か月に一度、報告のために海軍基地に帰ってきている。もちろん海馬をつれて、だ。
王都は入り組んだ湾に面しており、港を持っている。その一部に王都駐在部隊が拠点を構えているわけだ。
「まあ、俺はもう海馬部隊にどっぷりつかっているからな。お前ならもしかしたらわかるかもしれない。根を詰める必要もないが、頭の片隅には置いておいてくれ。」
「兄上はどんなことを考えました?」
二人は海軍基地にある海馬の訓練スペースの波止場にて海馬の弱点について議論を重ねる。
「まあ、まずは海馬の個体差だな。複雑な指示を理解できる頭のいいものから、馬と同程度にしか操れないものまでいる。」
「じゃあ騎馬兵の弱点がそのまま当てはまるのでは?防御力が弱いとか、先制攻撃に弱いとか。」
「しかし、海馬部隊は先制攻撃の部隊だ。あまり問題にならない弱点だ。魔女の森に行くほどじゃないだろう。」
「知能差があるのに軍隊行動がとれるのは、使役されている兵によく従っているからですよね…。」
そこで遠泳に出ていた海馬一頭が背に兵を乗せて訓練スペースに入ってきた。兵の髪は目立つ赤色をしており、ぐんぐんとこちらに近づいてきて止まった。
降りてきた兵は、エリーのすぐ上の兄であるウォルターである。
「兄上、お勤めご苦労様です。」
「ああ、ウォルター。一般兵に昇格したんだったよな?おめでとう。お祝いが遅くなって悪いな。」
「兄上はお忙しいですから、仕方ありませんよ。で、エリーはここでさぼりかよ。」
ウォルターは白い海馬を使役したフレデリックを尊敬している。エリーとの態度の差はいつものことだ。
「違います。サムの水泳訓練中です。」
「サム。ああ、お前の犬か。」
ウォルターは嘲笑うようににやりとした。
「兄上は見ましたか、エリーの犬を。」
「ああ。賢い犬だな。驚いたよ。」
フレデリックがサムを褒めるので、ウォルターはむっとしたようだ。
「賢いかもしれませんが、犬は犬ですよ?海馬部隊を受け継いできたアーチボルト家の一員として恥ずかしいと思いませんか?」
「もはや海馬部隊はアーチボルト家だけのものではないだろう?血をひかない海馬兵も増えている。別にアーチボルト家が海馬部隊に執着する必要もないだろう。すでに俺たちがいるわけだしな。」
自分の意見が受け入れられなかったウォルターはますますむっとする。そこはエリーの兄歴もウォルターの兄歴も長いフレデリックがしっかりとフォローする。
「お前はちゃんと海馬を使役したんだから、そのことを誇りに思って訓練に励めばいい。エリーにはエリーの道があるだけだ。」
そこにぐんぐんと海中を白い影が泳いでくる。そして大きな波をたててエリー達の目の前に白いずぶ濡れの犬を背中にのせた白い海馬が顔を出した。
波止場に海水が広がり、海に近いところに立っていたウォルターはずぶ濡れになっていた。
「サム、おかえり。」
海馬の背からずぶ濡れのサムが飛び降りて、ぶるぶると体をふるってウォルターにダメ押しで水をかけた。ウォルターが目を吊り上げて怒ろうとしたところをフレデリックが引き留める。
「ウォルター、離れろ。メーガンも…。」
白い海馬、フレデリックのメーガンも馬部分を大きく震わせて水を飛ばした。ウォルターとサムのにおいを興味津々で嗅いでいたウォルターの海馬の顔面に派手に水が飛びさらにびしょぬれになることとなった。
実際にエリーはアーチボルト家の子にしては礼儀正しく、物覚えもよかった。少し遅れていた教育もあっという間に二人に追い付いて一緒に学ぶようになったし、鍛錬に関しては二人よりもはるかに強かった。
そんなこんなで学友として認められたエリーは夏はアーチボルト領で、冬は王都で過ごすという生活を送っていた。
エリーが10歳の冬のこと、アーチボルト領を含むブルテン東部で質の悪い風邪が流行し、多くの子供や老人、体の弱い女性が亡くなった。その中にはエリーの母も含まれた。
当時、エリーと既に海馬部隊の一員であった長兄・フレデリックは王都におり、病床の母の命令でフレデリックだけがアーチボルト領に呼び戻され、まだ子供であったエリーは王都にとどめられた。
アーチボルト家の頭脳であった母は、その仕事を子供の中では頭脳派であるフレデリックとエリーに引き継いでいた。フレデリックが母に何かあった時のために呼び戻されるのは当然であった。
エリーはただ一人、王都で母の回復をずっと祈っていた。
そんな時にお会いしたのが、当時王太子であったセオドア殿下である。
セオドアはフェイビアンとそっくりな金髪と水色の瞳をしたハンサムな青年だった。当時は17歳で、一人で王都に残されたエリーを心配して訪ねてきてくれるほどに優しい人だった。
18歳だった長兄のフレデリックはセオドアと知り合いであったらしく、エリーのことを聞いていたらしい。
「侯爵夫人が回復するように祈っているよ。病気の治療法を今、調べてもらっているところだから、きっと何か見つけてくれるよ。」
身近に感染者がおらず、どこか他人事だったフェイビアンやブラッドリーと違い、セオドアは本当に病気の蔓延に心を痛めているようだった。当時から一部の国政に携わっていた彼は、すぐに人の往来を停止して、医療団を派遣してくれたらしい。
結局、母は回復することはなかった。母の死に目にも会えず、葬儀にも参列できなかったエリーを忙しい合間にもセオドアは気にかけてくれた。
その優しい王太子にエリーがなついたのは当然だった。
春が来ると流行り病は収まり、医療団が治療薬を見つけたことで翌年からは発生しても多くの死者も出さずに済んでいる。
翌年の夏、セオドアは海軍に視察にやってきた。案内を務めた長兄のフレデリックにわがままを言ってエリーも二人と一緒に海馬部隊の演習を見学した。
「アーチボルト侯爵の海馬はやはりひと際大きいのだね。」
「ええ。父のオリヴィアは歴代でも群を抜いて大きいです。」
「フレデリックの海馬も白かったが、白い海馬はアーチボルト侯爵家占有なのかい?」
「まさか!弟妹の海馬はグレーですよ。白い海馬は珍しいですが、野生にもちらほらと見られますよ。一番多いのはグレーですが、その濃淡には個体差があります。」
「あの体の大きさは使役したときからか?海軍で大きく育つのか?」
「父の海馬はもともと大きかったと聞いていますよ。でも使役してからも成長したようです。」
なんて話をしながらのどかに海馬部隊の演習を見ていた。
この視察の後だ。
セオドアが『海馬部隊の弱点を見つけた』と言い出したのは。
セオドアは情報が洩れることを恐れて、誰にも自分が見つけた弱点を言わなかった。その結果、セオドアが行方不明になった今、弱点はなかったものとみなされてなんの対策もなされていない。
ーーーー
「あの日、王太子殿下が視察したのは海馬部隊の行軍演習と海馬の世話の様子だけです。そこから危機感を抱くような弱点が見つけられるはずですよね。」
「それはそうだが、エリー。俺もあの日から毎日考えているが、さっぱりわからない。…殿下はヒントの一つも残していかれなかったからな。」
苦々しい顔をしているのは長兄のフレデリックだ。父と同じ真っ赤な髪にきれいに筋肉のついた長身の持ち主である。現在24歳で海軍の王都駐在部隊を率いている少将である。
数か月に一度、報告のために海軍基地に帰ってきている。もちろん海馬をつれて、だ。
王都は入り組んだ湾に面しており、港を持っている。その一部に王都駐在部隊が拠点を構えているわけだ。
「まあ、俺はもう海馬部隊にどっぷりつかっているからな。お前ならもしかしたらわかるかもしれない。根を詰める必要もないが、頭の片隅には置いておいてくれ。」
「兄上はどんなことを考えました?」
二人は海軍基地にある海馬の訓練スペースの波止場にて海馬の弱点について議論を重ねる。
「まあ、まずは海馬の個体差だな。複雑な指示を理解できる頭のいいものから、馬と同程度にしか操れないものまでいる。」
「じゃあ騎馬兵の弱点がそのまま当てはまるのでは?防御力が弱いとか、先制攻撃に弱いとか。」
「しかし、海馬部隊は先制攻撃の部隊だ。あまり問題にならない弱点だ。魔女の森に行くほどじゃないだろう。」
「知能差があるのに軍隊行動がとれるのは、使役されている兵によく従っているからですよね…。」
そこで遠泳に出ていた海馬一頭が背に兵を乗せて訓練スペースに入ってきた。兵の髪は目立つ赤色をしており、ぐんぐんとこちらに近づいてきて止まった。
降りてきた兵は、エリーのすぐ上の兄であるウォルターである。
「兄上、お勤めご苦労様です。」
「ああ、ウォルター。一般兵に昇格したんだったよな?おめでとう。お祝いが遅くなって悪いな。」
「兄上はお忙しいですから、仕方ありませんよ。で、エリーはここでさぼりかよ。」
ウォルターは白い海馬を使役したフレデリックを尊敬している。エリーとの態度の差はいつものことだ。
「違います。サムの水泳訓練中です。」
「サム。ああ、お前の犬か。」
ウォルターは嘲笑うようににやりとした。
「兄上は見ましたか、エリーの犬を。」
「ああ。賢い犬だな。驚いたよ。」
フレデリックがサムを褒めるので、ウォルターはむっとしたようだ。
「賢いかもしれませんが、犬は犬ですよ?海馬部隊を受け継いできたアーチボルト家の一員として恥ずかしいと思いませんか?」
「もはや海馬部隊はアーチボルト家だけのものではないだろう?血をひかない海馬兵も増えている。別にアーチボルト家が海馬部隊に執着する必要もないだろう。すでに俺たちがいるわけだしな。」
自分の意見が受け入れられなかったウォルターはますますむっとする。そこはエリーの兄歴もウォルターの兄歴も長いフレデリックがしっかりとフォローする。
「お前はちゃんと海馬を使役したんだから、そのことを誇りに思って訓練に励めばいい。エリーにはエリーの道があるだけだ。」
そこにぐんぐんと海中を白い影が泳いでくる。そして大きな波をたててエリー達の目の前に白いずぶ濡れの犬を背中にのせた白い海馬が顔を出した。
波止場に海水が広がり、海に近いところに立っていたウォルターはずぶ濡れになっていた。
「サム、おかえり。」
海馬の背からずぶ濡れのサムが飛び降りて、ぶるぶると体をふるってウォルターにダメ押しで水をかけた。ウォルターが目を吊り上げて怒ろうとしたところをフレデリックが引き留める。
「ウォルター、離れろ。メーガンも…。」
白い海馬、フレデリックのメーガンも馬部分を大きく震わせて水を飛ばした。ウォルターとサムのにおいを興味津々で嗅いでいたウォルターの海馬の顔面に派手に水が飛びさらにびしょぬれになることとなった。
3
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~
玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。
その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは?
ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。
なぜか処女懐胎して婚約破棄されました
村雨 霖
恋愛
侯爵令嬢ユリエル・ローデント、16歳。ある夜、王宮にて開かれた夜会でユリエルの妊娠が発覚した。そのため婚約者だった第二王子シェランから不貞を疑われ、その場で婚約を破棄されてしまう。しかしユリエルは子どもができるような行為どころか、キスすらしたことがなかったのだ。
「あり得ない、なぜこんなことに……」
苦悩するユリエルの前に現れたのは、夜会で意図せず妊娠の事実を暴くことになった王国随一の魔導士だった……
※カクヨム様と小説家になろう様にも掲載しています。
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
【本編完結】子持ち婿入り伯爵様の後妻になりました~ドラ息子派閥から旦那様ごと嫌われてますがそれなら貰ってもいいですよね!~【番外編開始】
海野璃音
恋愛
[※HOT入りが嬉しかったので打ち切り用にカットしたネタを番外編として更新しようと思います。お付き合いいただけると嬉しいです。]商家の成り上がり男爵家の跡取り娘だったはずだけど、前妻の借金が発覚した婿入り伯爵様の後妻になる事になった私。親子の差ほど歳も離れているし、前妻のドラ息子付き。普通に考えたらお断り物件な伯爵様だけど、繊細で幸薄そうな顔がものすごくタイプだった。余計なコブがついているけど、伯爵家も領地もドラ息子に押しつけて好みの旦那様と悠々自適な生活を目指すべく頑張ります!【そこそこ気の強いヒロインが幸薄儚げな年上の旦那様を攫って幸せにする気満々で挑みつつ、無自覚に甘やかされているお話です】
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
無理やり『陰険侯爵』に嫁がされた私は、侯爵家で幸せな日々を送っています
朝露ココア
恋愛
「私は妹の幸福を願っているの。あなたには侯爵夫人になって幸せに生きてほしい。侯爵様の婚姻相手には、すごくお似合いだと思うわ」
わがままな姉のドリカに命じられ、侯爵家に嫁がされることになったディアナ。
派手で綺麗な姉とは異なり、ディアナは園芸と読書が趣味の陰気な子爵令嬢。
そんな彼女は傲慢な母と姉に逆らえず言いなりになっていた。
縁談の相手は『陰険侯爵』とも言われる悪評高い侯爵。
ディアナの意思はまったく尊重されずに嫁がされた侯爵家。
最初は挙動不審で自信のない『陰険侯爵』も、ディアナと接するうちに変化が現れて……次第に成長していく。
「ディアナ。君は俺が守る」
内気な夫婦が支え合い、そして心を育む物語。
婚姻初日、「好きになることはない」と宣言された公爵家の姫は、英雄騎士の夫を翻弄する~夫は家庭内で私を見つめていますが~
扇 レンナ
恋愛
公爵令嬢のローゼリーンは1年前の戦にて、英雄となった騎士バーグフリートの元に嫁ぐこととなる。それは、彼が褒賞としてローゼリーンを望んだからだ。
公爵令嬢である以上に国王の姪っ子という立場を持つローゼリーンは、母譲りの美貌から『宝石姫』と呼ばれている。
はっきりと言って、全く釣り合わない結婚だ。それでも、王家の血を引く者として、ローゼリーンはバーグフリートの元に嫁ぐことに。
しかし、婚姻初日。晩餐の際に彼が告げたのは、予想もしていない言葉だった。
拗らせストーカータイプの英雄騎士(26)×『宝石姫』と名高い公爵令嬢(21)のすれ違いラブコメ。
▼掲載先→アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる