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第五章 Side A
6 エリーと海軍の秘密兵器
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え、待って、なに、なにこれ。
エリーの目の前にあるのはそこそこに鍛えられた、男性の裸の胸である。
「エリーが死ぬかと思った…。」
知らない声だ。だけど匂いはどこか知ってる気がする。いやいや何、私匂い嗅いでるの?エリーの内心は過去にないほどのパニック状態だ。
とりあえず目の前の胸を押して顔を上げるとそこには見たことのない若く美しい顔があった。
真っ白な短い髪にうるうるとした黒い瞳、通った鼻筋に、何かを思い出しそうな気がする。
「******!」
声をあげたのはエリーの剣を腹に刺したままの先ほどの若兵だ。マントを脱ぎ捨てて剣を拾い上げてよろよろと立ち上がると、こちらに剣をつきつけて喚き散らしている。
「*********!!」
「うるさい。」
白髪の青年は左手を敵兵に向けてかかげた。すると突然に突風が放たれ、敵兵は船から遠くに飛んでいてしまった。その場には大仰な黒いマントだけが残った。
「…な!?」
「エリー?」
「あなた…、誰?何者?」
「…わからないの?」
悲しそうな顔に、先ほど犬のくせに顔をへの字にしてみせたサムを思い出した。はっとしてあたりを見渡すと、敵も味方も呆然として戦闘が止まり、皆こちらを見ていた。
白い愛犬の姿を探すがどこにも見当たらない。…死体もない。
悲しそうな顔でこちらを見下ろす青年を見上げる。白髪、黒い瞳、通った鼻筋の美形…、オス…、まさか…。
「………サム?」
青年の顔がぱっと明るくなる。
「そうだよ。」
「…え?いやいやいやいやうそうそうそうそ。」
「エリーが混乱してるの初めて見た。」
「だって、サムはかわいいジャーマン・スピッツ犬でこんな人型じゃあ…。」
サムだと名乗る青年を上から下まで見て、下の方でエリーの視線はぴたりと止まった。
青年は、全裸だった。
ーーーー
エバンズ少将はその後すぐに正気を取り戻し、遅れて参戦した特殊部隊の手も借りてその場を鎮圧した。
乗り込んできた敵兵は全員が戦闘不能となり、謎の超快速船も手中に収めた。今後の戦いに備えてその仕組みが分析されるだろう。
今はそれよりも、だ。
「彼が、アーチボルト二等の、相棒の、犬、だと。」
サムだと名乗る青年はその場に残されていた黒いマントをはおって、とりあえず全裸を隠した状態で頬の怪我を手当てするエリーの隣に立っていた。
その背はエリーよりもやや高い。
エバンズ少将の威圧的な視線にもたじろがない。むしろ不機嫌に睨み返している。思えば犬のサムも少将に対しては態度が悪かった。犬のころは可愛いだけだったが、人型でそれをやると不敬である。
「それで、先ほどの力はなんなんだ?敵兵を剣も使わずに切り殺し、はるか遠くに吹き飛ばしたな?」
「あれは”風魔法”だ。」
「魔法?お前は魔法使いだったのか?そもそも人型と犬型、どちらが本物なんだ?」
「どちらも本物だよ。」
「どういうことだ?」
「俺は、大陸の内地にある魔法大国ルクレツェンの狼獣人一族・ウォー家の出身だ。獣人の能力で…、犬に変身できる。魔法を学んでいるから、魔法も使えるんだよ。」
「なぜそのような経歴の者がアーチボルト二等の犬をやっていたんだ?」
「…それはプライベートだけど、話さなきゃいけないの?」
混乱が落ち着いたエリーはサムだと名乗る青年の話を反芻していた。自分は狼獣人で魔法使い。ルクレツェン魔法大国からやってきた。
…サムがエリーのところにやってきたのは15歳の夏だ。エリーは今、20歳である。サムだと名乗る青年は見たところ同じぐらいの年だ。
左頬の傷に特別な塗り薬を塗布して、ガーゼで覆って手当ては完了した。
「サム…だと名乗る人。」
サムだと名乗る青年は名前を呼ばれて喜んで振り返ったが、付け加えられた言葉で不機嫌そうな顔になる。
「あなた何歳なの?」
「来月20歳になるから、エリーと同い年だ。」
「そう…、じゃあ14歳で何らかの理由で祖国を出てブルテンに来ていたのね。なんでずっと犬のふりをしていたの…?」
エリーの目つきが鋭くなる番だ。「そ、それは…。」と青年は言い淀んでいる。
「ブルテン海軍をスパイしに来たの?」
「ち、違う!」
「じゃあ、何で犬の姿で五年間も?」
「…犬じゃないと追い出されると思ったんだ。」
サムだと名乗る青年はぽつりぽつりと身の上を話し出した。危険はなさそうだと判断したエバンズ少将は「後で報告しろ」とエリー達を残して軍の指揮へと戻って行った。
ーーーー
「俺は一族でも優秀な力を持っていて、魔法属性も二つも持っていたし、早くから獣化もできて、次期当主候補だとみなされていたんだ。」
「あなたは当主の息子なの?」
「いや、俺は当主の甥だけれど、獣人は実力主義だから力が一番強い者が当主になるんだ。」
サムだと名乗る青年は「俺が初めて獣化したのは三つの年だった。」と話し始める。
「真白な子犬に変化して、親族中が大騒ぎしたらしい。真っ白な毛並みも珍しいし、きっと成長すれば立派な狼になるって。」
そういえば、青年は狼獣人だと名乗っていたが、変化後の姿はどう見ても犬である。
「俺の叔父上は立派なグレイウルフに変化できるんだ。体長は2m近いね。10歳の時点で牙も爪も鋭い成獣に近い姿になっていたけれど、俺の変化した姿はいつまでも可愛さが抜けなくて、親族中が変化は早いのに成長は遅いなと首をひねっていたんだよ。」
サムの体長は1mといったところだ。
「俺が13歳の時に、当主の息子で、俺の従弟が獣化に成功したんだ。」
「獣化って獣人なら誰でもできるものなの?」
「いや、力の強い個体にしかできないよ。その当時は当主と俺しかできなかったんだ。でも当時9歳だった従弟がついに獣化に成功して、その姿が叔父上とそっくりで、すでに俺より大きかったんだ。
それで、え、おかしくない?って空気になってさ。」
青年はため息をついた。
「俺、狼じゃなくて、犬だったんだよ。そこから扱いが一変して、次期当主から犬に変化する恥さらしって呼ばれるようになったんだ。辛くて家を飛び出したんだ。ずっと国外に出てみたいと思っていたから、魔法を駆使してヒューゲンにわたって、そこからブルテンに。でも、運悪く船が事故を起こして海に落とされたところを海馬に追い回されてさ。なんとか陸地に逃げ込んで魔力切れで倒れていたところをエリーに保護されたってわけ。」
一気にまくしたてる青年をエリーはまだ疑いの目で見ていた。つらい過去であることは彼の様子からもうかがい知れるが、スパイでないと断言できるほどの情報でもない。
「で、何で犬のふりをしていたの?」
「そ、それは、犬じゃないと追い出されると思ったんだ。」
「なんで?」
「だ、だって、当時、俺は14歳だったんだ!犬に変化するのは劣等種である証拠だと思っていたんだ!可愛い犬だと思っていたものが、実は狼になりそこなったできそこないの犬だってわかったら、下手したら殺されるかもって!」
…、それは確かに、当時にサムの正体がわかっていれば、間違いなく国に報告されただろう。間者だと疑われれば殺されていた可能性もある。青年の言ったような理由で殺されることはなかっただろうが、別の疑いで殺されていたかもしれない。
「俺、エリーと海軍のために働いてきたじゃないか!落ち込んでる兵を元気にしたりしてきただろう?」
「…あれも魔法なの?」
「あれは、”闇魔法”なんだ。ウォー一族が伝統的に継承してきた魔法なんだよ。」
「そういえば、魔法属性を二つ持っているって言ってたわね。闇と風ってことね。」
青年はスパイの容疑を晴らそうと必死になっていた。
「なんで、今、人型に戻って見せたの?ずっと犬のふりをしていくつもりだったのでしょう?」
「そ、それは、君が…。」
「私?」
「エリーが殺されそうになっていたからだよ!闇魔法じゃ間に合わなかったから風魔法を使おうとして…。強い風魔法は人型じゃないと使えないから…。」
その言葉に嘘はないのだろう。何より、話せば話すほど、なぜか青年が犬のサムとシンクロして、エリーにはこれ以上問い詰めることが辛かった。でも、最後にこれだけは、と視線に力をこめる。
「じゃあ、なぜあなたはブルテン語を話せるの?犬の間に身に着けたの?」
「いや、ルクレツェンには独自の言語がないんだ。もともと、ヒューゲン語やオールディー語、ロマーノ語を話すんだけれど、オールディー語とブルテン語は近いだろう?それで、少し勉強したことがあって…。」
確かにブルテン語とオールディー語は語感も文法もよく似ている。オールディー語を日常的に使っていたのならブルテン語の習得は難しくない。
「誓うよ。俺は海軍の情報をどこにも流してない。これからも海軍のために働く。だから…、エリーのそばに置いてほしい。」
その顔は完全にサムだった。白い頭を思わず撫でてしまったことは許してほしい。
エリーの目の前にあるのはそこそこに鍛えられた、男性の裸の胸である。
「エリーが死ぬかと思った…。」
知らない声だ。だけど匂いはどこか知ってる気がする。いやいや何、私匂い嗅いでるの?エリーの内心は過去にないほどのパニック状態だ。
とりあえず目の前の胸を押して顔を上げるとそこには見たことのない若く美しい顔があった。
真っ白な短い髪にうるうるとした黒い瞳、通った鼻筋に、何かを思い出しそうな気がする。
「******!」
声をあげたのはエリーの剣を腹に刺したままの先ほどの若兵だ。マントを脱ぎ捨てて剣を拾い上げてよろよろと立ち上がると、こちらに剣をつきつけて喚き散らしている。
「*********!!」
「うるさい。」
白髪の青年は左手を敵兵に向けてかかげた。すると突然に突風が放たれ、敵兵は船から遠くに飛んでいてしまった。その場には大仰な黒いマントだけが残った。
「…な!?」
「エリー?」
「あなた…、誰?何者?」
「…わからないの?」
悲しそうな顔に、先ほど犬のくせに顔をへの字にしてみせたサムを思い出した。はっとしてあたりを見渡すと、敵も味方も呆然として戦闘が止まり、皆こちらを見ていた。
白い愛犬の姿を探すがどこにも見当たらない。…死体もない。
悲しそうな顔でこちらを見下ろす青年を見上げる。白髪、黒い瞳、通った鼻筋の美形…、オス…、まさか…。
「………サム?」
青年の顔がぱっと明るくなる。
「そうだよ。」
「…え?いやいやいやいやうそうそうそうそ。」
「エリーが混乱してるの初めて見た。」
「だって、サムはかわいいジャーマン・スピッツ犬でこんな人型じゃあ…。」
サムだと名乗る青年を上から下まで見て、下の方でエリーの視線はぴたりと止まった。
青年は、全裸だった。
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エバンズ少将はその後すぐに正気を取り戻し、遅れて参戦した特殊部隊の手も借りてその場を鎮圧した。
乗り込んできた敵兵は全員が戦闘不能となり、謎の超快速船も手中に収めた。今後の戦いに備えてその仕組みが分析されるだろう。
今はそれよりも、だ。
「彼が、アーチボルト二等の、相棒の、犬、だと。」
サムだと名乗る青年はその場に残されていた黒いマントをはおって、とりあえず全裸を隠した状態で頬の怪我を手当てするエリーの隣に立っていた。
その背はエリーよりもやや高い。
エバンズ少将の威圧的な視線にもたじろがない。むしろ不機嫌に睨み返している。思えば犬のサムも少将に対しては態度が悪かった。犬のころは可愛いだけだったが、人型でそれをやると不敬である。
「それで、先ほどの力はなんなんだ?敵兵を剣も使わずに切り殺し、はるか遠くに吹き飛ばしたな?」
「あれは”風魔法”だ。」
「魔法?お前は魔法使いだったのか?そもそも人型と犬型、どちらが本物なんだ?」
「どちらも本物だよ。」
「どういうことだ?」
「俺は、大陸の内地にある魔法大国ルクレツェンの狼獣人一族・ウォー家の出身だ。獣人の能力で…、犬に変身できる。魔法を学んでいるから、魔法も使えるんだよ。」
「なぜそのような経歴の者がアーチボルト二等の犬をやっていたんだ?」
「…それはプライベートだけど、話さなきゃいけないの?」
混乱が落ち着いたエリーはサムだと名乗る青年の話を反芻していた。自分は狼獣人で魔法使い。ルクレツェン魔法大国からやってきた。
…サムがエリーのところにやってきたのは15歳の夏だ。エリーは今、20歳である。サムだと名乗る青年は見たところ同じぐらいの年だ。
左頬の傷に特別な塗り薬を塗布して、ガーゼで覆って手当ては完了した。
「サム…だと名乗る人。」
サムだと名乗る青年は名前を呼ばれて喜んで振り返ったが、付け加えられた言葉で不機嫌そうな顔になる。
「あなた何歳なの?」
「来月20歳になるから、エリーと同い年だ。」
「そう…、じゃあ14歳で何らかの理由で祖国を出てブルテンに来ていたのね。なんでずっと犬のふりをしていたの…?」
エリーの目つきが鋭くなる番だ。「そ、それは…。」と青年は言い淀んでいる。
「ブルテン海軍をスパイしに来たの?」
「ち、違う!」
「じゃあ、何で犬の姿で五年間も?」
「…犬じゃないと追い出されると思ったんだ。」
サムだと名乗る青年はぽつりぽつりと身の上を話し出した。危険はなさそうだと判断したエバンズ少将は「後で報告しろ」とエリー達を残して軍の指揮へと戻って行った。
ーーーー
「俺は一族でも優秀な力を持っていて、魔法属性も二つも持っていたし、早くから獣化もできて、次期当主候補だとみなされていたんだ。」
「あなたは当主の息子なの?」
「いや、俺は当主の甥だけれど、獣人は実力主義だから力が一番強い者が当主になるんだ。」
サムだと名乗る青年は「俺が初めて獣化したのは三つの年だった。」と話し始める。
「真白な子犬に変化して、親族中が大騒ぎしたらしい。真っ白な毛並みも珍しいし、きっと成長すれば立派な狼になるって。」
そういえば、青年は狼獣人だと名乗っていたが、変化後の姿はどう見ても犬である。
「俺の叔父上は立派なグレイウルフに変化できるんだ。体長は2m近いね。10歳の時点で牙も爪も鋭い成獣に近い姿になっていたけれど、俺の変化した姿はいつまでも可愛さが抜けなくて、親族中が変化は早いのに成長は遅いなと首をひねっていたんだよ。」
サムの体長は1mといったところだ。
「俺が13歳の時に、当主の息子で、俺の従弟が獣化に成功したんだ。」
「獣化って獣人なら誰でもできるものなの?」
「いや、力の強い個体にしかできないよ。その当時は当主と俺しかできなかったんだ。でも当時9歳だった従弟がついに獣化に成功して、その姿が叔父上とそっくりで、すでに俺より大きかったんだ。
それで、え、おかしくない?って空気になってさ。」
青年はため息をついた。
「俺、狼じゃなくて、犬だったんだよ。そこから扱いが一変して、次期当主から犬に変化する恥さらしって呼ばれるようになったんだ。辛くて家を飛び出したんだ。ずっと国外に出てみたいと思っていたから、魔法を駆使してヒューゲンにわたって、そこからブルテンに。でも、運悪く船が事故を起こして海に落とされたところを海馬に追い回されてさ。なんとか陸地に逃げ込んで魔力切れで倒れていたところをエリーに保護されたってわけ。」
一気にまくしたてる青年をエリーはまだ疑いの目で見ていた。つらい過去であることは彼の様子からもうかがい知れるが、スパイでないと断言できるほどの情報でもない。
「で、何で犬のふりをしていたの?」
「そ、それは、犬じゃないと追い出されると思ったんだ。」
「なんで?」
「だ、だって、当時、俺は14歳だったんだ!犬に変化するのは劣等種である証拠だと思っていたんだ!可愛い犬だと思っていたものが、実は狼になりそこなったできそこないの犬だってわかったら、下手したら殺されるかもって!」
…、それは確かに、当時にサムの正体がわかっていれば、間違いなく国に報告されただろう。間者だと疑われれば殺されていた可能性もある。青年の言ったような理由で殺されることはなかっただろうが、別の疑いで殺されていたかもしれない。
「俺、エリーと海軍のために働いてきたじゃないか!落ち込んでる兵を元気にしたりしてきただろう?」
「…あれも魔法なの?」
「あれは、”闇魔法”なんだ。ウォー一族が伝統的に継承してきた魔法なんだよ。」
「そういえば、魔法属性を二つ持っているって言ってたわね。闇と風ってことね。」
青年はスパイの容疑を晴らそうと必死になっていた。
「なんで、今、人型に戻って見せたの?ずっと犬のふりをしていくつもりだったのでしょう?」
「そ、それは、君が…。」
「私?」
「エリーが殺されそうになっていたからだよ!闇魔法じゃ間に合わなかったから風魔法を使おうとして…。強い風魔法は人型じゃないと使えないから…。」
その言葉に嘘はないのだろう。何より、話せば話すほど、なぜか青年が犬のサムとシンクロして、エリーにはこれ以上問い詰めることが辛かった。でも、最後にこれだけは、と視線に力をこめる。
「じゃあ、なぜあなたはブルテン語を話せるの?犬の間に身に着けたの?」
「いや、ルクレツェンには独自の言語がないんだ。もともと、ヒューゲン語やオールディー語、ロマーノ語を話すんだけれど、オールディー語とブルテン語は近いだろう?それで、少し勉強したことがあって…。」
確かにブルテン語とオールディー語は語感も文法もよく似ている。オールディー語を日常的に使っていたのならブルテン語の習得は難しくない。
「誓うよ。俺は海軍の情報をどこにも流してない。これからも海軍のために働く。だから…、エリーのそばに置いてほしい。」
その顔は完全にサムだった。白い頭を思わず撫でてしまったことは許してほしい。
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