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第五章 無計画な真実の愛
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ダンフォード公爵家は数代前の王弟から始まった一族であり、貴族としての歴史はまだ浅い。しかし、内政や外交で確かな存在感を放っている。
また、姫がいない王家に代わって、他国と婚姻による同盟を結ぶ場合にはダンフォード家の令嬢が嫁がされる。外国に嫁いだ娘はキャサリンで五人目らしい。
故に、幼い頃からの婚約者はダンフォード家の子供たちにはいらい場合が多い。実際、キャサリンの妹である次女のドローレスは19歳になるが、婚約者がいない。
「では国外で縁談を?」
「ええ。その予定です。」
娘婿であるヨーゼフを迎えて、ダンフォード家では晩餐会を開いてくれた。キャサリンの父である公爵と次男のベネディクトは釣り目がよく似ていたが、色は異なっていた。ダンフォード公爵の瞳と髪はアンバーで、長男であるアンブローズと次女のドローレスに受け継がれている。ドローレスは侯爵にそっくりな見た目をしていたが、アンブローズはおっとりとした優しい顔立ちをしていた。
その顔が化粧を落としたキャサリンにそっくりなことは、今ならヨーゼフにもわかる。
そして…。
公爵の隣で優雅に夕食を口に運ぶ公爵夫人、キャサリンと同じ明るい金髪に水色の瞳、優し気な顔立ちはキャサリンの素顔にそっくりである。実は夫人こそがダンフォード公爵家の嫡流であり、公爵は入り婿なのだそうだ。
その姿は運命の姫が年を取った後の姿を彷彿とさせる。
「キャサリンは大公夫人としてよくやれているでしょうか?」
夫人はおっとりとヨーゼフに話しかけてきた。
「はい、外交のパートナーから国内での夫人たちとの交流まで十分にこなしてくれています。」
「しかし、いまだに子の予定はないでしょう?」
公爵の言葉にピクリと反応しそうになるのを押しとどめる。
「バッツドルフ公の跡継ぎとなるご子息が必要のはずです。務めを果たせないのではこちらとしても申し訳ございませんわ。バッツドルフ公にお考えがあるのなら、こちらに連れ戻すこともできますのよ?」
「いえ、そのようなことはありません。」
ヨーゼフは少し食い気味に反論する。遠回しに、『このまま白い結婚ならダンフォード家に返せ』と言われたが、ヨーゼフにキャサリンを手放すつもりはない。
「まだ私たちは結婚して二年足らず。しかも外交関係の仕事で忙しくしておりますから。」
これから白い結婚を辞めるつもりであることを匂わせる。
「それに私自身は子がいなくてもいいかと思っています。兄の子を一人養子に迎えて後を継がせることもできますし。」
たとえ子ができなくともキャサリンを手放す気はないと強調する。
「まあ。そう言っていただけるなんて、キャサリンは大切にされているようで安心しましたわ。」
夫人はおほほと笑っているが、ヨーゼフは少し怖くなった。この人、見た目はおっとりとしているが、なかなか鋭く釘をさしてくる。
その後、男同士で飲みなおそうとキャサリンの兄二人と共に別室へ移った。政治や外交の話に花を咲かせていると、別室の扉がノックされキャサリンがやってきた。
「旦那様、そろそろ帰りましょう。」
「君は泊まっていかなくていいのかい?」
「明日も予定が詰まっていますから。」
ヨーゼフが帰り支度をと立ち上がるとアンブローズとベネディクトが交互に握手を求めてきた。
「これからも妹をよろしく頼みますね。」
「またいつでも遊びに来てください。」
何か違和感を感じたヨーゼフであったが、言語化できずにキャサリンと馬車へと乗り、大使館へと戻った。
「旦那様、母はいかがでしたか?」
「公爵夫人のことか?いかがも何も、美しい人だったが…?」
キャサリンからの突然の質問に首をかしげる。
「旦那様が運命の姫だと夢中になられていた、あの絵本の挿絵…。」
「あ!や!」
まさかキャサリンまでその話を知っているとは思わず、ヨーゼフは慌てた。
「その…、子供の頃の話だ!今は絵本の女性に恋などしていない!」
「存じ上げています。」
何を?と思ったがヨーゼフは怖くて聞けなかった。
「その挿絵の女性、モデルは母だったそうです。」
「ええ!?」
しかし、それで合点がいった。化粧を落としたキャサリンの姿と、国王である兄がこの縁談をヨーゼフに勧めた理由も。
「そうだったのか…。キャシーによく似た綺麗な方だとは思ったが…。」
「私に似ていましたか?」
「キャシーも素顔は可愛らしいだろう?なぜそのような印象を変える化粧をしているんだい?」
「これは母からの指示です。」
「え?」
「若い頃の母は今よりも可愛らしさが強く、よく敵から侮られていたそうです。本来は父以上の切れ者ですから、中身と見た目のギャップに苦労してきたと。
なので同じ顔の私にはきつめの化粧をするように、と。」
確かに、運命の姫にそっくりの可愛らしさのある顔で普段のブルテン流の嫌味を言われても刺さらないかもしれない。そういうことを言う人に見えないから。
「そ、そうか…。てっきりそのような化粧が好きなのかと。」
「別に化粧に好き嫌いなどありませんよ。」
それならば一度、素に近い顔で可愛らしく着飾る姿も見てみたい。しかし、その状態ではヨーゼフが浮気しているという噂がたってしまうことだろう。
また、姫がいない王家に代わって、他国と婚姻による同盟を結ぶ場合にはダンフォード家の令嬢が嫁がされる。外国に嫁いだ娘はキャサリンで五人目らしい。
故に、幼い頃からの婚約者はダンフォード家の子供たちにはいらい場合が多い。実際、キャサリンの妹である次女のドローレスは19歳になるが、婚約者がいない。
「では国外で縁談を?」
「ええ。その予定です。」
娘婿であるヨーゼフを迎えて、ダンフォード家では晩餐会を開いてくれた。キャサリンの父である公爵と次男のベネディクトは釣り目がよく似ていたが、色は異なっていた。ダンフォード公爵の瞳と髪はアンバーで、長男であるアンブローズと次女のドローレスに受け継がれている。ドローレスは侯爵にそっくりな見た目をしていたが、アンブローズはおっとりとした優しい顔立ちをしていた。
その顔が化粧を落としたキャサリンにそっくりなことは、今ならヨーゼフにもわかる。
そして…。
公爵の隣で優雅に夕食を口に運ぶ公爵夫人、キャサリンと同じ明るい金髪に水色の瞳、優し気な顔立ちはキャサリンの素顔にそっくりである。実は夫人こそがダンフォード公爵家の嫡流であり、公爵は入り婿なのだそうだ。
その姿は運命の姫が年を取った後の姿を彷彿とさせる。
「キャサリンは大公夫人としてよくやれているでしょうか?」
夫人はおっとりとヨーゼフに話しかけてきた。
「はい、外交のパートナーから国内での夫人たちとの交流まで十分にこなしてくれています。」
「しかし、いまだに子の予定はないでしょう?」
公爵の言葉にピクリと反応しそうになるのを押しとどめる。
「バッツドルフ公の跡継ぎとなるご子息が必要のはずです。務めを果たせないのではこちらとしても申し訳ございませんわ。バッツドルフ公にお考えがあるのなら、こちらに連れ戻すこともできますのよ?」
「いえ、そのようなことはありません。」
ヨーゼフは少し食い気味に反論する。遠回しに、『このまま白い結婚ならダンフォード家に返せ』と言われたが、ヨーゼフにキャサリンを手放すつもりはない。
「まだ私たちは結婚して二年足らず。しかも外交関係の仕事で忙しくしておりますから。」
これから白い結婚を辞めるつもりであることを匂わせる。
「それに私自身は子がいなくてもいいかと思っています。兄の子を一人養子に迎えて後を継がせることもできますし。」
たとえ子ができなくともキャサリンを手放す気はないと強調する。
「まあ。そう言っていただけるなんて、キャサリンは大切にされているようで安心しましたわ。」
夫人はおほほと笑っているが、ヨーゼフは少し怖くなった。この人、見た目はおっとりとしているが、なかなか鋭く釘をさしてくる。
その後、男同士で飲みなおそうとキャサリンの兄二人と共に別室へ移った。政治や外交の話に花を咲かせていると、別室の扉がノックされキャサリンがやってきた。
「旦那様、そろそろ帰りましょう。」
「君は泊まっていかなくていいのかい?」
「明日も予定が詰まっていますから。」
ヨーゼフが帰り支度をと立ち上がるとアンブローズとベネディクトが交互に握手を求めてきた。
「これからも妹をよろしく頼みますね。」
「またいつでも遊びに来てください。」
何か違和感を感じたヨーゼフであったが、言語化できずにキャサリンと馬車へと乗り、大使館へと戻った。
「旦那様、母はいかがでしたか?」
「公爵夫人のことか?いかがも何も、美しい人だったが…?」
キャサリンからの突然の質問に首をかしげる。
「旦那様が運命の姫だと夢中になられていた、あの絵本の挿絵…。」
「あ!や!」
まさかキャサリンまでその話を知っているとは思わず、ヨーゼフは慌てた。
「その…、子供の頃の話だ!今は絵本の女性に恋などしていない!」
「存じ上げています。」
何を?と思ったがヨーゼフは怖くて聞けなかった。
「その挿絵の女性、モデルは母だったそうです。」
「ええ!?」
しかし、それで合点がいった。化粧を落としたキャサリンの姿と、国王である兄がこの縁談をヨーゼフに勧めた理由も。
「そうだったのか…。キャシーによく似た綺麗な方だとは思ったが…。」
「私に似ていましたか?」
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「え?」
「若い頃の母は今よりも可愛らしさが強く、よく敵から侮られていたそうです。本来は父以上の切れ者ですから、中身と見た目のギャップに苦労してきたと。
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確かに、運命の姫にそっくりの可愛らしさのある顔で普段のブルテン流の嫌味を言われても刺さらないかもしれない。そういうことを言う人に見えないから。
「そ、そうか…。てっきりそのような化粧が好きなのかと。」
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