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エピローグ
キャサリン・バッツドルフ 終
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「まさかあの旦那様がこのようにキャサリン様に夢中になるだなんて、私は思いもよりませんでした。キャサリン様もすっかり絆されてしまったようで。」
「絆されてなんかいないわ。旦那様は種馬なだけの駄犬よ。」
「はいはい。キャサリン様のお得意なツンツンですね。」
腹心の侍女スーザンはキャサリンを飾り立てながら、やれやれといった様子でため息をついた。今日はヒューゲンに新しい国王が即位する、即位式の日だ。
キャサリンもシンプルながらも高貴なドレスに身を包んでいる。他の女性と違うと思われるのはその腹がふっくらと膨らんでいることだろう。現在、彼女は第三子を妊娠中である。
「どうせ今日もすぐに扉を叩いてこの部屋にやってきますよ。エントランスであっても待てができないのですから。」
その言葉と同じタイミングで扉が叩かれ、返事をすると開いた扉から6歳になった長男と父に抱えられた2歳の長女が入ってきた。
「母上!とってもきれいです!」
長男のアレクシスは父親そっくりの容姿の男の子だ。中身はキャサリンに似てくれて、しっかり者で少し腹黒い。長女のブリュンヒルデは赤毛に赤褐色の目のキャサリンに似た顔立ちの女の子だ。まだ海の者とも山の者とも、といった様子である。
駄犬にならないようにしっかり教育しなくては。
「ありがとう、アル。」
「僕も今日、一緒に行きたかったです!父上だけじゃ心配です!」
「まあ!」
アレクシスは6歳にして流ちょうなブルテン語を喋る。ヒューゲン語とブルテン語のバイリンガル教育を受けてきたためだ。
「アルは屋敷でブルーのことをお願いね?」
「はい!」
「おい、アル。私がいて何が心配なんだい?」
「父上は話しかけないでください。」
名残惜しげに手を振る息子に手を振りながら、よっこいしょと馬車に乗る。
「大丈夫かい、キャシー。すまない、普通だったら君も留守番でよかったんだが…。」
「仕方ありませんわ。特別な日ですもの。」
「兄上も…、まさかこんなにあっさりと退位することになるとはな。」
三年前、国王エアハルトの女遊びが証拠と共に暴露されたのだ。それまで、そのようなイメージが全くなかったエアハルトのスキャンダルに町民は湧き上がった。悪い意味で。
思わぬ形で女好きが露呈すると、側室の座を狙う者、昔の女をの名乗る者、果ては隠し子まで登場して周囲は荒れた。
エアハルトの秘密をこれまでしっかり守っていた者たちが手のひらを返し、彼の秘密を隠してくれる者がいなくなったのが原因だ。
本来、それだけで国王が退位に追い込まれることはない。しかし、スキャンダルはあっという間に国の隅から隅まで広がり、半分以上嘘ではあったが続報に次ぐ続報によって国民はエアハルトに完全にそっぽを向いた。
最初は力でねじ伏せていたが、それでさらに反発を招いた。
平民たちの力はわずかなものだが、団結されると貴族も王族も叶わない。
王太子が貴族学園を卒業するタイミングで若き国王として即位することが決まったのだ。
そして、その後見にヨーゼフが就くのだ。妻として、キャサリンが即位式を欠席するわけにはいかない。なのでこうして大きくなってきたお腹を抱えて出てきたのだ。
「旦那様も止めなかったではないですか?」
「兄上の政策には思うところがあったからね。比べて甥っ子は頭を柔らかいし、革新的だよ。これからは裏の手回しを少なくして、キャシーの望む国づくりができるよ。」
「最近、一番恐ろしいのは旦那様なのではと思うようになりましたわ。」
ヨーゼフはキャサリンが裏で手を回していることをすべて黙認し、時には手助けをしてくれた。まるで親が子に与える無償の愛のような…、キャサリンにはとてもできることではない。
「私はただキャシーの理想を一緒に追いかけているだけだよ。」
四十路を越えてもヨーゼフの美貌は健在だ。今でも若い麗令嬢たちにキャーキャー言われている。年相応に老けてくれればいいものを。騒がれているのが面白くないだなんて、絶対に言ってやらないけれど。
そんな二人は国内外でオシドリ夫婦として有名だ。令嬢たちにも憧れの夫婦と見られ、かつてのように愛人を狙うような令嬢は少ない。
キャサリンは相変わらず外交にも領地経営にも精を出し、自分の名前で数々の功績をあげている。ヒューゲンの貴族夫人としては異例だが、それが憧れとして受け入れられるのはキャサリンが望んだ展開だ。
「キャシー、私はいつまでも君のことを愛し続けるよ。私には君と子供たちさえいればいいんだ。」
「まあ…。私も普通ぐらいには気にかけていますよ。」
さあ次はどんな手を打とうか。
楽しそうに悪だくみを行うキャサリンの顔を、ヨーゼフは嬉しそうにずっと眺めていた。
「絆されてなんかいないわ。旦那様は種馬なだけの駄犬よ。」
「はいはい。キャサリン様のお得意なツンツンですね。」
腹心の侍女スーザンはキャサリンを飾り立てながら、やれやれといった様子でため息をついた。今日はヒューゲンに新しい国王が即位する、即位式の日だ。
キャサリンもシンプルながらも高貴なドレスに身を包んでいる。他の女性と違うと思われるのはその腹がふっくらと膨らんでいることだろう。現在、彼女は第三子を妊娠中である。
「どうせ今日もすぐに扉を叩いてこの部屋にやってきますよ。エントランスであっても待てができないのですから。」
その言葉と同じタイミングで扉が叩かれ、返事をすると開いた扉から6歳になった長男と父に抱えられた2歳の長女が入ってきた。
「母上!とってもきれいです!」
長男のアレクシスは父親そっくりの容姿の男の子だ。中身はキャサリンに似てくれて、しっかり者で少し腹黒い。長女のブリュンヒルデは赤毛に赤褐色の目のキャサリンに似た顔立ちの女の子だ。まだ海の者とも山の者とも、といった様子である。
駄犬にならないようにしっかり教育しなくては。
「ありがとう、アル。」
「僕も今日、一緒に行きたかったです!父上だけじゃ心配です!」
「まあ!」
アレクシスは6歳にして流ちょうなブルテン語を喋る。ヒューゲン語とブルテン語のバイリンガル教育を受けてきたためだ。
「アルは屋敷でブルーのことをお願いね?」
「はい!」
「おい、アル。私がいて何が心配なんだい?」
「父上は話しかけないでください。」
名残惜しげに手を振る息子に手を振りながら、よっこいしょと馬車に乗る。
「大丈夫かい、キャシー。すまない、普通だったら君も留守番でよかったんだが…。」
「仕方ありませんわ。特別な日ですもの。」
「兄上も…、まさかこんなにあっさりと退位することになるとはな。」
三年前、国王エアハルトの女遊びが証拠と共に暴露されたのだ。それまで、そのようなイメージが全くなかったエアハルトのスキャンダルに町民は湧き上がった。悪い意味で。
思わぬ形で女好きが露呈すると、側室の座を狙う者、昔の女をの名乗る者、果ては隠し子まで登場して周囲は荒れた。
エアハルトの秘密をこれまでしっかり守っていた者たちが手のひらを返し、彼の秘密を隠してくれる者がいなくなったのが原因だ。
本来、それだけで国王が退位に追い込まれることはない。しかし、スキャンダルはあっという間に国の隅から隅まで広がり、半分以上嘘ではあったが続報に次ぐ続報によって国民はエアハルトに完全にそっぽを向いた。
最初は力でねじ伏せていたが、それでさらに反発を招いた。
平民たちの力はわずかなものだが、団結されると貴族も王族も叶わない。
王太子が貴族学園を卒業するタイミングで若き国王として即位することが決まったのだ。
そして、その後見にヨーゼフが就くのだ。妻として、キャサリンが即位式を欠席するわけにはいかない。なのでこうして大きくなってきたお腹を抱えて出てきたのだ。
「旦那様も止めなかったではないですか?」
「兄上の政策には思うところがあったからね。比べて甥っ子は頭を柔らかいし、革新的だよ。これからは裏の手回しを少なくして、キャシーの望む国づくりができるよ。」
「最近、一番恐ろしいのは旦那様なのではと思うようになりましたわ。」
ヨーゼフはキャサリンが裏で手を回していることをすべて黙認し、時には手助けをしてくれた。まるで親が子に与える無償の愛のような…、キャサリンにはとてもできることではない。
「私はただキャシーの理想を一緒に追いかけているだけだよ。」
四十路を越えてもヨーゼフの美貌は健在だ。今でも若い麗令嬢たちにキャーキャー言われている。年相応に老けてくれればいいものを。騒がれているのが面白くないだなんて、絶対に言ってやらないけれど。
そんな二人は国内外でオシドリ夫婦として有名だ。令嬢たちにも憧れの夫婦と見られ、かつてのように愛人を狙うような令嬢は少ない。
キャサリンは相変わらず外交にも領地経営にも精を出し、自分の名前で数々の功績をあげている。ヒューゲンの貴族夫人としては異例だが、それが憧れとして受け入れられるのはキャサリンが望んだ展開だ。
「キャシー、私はいつまでも君のことを愛し続けるよ。私には君と子供たちさえいればいいんだ。」
「まあ…。私も普通ぐらいには気にかけていますよ。」
さあ次はどんな手を打とうか。
楽しそうに悪だくみを行うキャサリンの顔を、ヨーゼフは嬉しそうにずっと眺めていた。
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