わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました

ぺきぺき

文字の大きさ
10 / 59
第2章 8歳の大聖女

3 ルロワ公爵家にて

しおりを挟む
やりたい放題の大聖女マルシャローズはルロワ公爵家に帰ってきた。出迎えたのは公爵である父と急遽学園から呼び戻された同母の妹アリシラローズだ。
相変わらず赤い髪に緑の目のアリシラを見て、マルシャはふふふっと笑った。

「お父様、出産までお世話になります。」

「ああ、マルシャ、良く戻ってきた。」


父は諦めたような顔をしているが、アリシラは怒ったような顔をしている。

「あら、アリシラ、そんな怒ったような顔をして。青い目もシルバーブロンドも受け継がなかったのだから、せめてかわいい顔をしていないと。」

「…マルシャお姉さま、なぜ8歳のクリスに大聖女を押し付けるようなことをなさったのです?」

「押し付ける?まるで私が悪いみたいね。子供は天からの授かりものよ。私も予想できることじゃないわ。それにクリスもまだ見ぬ姪っ子か甥っ子のためなら大聖女の仕事を喜んで代わってくれるわ。
あの子、優秀らしいし。」

私よりもね…と脳内で自分で付け足して思わずむっとする。あっという間に結界術をみにつけたクリスの話は聞きたくなくても聞こえてきた。マルシャは8歳から初めて一年はかかったが、6歳のクリスはわずか数か月。
将来の大聖女として頼もしいなんて声も聞こえてきたほどだ。

…私がまだ着任して二年なのに、もう次世代の話をするなんて。私に対する侮辱だわ。私が大聖女という激務に着くのに将来聖女になる妹がお嬢様として生活しているなんて許せなくて6歳から修行を始めさせたけど、もっと遅らせた方がよかったかしら。


でも、そうしてたらこんなに早く大聖女をやめられなかったわね。


「大聖女なのに、避妊されていなかったんですか?」

「失敗しちゃったのね。淑女がそんなあけすけな物言いをしてはいけないわよ。だから…。」

ああ、面白くて仕方ない。マルシャは完璧な笑顔でアリシラを見た。


「婚約を解消されちゃうのよ。」

アリシラが眉を寄せる。

「それはお姉さまがアーチ―様の弟のリュカ・ガルシア様に輿入れするからです。そして、リュカ様がガルシア家の次期当主に決まられたからです。」

「私はルロワ家の当主になってもいいって言ったのよ。お父様がダメだって。弟に当主教育を受けさせているから。」


ま、最初からアリシラのポジションを取ってやろうって思ってたけどね。アリシラがガルシア公爵家の嫡男と婚約したって聞いてから、その方が大聖女よりも良さそうだと思ってたから。
小さいころからこの子が大聖女になるからってちやほやされて育ってきたけれど、大聖女って楽な仕事じゃなかった。しかも、祈りの結界の出来栄えを前任と比較されて、粗を指摘されるのもそんな経験がなかったマルシャには堪えた。
前任はルロワ公爵家の嫡流でもないし、マルシャより10以上年上の年増なのに。


それにルロワ公爵家を継ぐということは大聖女候補をたくさん産むことを求められる。そんなのは絶対に嫌だ。
元大聖女の公爵夫人、素敵じゃない。それに8歳のクリスローズに大聖女は務まらない。私と前任を比べていた人たちも後悔して、戻ってきてほしいと願うだろう。私の価値は変わらない。むしろ上がる。

運よくリュカが白騎士として配属されてきてくれてよかったわ。


「それで、アリシラの次の婚約者は決まったの?」

「まだだ。」

父はそっけなく言うが相当苦労しているだろう。アリシラの婚約が決まるまで、目ぼしい大貴族の嫡男は婚約者を決めていなかったが、決まった後は各家で婚約ラッシュが続いた。
もう歳の近い嫡男は残っていない。後継者でなくなったアリシラの元婚約者は未来の王配として王家の一人娘の婚約者となった。元々リュカが候補にあがっていたものだ。


全てが横にスライドし、アリシラだけがあぶれた。

それがマルシャにとっても気持ちのいいものだった。


「そういえば、お母さまの妹の嫁いだロジャーズ伯爵家が遠い東の島国に嫁に出せる令嬢を探しているそうじゃない。あなたそこに行ったら?」

ま、そんなこと、お父様が許さないだろうから無理だけど。貴重なルロワ公爵家の血を引く娘だもの。大聖女になれなくても大聖女は産めるかもしれないし。


そんなことをにまにまと考えていたマルシャはアリシラがにやりとしたことに気づかなかった。


「そうですよね。マルシャお姉さまは私がこの国にいることでご気分を害されるのですよね。わかりました。」


この時は全くアリシラの発言を気にしていなかったマルシャはアリシラの異国への嫁入りが決まり、出発した話を二月後に聞き、腰を抜かすことになる。



しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

処理中です...