1 / 6
大東京で爆走編
1 常磐卯の、28歳。これが私の日常です。
しおりを挟む
大都市、東京。人口は1000万人を超え、日本一。近隣県から働きに来る人を考えれば日中の滞在人数はさらに多いだろう。
「常磐さん、午前中にお願いした書類の修正なんだけれど…。」
「もうできてますよ。ファイルを先ほど送っておきました。」
「常磐さん、さっき決まった明後日の会議の会議室の手配なんだけれど…。」
「会議室の予約は先ほどしておきました。今、みなさんに案内を流します。」
「常磐さん!○○社の社長がお帰りになるのでタクシーの手配を…!」
「もう手配済みです。ロータリーに待機済みです。」
大都市東京の一画にあるとある会社の一室で、ブルーライトカット眼鏡とともに誰よりも高い集中力を発揮して仕事に臨むのは、20代半ばと思しき女性である。
『常磐さん』と呼ばれる彼女はこの会社で秘書事務として働いている。内向きのボブカットの髪は派手すぎないダークブラウンであり、もともと美人であるのだが、それを引き立てるお似合いのメイクとすらっとしたパンツスーツで大人っぽさが際立つ。
手の出せない高嶺の花という雰囲気だ。
総合職の男性社員から絶大な人気を誇っているのだが、食事はおろか、連絡先すら聞き出せたものはいない。
「常磐さんって謎よね。全然、社内でのお付き合いってされないし?独身なのよね?」
「指輪はされていないから、そうなんじゃない?」
「美人だけれど、高嶺の花ってやつ?」
「結婚してなくても彼氏はいるかもしれないじゃない?」
「お昼もいなくなってしまうし、定時にはいつも帰ってしまうから、何もきけないのよね…。私たちは残業しているのに…。ほら、そろそろ…。」
他の秘書たちがひそひそと噂話をする中、『常磐さん』は眼鏡をはずしてケースにしまい、立ち上がった。そして、おしゃれなトートバックを肩にかけると出入り口へと向かう。
「お先に失礼します。」
「「お疲れ様です~。」」
時計がぴったりと定時を指す中、颯爽と退勤していった。
「常磐さん、います!?」
10秒遅れで入室してきたのは、若手の男性社員だ。入社当時からなかなかイケメンと話題の好青年である。
「常磐さんは帰られました。」
「今日も残念でした、河合くん。」
「そんな…。今日こそはと定時ダッシュしてきたんですよ!」
「定時ダッシュじゃ、プライベート常磐さんは捕まえられないわ。」
「私たちも毎日15秒ぐらいしか見られないもの、プライベートの常磐さん。」
がっくりと項垂れる好青年、河合くん。秘書室では頻繁ではないにしてもたまに見られる光景である。
====
一方、噂の『常磐さん』は…。
「何が高嶺の花よ!全部聞こえてんのよ!」
『常磐さん』こと常磐卯のは職場から徒歩10分ほどのところにある高級マンションに足早に向かっていた。
「こっちは残業してるあんたたちと同じ量の仕事してんのよ!!」
見えてきた住まいは社会人五年目にしては良いマンションすぎる。それはそうだ。…これは社宅である。卯のの懐からは一銭もでていない。
もちろん昼間の職場はこんな高級マンションを気前よく用意してくれはしない。夜の職場が用意した社宅である。
卯のはオートロックのエントランスをぬけると、部屋には戻らずにすぐに駐車場へと向かった。カバンからキーを取り出して愛車を素早く解錠すると、助手席の扉を開けて乗り込んだ。
「この後も私は仕事だっていうのに!勤務時間でいったらあんたたちの倍はあるわ!」
パタンという音と共に運転席の扉が開く。
「またカリカリしてんのかよ、卯の。」
現れたのはラフなパーカー姿の茶髪で猫目の青年だ。年は10代後半に見える。
「柚子、女性の多い職場って大変なの。噂話しかすることがないんだから。」
「いつも晴に言ってる話か。」
「そうよ。」
卯のは愛車に常備している某有名栄養調整食の箱を一つ取り出すと食べ始めた。パンプスを脱ぎ捨て後部座席へ投げるとこれまた常備してあるスニーカーに履き替える。柚子と呼ばれた青年はそれを横目で見ながら慣れた様子でエンジンをかけると車を発車させた。
車を走らせること15分、到着したのは日本橋にあるオフィスビルだ。特別な駐車場に車を止めると、特別なエレベーターを使って従業員ですら入れないエリアに入る。
そこにはデスクが10台ほど並んでおり、それぞれにBTOパソコンと充電中の某パッド型端末、乱雑に積まれた書類の山があった。一番奥のひと際大きなデスクではひと際大きな書類の山に囲まれて、50代と思しきくたびれたスーツの男性が座っていた。
卯のの夜の勤め先である、警察庁の『超自然現象対策室』の九条室長である。
「常磐卯の、ただいま到着いたしました。」
「おお!常磐、いいところに来た!大至急品川に向かってくれ!」
「まさか、また京都から東海道新幹線に乗ってお客さんですか?」
「そのまさかだ!社用の端末にデータを送っておいた!」
柚子がデスクの一つからパッドを取り上げると起動して内容を確認する。
「おいおい、卯の…。」
「まさかまた青龍様じゃないでしょうね…。」
「そのまさかだよ!」
卯のは両目を手のひらで負おうと天を仰いだ。青龍とは、ご存知の方もいよう、京都の東の守護神であり、普段はかの有名な八坂神社にいる。
「急ぎましょう。」
オフィスへの滞在はまさかの3分。卯のは柚子を引き連れて愛車へと戻り、品川駅に降り立った。
車を止めた柚子はポンと煙を立てて三毛猫へと変化する。
〈卯の、目くらましの札、忘れてる。〉
「あ、あぶな!」
〈前にそれをわすれて一般人に東京駅のレンガよじ登るところ動画撮られたの忘れたのかよ?〉
「こんな激務させられたらミスだって増えるわよ!結局、顔は映ってなかったんだからいいじゃない!」
〈胡椒があの動画消すのにどれだけ苦労したと思ってんだよ。〉
「柚子はすっかり運転上手だし、胡椒は私よりパソコンに強いし、猫だってこと忘れそうになるわ。」
柚子と呼ばれた三毛猫はぴょんと卯のの肩に飛び乗った。
〈早く青龍様のところ行かないとまずいんじゃない?〉
「ええ。急ぐわよ。」
卯のは全く注目されないのをいいことに人ごみをオリンピック選手顔負けのスピードで走り抜けていく。視線の先には『JR品川駅』の看板。そして、そこに器用に寝そべる巨大な青い龍だ。
卯のが地面を蹴って飛び上がると、空中に足場が出る。それを登るように卯のは青龍のところまで宙を駆けあがった。ちなみに卯ののパンツスーツはストレッチャー素材である。
「青龍様!」
「ああ、卯の、やっと来たのか。」
「『やっと来たのか』じゃありません!一月前にもいらっしゃったばかりでしょう!京都の守護神がそんなにひょいひょいと京都を離れてはいけません!今すぐ京都におかえりください!その気になれば新幹線よりも速く帰れるでしょう!」
「前も思ったが新幹線とやらは遅くてかなわないな。リニアとやらはいつできるんだい?」
「リニアよりも速く飛べるでしょう!」
「一か月ぶりに会ったのに、そんなにカリカリしないでおくれよ。」
青龍はごろんと腹を上にするように寝返った。
「人が多いんだよ、京都は。」
「東京だって一千万人いるんですけど。」
「それにね、なんだっけ?インバウンド?話し声に耳を傾けても何言っているか分かりやしない。」
「外国語ですからね。これを機に勉強されては?」
「卯のは英語も喋れるだろう?京都に帰ってきておくれよ。」
「兄も英語は喋れますよ。学生時代は世界旅行に出てたの忘れました?」
「虎太郎は可愛くないから嫌だ。」
卯のは深くため息を吐いた。
「青龍様、今、京都も大変でしょうけれど、東京も大変なんです。いえ、東京はずっと変わらず大変なんです。私がこちらで勤務になった理由を忘れました?」
「覚えているとも。東京の怪異数が異常に多くて巫覡の手が足らないからだろう?それなら卯のじゃなくて虎太郎が行ってもよかったはずだ。」
「もう!五年前、虎太郎兄さんには子供ができたばかりだったでしょう?不安定な子供を抱えてこんな激戦地に来れません。」
「卯のも子供を作って京都に帰っておいで。」
肩で柚子が〈あ…〉と息をのんだ。それは今の卯のには禁句である。
「こんなブラック職場で彼氏なんて見つけられるか!!!!!」
卯のの剣幕に青龍も押し黙った。すごすごと腹を下にして「ごめんなさい」と項垂れる。
「もう、いいから青龍様は京都に帰ってください。」
「すまない、卯の。もう遅いようだ。」
卯の達の足元のさらに下から甲高い悲鳴があがる。見下ろすと巨大なムカデのようなものが品川駅から這い出して、人々が逃げ惑っているところだった。
〈うわあ、気持ち悪いね。〉
「あれは駆除対象の妖怪だわ。」
「私はこれ以上、妖たちを引き寄せないように京都へ帰ることとしよう。」
本来はここにいるはずのない青龍。その巨大な気に引き寄せられて東京で隠れ住む妖怪たちが集まってきてしまうのだ。
「京都で大人しくしていてくださいね。」
「卯の、たまには京都に帰ってくるんだぞ?もう一年以上帰っていないだろう?」
「帰れるものなら私だって帰りたいですよ、青龍様。」
空高く飛んでいく青龍に手を振って、地獄絵図と化している地上を見下ろした。ムカデの化け物は三体にまで増えている。
〈これはまた胡椒が大変そうだ。〉
柚子がため息を吐くのを横目に、宇野は右手を一振りして、鈴のついた杖を出現させてつかんだ。
「都市にいる虫型の妖怪はすべて駆除対象よね?ダメなのがいたら教えてよ?」
〈わかった!〉
卯のは品川駅の屋根から飛び降りると巨大ムカデの一体に杖を突きさした。
「常磐さん、午前中にお願いした書類の修正なんだけれど…。」
「もうできてますよ。ファイルを先ほど送っておきました。」
「常磐さん、さっき決まった明後日の会議の会議室の手配なんだけれど…。」
「会議室の予約は先ほどしておきました。今、みなさんに案内を流します。」
「常磐さん!○○社の社長がお帰りになるのでタクシーの手配を…!」
「もう手配済みです。ロータリーに待機済みです。」
大都市東京の一画にあるとある会社の一室で、ブルーライトカット眼鏡とともに誰よりも高い集中力を発揮して仕事に臨むのは、20代半ばと思しき女性である。
『常磐さん』と呼ばれる彼女はこの会社で秘書事務として働いている。内向きのボブカットの髪は派手すぎないダークブラウンであり、もともと美人であるのだが、それを引き立てるお似合いのメイクとすらっとしたパンツスーツで大人っぽさが際立つ。
手の出せない高嶺の花という雰囲気だ。
総合職の男性社員から絶大な人気を誇っているのだが、食事はおろか、連絡先すら聞き出せたものはいない。
「常磐さんって謎よね。全然、社内でのお付き合いってされないし?独身なのよね?」
「指輪はされていないから、そうなんじゃない?」
「美人だけれど、高嶺の花ってやつ?」
「結婚してなくても彼氏はいるかもしれないじゃない?」
「お昼もいなくなってしまうし、定時にはいつも帰ってしまうから、何もきけないのよね…。私たちは残業しているのに…。ほら、そろそろ…。」
他の秘書たちがひそひそと噂話をする中、『常磐さん』は眼鏡をはずしてケースにしまい、立ち上がった。そして、おしゃれなトートバックを肩にかけると出入り口へと向かう。
「お先に失礼します。」
「「お疲れ様です~。」」
時計がぴったりと定時を指す中、颯爽と退勤していった。
「常磐さん、います!?」
10秒遅れで入室してきたのは、若手の男性社員だ。入社当時からなかなかイケメンと話題の好青年である。
「常磐さんは帰られました。」
「今日も残念でした、河合くん。」
「そんな…。今日こそはと定時ダッシュしてきたんですよ!」
「定時ダッシュじゃ、プライベート常磐さんは捕まえられないわ。」
「私たちも毎日15秒ぐらいしか見られないもの、プライベートの常磐さん。」
がっくりと項垂れる好青年、河合くん。秘書室では頻繁ではないにしてもたまに見られる光景である。
====
一方、噂の『常磐さん』は…。
「何が高嶺の花よ!全部聞こえてんのよ!」
『常磐さん』こと常磐卯のは職場から徒歩10分ほどのところにある高級マンションに足早に向かっていた。
「こっちは残業してるあんたたちと同じ量の仕事してんのよ!!」
見えてきた住まいは社会人五年目にしては良いマンションすぎる。それはそうだ。…これは社宅である。卯のの懐からは一銭もでていない。
もちろん昼間の職場はこんな高級マンションを気前よく用意してくれはしない。夜の職場が用意した社宅である。
卯のはオートロックのエントランスをぬけると、部屋には戻らずにすぐに駐車場へと向かった。カバンからキーを取り出して愛車を素早く解錠すると、助手席の扉を開けて乗り込んだ。
「この後も私は仕事だっていうのに!勤務時間でいったらあんたたちの倍はあるわ!」
パタンという音と共に運転席の扉が開く。
「またカリカリしてんのかよ、卯の。」
現れたのはラフなパーカー姿の茶髪で猫目の青年だ。年は10代後半に見える。
「柚子、女性の多い職場って大変なの。噂話しかすることがないんだから。」
「いつも晴に言ってる話か。」
「そうよ。」
卯のは愛車に常備している某有名栄養調整食の箱を一つ取り出すと食べ始めた。パンプスを脱ぎ捨て後部座席へ投げるとこれまた常備してあるスニーカーに履き替える。柚子と呼ばれた青年はそれを横目で見ながら慣れた様子でエンジンをかけると車を発車させた。
車を走らせること15分、到着したのは日本橋にあるオフィスビルだ。特別な駐車場に車を止めると、特別なエレベーターを使って従業員ですら入れないエリアに入る。
そこにはデスクが10台ほど並んでおり、それぞれにBTOパソコンと充電中の某パッド型端末、乱雑に積まれた書類の山があった。一番奥のひと際大きなデスクではひと際大きな書類の山に囲まれて、50代と思しきくたびれたスーツの男性が座っていた。
卯のの夜の勤め先である、警察庁の『超自然現象対策室』の九条室長である。
「常磐卯の、ただいま到着いたしました。」
「おお!常磐、いいところに来た!大至急品川に向かってくれ!」
「まさか、また京都から東海道新幹線に乗ってお客さんですか?」
「そのまさかだ!社用の端末にデータを送っておいた!」
柚子がデスクの一つからパッドを取り上げると起動して内容を確認する。
「おいおい、卯の…。」
「まさかまた青龍様じゃないでしょうね…。」
「そのまさかだよ!」
卯のは両目を手のひらで負おうと天を仰いだ。青龍とは、ご存知の方もいよう、京都の東の守護神であり、普段はかの有名な八坂神社にいる。
「急ぎましょう。」
オフィスへの滞在はまさかの3分。卯のは柚子を引き連れて愛車へと戻り、品川駅に降り立った。
車を止めた柚子はポンと煙を立てて三毛猫へと変化する。
〈卯の、目くらましの札、忘れてる。〉
「あ、あぶな!」
〈前にそれをわすれて一般人に東京駅のレンガよじ登るところ動画撮られたの忘れたのかよ?〉
「こんな激務させられたらミスだって増えるわよ!結局、顔は映ってなかったんだからいいじゃない!」
〈胡椒があの動画消すのにどれだけ苦労したと思ってんだよ。〉
「柚子はすっかり運転上手だし、胡椒は私よりパソコンに強いし、猫だってこと忘れそうになるわ。」
柚子と呼ばれた三毛猫はぴょんと卯のの肩に飛び乗った。
〈早く青龍様のところ行かないとまずいんじゃない?〉
「ええ。急ぐわよ。」
卯のは全く注目されないのをいいことに人ごみをオリンピック選手顔負けのスピードで走り抜けていく。視線の先には『JR品川駅』の看板。そして、そこに器用に寝そべる巨大な青い龍だ。
卯のが地面を蹴って飛び上がると、空中に足場が出る。それを登るように卯のは青龍のところまで宙を駆けあがった。ちなみに卯ののパンツスーツはストレッチャー素材である。
「青龍様!」
「ああ、卯の、やっと来たのか。」
「『やっと来たのか』じゃありません!一月前にもいらっしゃったばかりでしょう!京都の守護神がそんなにひょいひょいと京都を離れてはいけません!今すぐ京都におかえりください!その気になれば新幹線よりも速く帰れるでしょう!」
「前も思ったが新幹線とやらは遅くてかなわないな。リニアとやらはいつできるんだい?」
「リニアよりも速く飛べるでしょう!」
「一か月ぶりに会ったのに、そんなにカリカリしないでおくれよ。」
青龍はごろんと腹を上にするように寝返った。
「人が多いんだよ、京都は。」
「東京だって一千万人いるんですけど。」
「それにね、なんだっけ?インバウンド?話し声に耳を傾けても何言っているか分かりやしない。」
「外国語ですからね。これを機に勉強されては?」
「卯のは英語も喋れるだろう?京都に帰ってきておくれよ。」
「兄も英語は喋れますよ。学生時代は世界旅行に出てたの忘れました?」
「虎太郎は可愛くないから嫌だ。」
卯のは深くため息を吐いた。
「青龍様、今、京都も大変でしょうけれど、東京も大変なんです。いえ、東京はずっと変わらず大変なんです。私がこちらで勤務になった理由を忘れました?」
「覚えているとも。東京の怪異数が異常に多くて巫覡の手が足らないからだろう?それなら卯のじゃなくて虎太郎が行ってもよかったはずだ。」
「もう!五年前、虎太郎兄さんには子供ができたばかりだったでしょう?不安定な子供を抱えてこんな激戦地に来れません。」
「卯のも子供を作って京都に帰っておいで。」
肩で柚子が〈あ…〉と息をのんだ。それは今の卯のには禁句である。
「こんなブラック職場で彼氏なんて見つけられるか!!!!!」
卯のの剣幕に青龍も押し黙った。すごすごと腹を下にして「ごめんなさい」と項垂れる。
「もう、いいから青龍様は京都に帰ってください。」
「すまない、卯の。もう遅いようだ。」
卯の達の足元のさらに下から甲高い悲鳴があがる。見下ろすと巨大なムカデのようなものが品川駅から這い出して、人々が逃げ惑っているところだった。
〈うわあ、気持ち悪いね。〉
「あれは駆除対象の妖怪だわ。」
「私はこれ以上、妖たちを引き寄せないように京都へ帰ることとしよう。」
本来はここにいるはずのない青龍。その巨大な気に引き寄せられて東京で隠れ住む妖怪たちが集まってきてしまうのだ。
「京都で大人しくしていてくださいね。」
「卯の、たまには京都に帰ってくるんだぞ?もう一年以上帰っていないだろう?」
「帰れるものなら私だって帰りたいですよ、青龍様。」
空高く飛んでいく青龍に手を振って、地獄絵図と化している地上を見下ろした。ムカデの化け物は三体にまで増えている。
〈これはまた胡椒が大変そうだ。〉
柚子がため息を吐くのを横目に、宇野は右手を一振りして、鈴のついた杖を出現させてつかんだ。
「都市にいる虫型の妖怪はすべて駆除対象よね?ダメなのがいたら教えてよ?」
〈わかった!〉
卯のは品川駅の屋根から飛び降りると巨大ムカデの一体に杖を突きさした。
0
あなたにおすすめの小説
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる