26 / 85
ころちゃん視点 カーラが扉を開けて人攫いのアジトに自分から入ってきました
しおりを挟む
その日の夜に、カーラが翌日午後に孤児院を訪問するという連絡が入った。
王宮内にも宰相のスパイがいるようだ。
今回は王宮も警戒していて、なんとカーラの護衛の騎士も10名もいるそうだ。
「どうするんだ、ベイル? 騎士の数がこちらの数と同じじゃないか? まともにやったらこちらも結構な被害が出るぞ」
ブルーノが危機感を持って聞いてきた。
「そこは少し工夫がいるだろう」
ベイルはそう言うと、ブルーノらに説明を始めた。
カーラ達が孤児院から帰る途中で、暴れ馬を王女の隊列に突入させて、騎士がそちらに気を取られている間に、カーラを攫うというのだ。
「そのようにうまくいくのか?」
疑い深そうにブルーノが聞いた。
ベイルによると基本は王女の一行は騎士3人が先行して歩き、そして、王女と侍女、その後ろに7人が続いている。その王女に向けて暴れ馬を突入させて、騎士達が必死に馬を止めようとしている間に、別の馬車を王女の傍につけて王女を攫うというのだ。
「それは確かに王女の隊列は混乱するとは思うが、それでうまく王女を攫えるのか?」
「まあ、なんとかなるだろう。少なくとも多くの騎士が暴れ馬を押さえるのに精一杯なのだ。俺達が現れたところで相手に出来るのは3人くらいだ。暴れ馬の手配は別の者がやってくれている。どうしようもないときは、騎士達の中にいるスパイがこちらに寝返ってくれる」
「騎士の中にもスパイを入れているのか」
「そうだ。トマスという騎士が宰相が送り込んだスパイだ。そいつが、うまく立ち回ってくれるさ」
ベイルは楽観して言ってくれた。
「俺達はじゃあどうすればいいんだ?」
「丁度この長屋の傍の交差点で反対側から馬が暴れ出して行列に突入する。それを合図に扉を開けて一斉に騎士達に斬りかかるんだ。そこにやってきた馬車に王女を放り込めば良いだろう」
「なるほど」
「それまでは扉の中で待っていれば良いだろう」
「判った。まあ、なんとかなるだろう」
ベイルの言葉にブルーノは頷いた。
なんと、騎士の中にまで宰相のスパイがいるそうだ。
俺は暗澹たる思いになった。
皆の話すのを聞くところによると、カーラの味方の国王派はあまり多くはいないみたいだ。貴族達の多くは日和見派だ。
強い方につくみたいだ。
まあ、宰相派よりはましだが……
まだ宰相派は少ないが、これでカーラが宰相の息子の嫁にされれば宰相派はドンドン増えるだろう。
何しろこの国の跡継ぎはカーラなのだから。
カーラと宰相の子供がこの国を継ぐのだ。
宰相の力が強まるのは当然だろう。
それはなんとしても防がねばならなかった。というか、カーラを攫わせるつもりは毛頭なかったが……
今回はいかにこのカーラ誘拐を防ぐか救うかだ。
今後も何があるかは判らないから、また、この破落戸達の中にスパイとして潜入する可能性もあった。出来れば俺が人間に戻るところは見られたくない。
できる限り変身するのは見えないところでやろうと俺は思った。
まあ、当然ながら、カーラの安全が第一ではある。最悪は見られても仕方がないが、出来たら見られないようにした方が良いだろう。そして、戻るにしても直前が良いだろう。
どのタイミングで戻るかだ。
俺は俺なりに必死に考えたのだ。
翌日、早朝に俺はベイルとブルーのらに連れられて長屋に戻った。
そこで再度打ち合わせが行われた。
騎士の裏切り者のトマスは青い髪の色に赤い目をしているそうだ。
まあ、俺が最後に斬り捨てれば良いだろう。そうか、騎士団に突き出すかだ。
破落戸達は3人が馬車に乗って行くということで、ブルーノがその馬車を指揮することになった。
ベイルを含めて残りの7人はここに待機することになる。
馬車は長屋の裏に止めていて、王女が孤児院から出る頃に動き出して、ぐるっと回ってこちらとは反対側に止めておくそうだ。
俺は奥のかまどの傍に縄でくくりつけられることになった。
最悪入り口の所からは見えずに隠れて変身出来るスペースはある。直前に誰も見えないように変身すれば良いだろう。
俺は破落戸達が表に出たところで変身して、後ろから破落戸達に襲いかかってこいつらを峰打ちにするつもりだった。
そして、カーラを助ける。
うまくいけば馬車の3人も峰打ちにして拘束させるつもりだ。
その上で、裏切り者の騎士を捕まえれば良いだろう。
「王女が孤児院から帰るみたいだ」
偵察に行っていた破落戸が帰ってきた。
既にブルーノらは馬車で出ていった。
ここには6人しかいない。
1人は屋根に隠れて見ているのだ。
「兄貴、王女がこちらに曲がって来ました」
「何だと?」
「しっ」
破落戸どもは驚いたが、手に剣を構えた。
「お留守じゃ無いの?」
カーラの声がすぐ傍で聞こえた。
なぜここに来る?
俺は驚いた。
「わんわんわんわん」
ここから離れろ。
俺は剣を構えるベイル達を見て、思わず叫んでいたのだ。
「しっ」
ベイルが俺を見て合図をするが俺は鳴き止まなかった。
それが失敗だった。
「こ、ころちゃん!」
カーラの声とともに慌てて長屋の扉に駆け寄る音がした。
「姫様、いけません」
サーヤの声がして、扉が開けられたのだ。
そこには久しぶりにお目にかかるカーラの驚いた顔が合った。
***************************************************************
なんと攫おうとしている敵のアジトに王女が入ってきました。
王女の運命やいかに?
続きが気になる方はお気に入り登録、感想等をして頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
王宮内にも宰相のスパイがいるようだ。
今回は王宮も警戒していて、なんとカーラの護衛の騎士も10名もいるそうだ。
「どうするんだ、ベイル? 騎士の数がこちらの数と同じじゃないか? まともにやったらこちらも結構な被害が出るぞ」
ブルーノが危機感を持って聞いてきた。
「そこは少し工夫がいるだろう」
ベイルはそう言うと、ブルーノらに説明を始めた。
カーラ達が孤児院から帰る途中で、暴れ馬を王女の隊列に突入させて、騎士がそちらに気を取られている間に、カーラを攫うというのだ。
「そのようにうまくいくのか?」
疑い深そうにブルーノが聞いた。
ベイルによると基本は王女の一行は騎士3人が先行して歩き、そして、王女と侍女、その後ろに7人が続いている。その王女に向けて暴れ馬を突入させて、騎士達が必死に馬を止めようとしている間に、別の馬車を王女の傍につけて王女を攫うというのだ。
「それは確かに王女の隊列は混乱するとは思うが、それでうまく王女を攫えるのか?」
「まあ、なんとかなるだろう。少なくとも多くの騎士が暴れ馬を押さえるのに精一杯なのだ。俺達が現れたところで相手に出来るのは3人くらいだ。暴れ馬の手配は別の者がやってくれている。どうしようもないときは、騎士達の中にいるスパイがこちらに寝返ってくれる」
「騎士の中にもスパイを入れているのか」
「そうだ。トマスという騎士が宰相が送り込んだスパイだ。そいつが、うまく立ち回ってくれるさ」
ベイルは楽観して言ってくれた。
「俺達はじゃあどうすればいいんだ?」
「丁度この長屋の傍の交差点で反対側から馬が暴れ出して行列に突入する。それを合図に扉を開けて一斉に騎士達に斬りかかるんだ。そこにやってきた馬車に王女を放り込めば良いだろう」
「なるほど」
「それまでは扉の中で待っていれば良いだろう」
「判った。まあ、なんとかなるだろう」
ベイルの言葉にブルーノは頷いた。
なんと、騎士の中にまで宰相のスパイがいるそうだ。
俺は暗澹たる思いになった。
皆の話すのを聞くところによると、カーラの味方の国王派はあまり多くはいないみたいだ。貴族達の多くは日和見派だ。
強い方につくみたいだ。
まあ、宰相派よりはましだが……
まだ宰相派は少ないが、これでカーラが宰相の息子の嫁にされれば宰相派はドンドン増えるだろう。
何しろこの国の跡継ぎはカーラなのだから。
カーラと宰相の子供がこの国を継ぐのだ。
宰相の力が強まるのは当然だろう。
それはなんとしても防がねばならなかった。というか、カーラを攫わせるつもりは毛頭なかったが……
今回はいかにこのカーラ誘拐を防ぐか救うかだ。
今後も何があるかは判らないから、また、この破落戸達の中にスパイとして潜入する可能性もあった。出来れば俺が人間に戻るところは見られたくない。
できる限り変身するのは見えないところでやろうと俺は思った。
まあ、当然ながら、カーラの安全が第一ではある。最悪は見られても仕方がないが、出来たら見られないようにした方が良いだろう。そして、戻るにしても直前が良いだろう。
どのタイミングで戻るかだ。
俺は俺なりに必死に考えたのだ。
翌日、早朝に俺はベイルとブルーのらに連れられて長屋に戻った。
そこで再度打ち合わせが行われた。
騎士の裏切り者のトマスは青い髪の色に赤い目をしているそうだ。
まあ、俺が最後に斬り捨てれば良いだろう。そうか、騎士団に突き出すかだ。
破落戸達は3人が馬車に乗って行くということで、ブルーノがその馬車を指揮することになった。
ベイルを含めて残りの7人はここに待機することになる。
馬車は長屋の裏に止めていて、王女が孤児院から出る頃に動き出して、ぐるっと回ってこちらとは反対側に止めておくそうだ。
俺は奥のかまどの傍に縄でくくりつけられることになった。
最悪入り口の所からは見えずに隠れて変身出来るスペースはある。直前に誰も見えないように変身すれば良いだろう。
俺は破落戸達が表に出たところで変身して、後ろから破落戸達に襲いかかってこいつらを峰打ちにするつもりだった。
そして、カーラを助ける。
うまくいけば馬車の3人も峰打ちにして拘束させるつもりだ。
その上で、裏切り者の騎士を捕まえれば良いだろう。
「王女が孤児院から帰るみたいだ」
偵察に行っていた破落戸が帰ってきた。
既にブルーノらは馬車で出ていった。
ここには6人しかいない。
1人は屋根に隠れて見ているのだ。
「兄貴、王女がこちらに曲がって来ました」
「何だと?」
「しっ」
破落戸どもは驚いたが、手に剣を構えた。
「お留守じゃ無いの?」
カーラの声がすぐ傍で聞こえた。
なぜここに来る?
俺は驚いた。
「わんわんわんわん」
ここから離れろ。
俺は剣を構えるベイル達を見て、思わず叫んでいたのだ。
「しっ」
ベイルが俺を見て合図をするが俺は鳴き止まなかった。
それが失敗だった。
「こ、ころちゃん!」
カーラの声とともに慌てて長屋の扉に駆け寄る音がした。
「姫様、いけません」
サーヤの声がして、扉が開けられたのだ。
そこには久しぶりにお目にかかるカーラの驚いた顔が合った。
***************************************************************
なんと攫おうとしている敵のアジトに王女が入ってきました。
王女の運命やいかに?
続きが気になる方はお気に入り登録、感想等をして頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
23
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は反省しない!
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。
性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。
【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない
金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ!
小説家になろうにも書いてます。
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
【完結】後宮の片隅にいた王女を拾いましたが、才女すぎて妃にしたくなりました
藤原遊
恋愛
【溺愛・成長・政略・糖度高め】
※ヒーロー目線で進んでいきます。
王位継承権を放棄し、外交を司る第六王子ユーリ・サファイア・アレスト。
ある日、後宮の片隅でひっそりと暮らす少女――カティア・アゲート・アレストに出会う。
不遇の生まれながらも聡明で健気な少女を、ユーリは自らの正妃候補として引き取る決断を下す。
才能を開花させ成長していくカティア。
そして、次第に彼女を「妹」としてではなく「たった一人の妃」として深く愛していくユーリ。
立場も政略も超えた二人の絆が、やがて王宮の静かな波紋を生んでいく──。
「私はもう一人ではありませんわ、ユーリ」
「これからも、私の隣には君がいる」
甘く静かな後宮成長溺愛物語、ここに開幕。
【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!
永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手
ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。
だがしかし
フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。
貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。
折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!
たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。
なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!!
幸せすぎる~~~♡
たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!!
※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。
※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。
短めのお話なので毎日更新
※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。
※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。
《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》
※他サイト様にも公開始めました!
婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~
白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」
枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。
土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。
「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」
あなた誰!?
やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!
虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる