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第一章 ダレル反乱
ゼウスは地界の下っ端の神に無理難題を押し付け、シャラザールを封印しようとしました
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「はあああ」
下っ端神様のジャルカは盛大なため息を付いた。
ジャルカは憂鬱だった。せっかく神々の付き合いが面倒なので地上に降りてきてのんびりしていたのに、なんと全能神のゼウスに捕まってしまったのだ。ゼウス、全知全能の神だが、浮気グセはどうしよもなく、その子供達には問題児しかいなかった。昔は神としても尊敬できたが、今は……。
折角シャラザールとかいう若造が、色々掃除してくれて天界も良くなるかと思っていた矢先に、ゼウスによって地上へと追放されてしまった時はがっかりしたのだが、今回ゼウスから頼まれた事は、更に面倒なことだった。
「賢臣ジャルカよ。その方にたっての希望があるのじゃ」
そう言って話しだしたゼウスによると、地上に降りたシャラザールは相も変わらず、世直しなようなことをしているらしい。本来は神ならば喜ぶはずなのに、ゼウスはそれが気に入らないらしい。何でも、このままでいくとシャラザールがその子孫である、暴風王女と意気投合して憑依する可能性もあり、そうなったら何をしでかすか判らないから何とかして欲しいのだとか。
確かにジャンヌ姫に憑依したらそのまま世界征服に乗り出しかねない事は危惧したが、ゼウスの息子でシャラザールに地上へ叩き落された残虐王がノルデインにいて、この方が危険だと思うのはジャルカだけなのだろうか。
なんでも、ゼウスは何とかその息子に功を立てさせて再び天界に招きたいらしい。
その横にいる娘でもある愛と美の女神のアフロディーテを招いてまたねんごろになりたいだけのような気もするが。本当にゼウスもどうしようも無くなった。
これが全能神かとつくづくジャルカも嫌になったが、言うことを聞かないとジャルカを天界に強制召喚するという最後の手段をちらつかされてはどうしようもなかった。
そして、ゼウスの選んだ子孫が、クリスティーナ・ミハイル侯爵令嬢だ。
現マーマレード王国皇太子エドワード・マーマレードの婚約者。
確かにシャラザール直系のテレーゼ王国の名門ヨークシャー公爵家出身の母を持ち、マーマレード王国の魔導の家として有名なミハイル侯爵家の父を持つクリスはシャラザールの血を強く引き継いでいる。
ゼウスがクリスを選んだ理由は、おとなしい性格の一言に尽きた。
ジャンヌのようにエリザベス王妃の淑女教育を「面倒だ」の一言でパスするわけでもなく、真面目に受けているその性格を買ったのだ。
天界に反逆するなどというとんでもないことは絶対に考えないだろうと。
「お呼びですか?」
金髪に青い瞳のクリスは可憐な少女だった。
王宮の一角でジャルカがいる温室にクリスはやってきた。
王妃の淑女教育の後なのだろう。たくさんの書籍を抱えていた。
はっきり言ってジャルカから見ればクリスは15歳にしてもう立派な淑女でありこれ以上の淑女教育なんて必要なかった。18になったジャンヌの方がよほど必要だと思われたが、王女のジャンヌは士官学校に入り浸って全く王宮へは帰っていなかった。
ジャルカは王妃教育としてクリスに魔術を教えるという名目の下で、海外の情勢や国内の貴族情報から、
最近はクリスに頼まれて色んな使用人たちの家族の情報や、出身地、趣味など諜報局の持っているデータも含めて教えていた。
本来なら魔術も教えたいのだが、クリスは莫大な魔力量は有しているが、その力はまだ安定しておらず、なかなか安定して力を使うことが出来ないでいた。
下手に使わせて王宮を破壊するというようなことになると大変なので、まだほとんどジャルカは教えていなかった。
このクリスの魔力量とシャラザールが合体すればおそらく世界最強、いや今でもクリスの魔力量はおそらく世界最強だったから、二人が組めばゼウス相手にも勝てるとジャルカは思ったが、黙っていることにした。
ノルディンにいるゼウスの息子らの事を何とかしないと民衆たちが苦しむのは目に見えていた。
ここはシャラザール様のお力を借りるしかなかろうとジャルカは決断した。
「クリス様。この爺と少し北方の街の空気を吸いに参りましょうか」
「判りました。ジャルカ様がわざわざお誘いいただけるくらいですから、大切な御用があるのですね。
学園は試験休みですが、北方まで行くと1ヶ月位かかってしまいますか」
「クリス様とお二人だけでしたら転移で移動できますし1週間で全て済みましょう」
「判りました。父に話してみます」
「今後のマーマレード全体にかかる大切なことですからな。本来ですと座学で済むのですが、どうしてもそういうわけにも参らず、何卒お考え下さい」
「私はジャルカ様を信じております。ジャルカ様がそう言われるならば必要なことでしょう。間違いなく父の了承は取ります」
ジャルカの問にクリスが応えた。
本当にしっかりした未来の王妃だ。皇太子には不安が残るが、クリスが王妃に立てば問題はなかろう。
最も今回の件は簡単には解決しそうにないので、後で娘を溺愛するミハイル卿に文句を言われるのは確実だろう事はジャルカは覚悟した。
下っ端神様のジャルカは盛大なため息を付いた。
ジャルカは憂鬱だった。せっかく神々の付き合いが面倒なので地上に降りてきてのんびりしていたのに、なんと全能神のゼウスに捕まってしまったのだ。ゼウス、全知全能の神だが、浮気グセはどうしよもなく、その子供達には問題児しかいなかった。昔は神としても尊敬できたが、今は……。
折角シャラザールとかいう若造が、色々掃除してくれて天界も良くなるかと思っていた矢先に、ゼウスによって地上へと追放されてしまった時はがっかりしたのだが、今回ゼウスから頼まれた事は、更に面倒なことだった。
「賢臣ジャルカよ。その方にたっての希望があるのじゃ」
そう言って話しだしたゼウスによると、地上に降りたシャラザールは相も変わらず、世直しなようなことをしているらしい。本来は神ならば喜ぶはずなのに、ゼウスはそれが気に入らないらしい。何でも、このままでいくとシャラザールがその子孫である、暴風王女と意気投合して憑依する可能性もあり、そうなったら何をしでかすか判らないから何とかして欲しいのだとか。
確かにジャンヌ姫に憑依したらそのまま世界征服に乗り出しかねない事は危惧したが、ゼウスの息子でシャラザールに地上へ叩き落された残虐王がノルデインにいて、この方が危険だと思うのはジャルカだけなのだろうか。
なんでも、ゼウスは何とかその息子に功を立てさせて再び天界に招きたいらしい。
その横にいる娘でもある愛と美の女神のアフロディーテを招いてまたねんごろになりたいだけのような気もするが。本当にゼウスもどうしようも無くなった。
これが全能神かとつくづくジャルカも嫌になったが、言うことを聞かないとジャルカを天界に強制召喚するという最後の手段をちらつかされてはどうしようもなかった。
そして、ゼウスの選んだ子孫が、クリスティーナ・ミハイル侯爵令嬢だ。
現マーマレード王国皇太子エドワード・マーマレードの婚約者。
確かにシャラザール直系のテレーゼ王国の名門ヨークシャー公爵家出身の母を持ち、マーマレード王国の魔導の家として有名なミハイル侯爵家の父を持つクリスはシャラザールの血を強く引き継いでいる。
ゼウスがクリスを選んだ理由は、おとなしい性格の一言に尽きた。
ジャンヌのようにエリザベス王妃の淑女教育を「面倒だ」の一言でパスするわけでもなく、真面目に受けているその性格を買ったのだ。
天界に反逆するなどというとんでもないことは絶対に考えないだろうと。
「お呼びですか?」
金髪に青い瞳のクリスは可憐な少女だった。
王宮の一角でジャルカがいる温室にクリスはやってきた。
王妃の淑女教育の後なのだろう。たくさんの書籍を抱えていた。
はっきり言ってジャルカから見ればクリスは15歳にしてもう立派な淑女でありこれ以上の淑女教育なんて必要なかった。18になったジャンヌの方がよほど必要だと思われたが、王女のジャンヌは士官学校に入り浸って全く王宮へは帰っていなかった。
ジャルカは王妃教育としてクリスに魔術を教えるという名目の下で、海外の情勢や国内の貴族情報から、
最近はクリスに頼まれて色んな使用人たちの家族の情報や、出身地、趣味など諜報局の持っているデータも含めて教えていた。
本来なら魔術も教えたいのだが、クリスは莫大な魔力量は有しているが、その力はまだ安定しておらず、なかなか安定して力を使うことが出来ないでいた。
下手に使わせて王宮を破壊するというようなことになると大変なので、まだほとんどジャルカは教えていなかった。
このクリスの魔力量とシャラザールが合体すればおそらく世界最強、いや今でもクリスの魔力量はおそらく世界最強だったから、二人が組めばゼウス相手にも勝てるとジャルカは思ったが、黙っていることにした。
ノルディンにいるゼウスの息子らの事を何とかしないと民衆たちが苦しむのは目に見えていた。
ここはシャラザール様のお力を借りるしかなかろうとジャルカは決断した。
「クリス様。この爺と少し北方の街の空気を吸いに参りましょうか」
「判りました。ジャルカ様がわざわざお誘いいただけるくらいですから、大切な御用があるのですね。
学園は試験休みですが、北方まで行くと1ヶ月位かかってしまいますか」
「クリス様とお二人だけでしたら転移で移動できますし1週間で全て済みましょう」
「判りました。父に話してみます」
「今後のマーマレード全体にかかる大切なことですからな。本来ですと座学で済むのですが、どうしてもそういうわけにも参らず、何卒お考え下さい」
「私はジャルカ様を信じております。ジャルカ様がそう言われるならば必要なことでしょう。間違いなく父の了承は取ります」
ジャルカの問にクリスが応えた。
本当にしっかりした未来の王妃だ。皇太子には不安が残るが、クリスが王妃に立てば問題はなかろう。
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